あの《太陽の塔》が人間と一緒に日常生活を送ったらどうなるか
というコンセプトで描かれた絵本『みんなの太陽の塔』(小学館)や、
「コップのフチ子」シリーズの最新作「コップのフチの太陽の塔」など、
太陽の塔で遊びまくりのタナカカツキさんと、
『みんなの太陽の塔』ではプロデュース、
「コップのフチの太陽の塔」では監修を務める
平野暁臣との対談です。
②「“太郎と遊ぶ”って考えると、やっぱり最初に出てくるのはタナカさんなんだな。」
③「“あ、自分はフチ子さんやってるけど、太郎さんはもっと先にやってた”って。」
④「太郎はすごくカッコイイけど、なりたいとは思わないよね。」
第一回目はお二人の出逢いをお聞きしました。
腹をくくって〝真剣に〟遊ぼうとする人しか、太郎は相手にしない。
平野:これから『PLAY TARO』っていうWEBを使った新しい試みをはじめようと思っているんです。
タナカ:はい。
平野:その中に対談コーナーがあるんだけど、最初のゲストは誰がいいだろうって考えはじめたら、
3秒後にタナカさんの顔がガーッと出てきた(笑)。
タナカ:すみません。恐縮です(笑)。
平野:『PLAY TARO』ってのは、読んで字のごとく「太郎と遊ぼう」ということ。
「太郎と真っ向からぶつかってみてよ、面白いよ」って言いたいわけ。
タナカ:あー、なるほど。
平野:太郎を大事大事って桐の箱に入れて神棚に祭っても、意味ないでしょ?
「寄るな、さわるな、息もかけるな」って(笑)。それじゃ太郎も敏子も喜ばないし。
タナカ:はい、はい。
平野:それに、そもそも太郎って、金持ちや美術マニアのものじゃなくて、みんなのものでしょ?
ある意味で〝公共財〟みたいなもんじゃない?
タナカ:それ、わかる。
平野:日本人の、っていうか…、人類の。
タナカ:人類のね。
平野:うん。しかも太郎はいまこの瞬間も、ぼくたちを挑発してくる。
20年も前に亡くなってるのにね。
現在進行形で太郎とぶつかりながら生きているクリエイターや若者が、たくさんいるわけじゃない。
タナカ:うんうん。
平野:ぼくの知らないところにもいっぱいいるだろうし、
面白いことを考えてる人もきっとたくさんいる。そういう人をどんどんすくいあげていきたいな、と。
タナカ:なるほど!
平野:「太郎と遊ぶ」っていっても、もちろんオフザケやお遊びじゃない。
腹をくくって〝真剣に〟遊ぼうとする人しか、太郎は相手にしないからね。
そういうふうに考えると、やっぱり最初はタナカさんだな、と。
タナカ:ありがとうございます!
―基本的なことからお聞きしたいんですけど、お二人の出逢いというのは?
タナカ:最初はこれなんですよね(と、『オッス! トン子ちゃん』(ポプラ文庫)を出す)。

タナカ:新しく文庫化しまして、ちょっと装丁も変えて。
平野:へぇー、いいじゃない。
タナカ:これに僕が勝手に太郎さんの作品を無断拝借したのがきっかけで。
平野:これ、主人公のトン子が川崎の岡本太郎美術館に行って、
岡本太郎に衝撃を受けるところから物語がはじまるんですよね。
タナカ:しかも閉館後に忍び込むっていう…。
平野:(笑)


タナカ:あるまじき行為を描いたら、バレたっていう。
平野:「バレなきゃいいや」って無断で描いたんでしょう?
タナカ:そうなんです。
平野:だけど、しっかり敏子にバレた(笑)。
タナカ:そもそもの話しますと、これ(『オッス! トン子ちゃん』(ポプラ文庫)は
友達に見せるためだけに描いてたんですよ。
でも、5年か6年くらい後に、世の中に出ちゃったんです。
自費出版だったんですけどね。
平野:あ、そうだったんだ。
タナカ:そう。だから最初は地下地下、ぜんぶ地下。
平野:じゃあ、もともと許可取る必要なんかなかったんだ。
タナカ:友達に見せることしか考えていなかったんで。それで許可取るのもおかしいじゃないですか?
で、その後、正式に出版社から本になったのが2003年。
その段階で本当は許可、取るべきだったかもしれないんですけど…。
平野:うん(笑)。
タナカ:あ、その前か、自費出版でバレたんだ。いや、バレたっていう言い方もおかしいですけど(笑)。
そこで敏子さんの手に、それが渡っちゃって。っていうところです。最初は。

―連絡があったんですか?
タナカ:なかったと思います。
平野:たしかタナカさんを敏子に引き合わせたのは山下(裕二)さんでしたよね?
山下さんとはどうやって出会ったんですか?
タナカ:当時、山下さんが書かれた『岡本太郎宣言』(平凡社)を、
(『オッス! トン子ちゃん』を)自費出版していただいたデザイン会社(ASYL)の代表の佐藤直樹さんが、
いたく感動して、山下さんに本(『オッス! トン子ちゃん』)を送られたんじゃないかと。
平野:ああ、なるほど。
タナカ:それでまず山下さんにバレて、それで山下さんにお逢いして、
敏子さんに引き合わせていただいて。
平野:この部屋に通されたわけですね。
タナカ:そうです。この部屋で。
ずっと、もう石像のように固まったまんま(笑)。それが、最初です。
二人の出逢いには、
敏子さんとの運命のイタズラがあったようで。
次回は敏子さんの思い出から、
いよいよ本格的になる二人の「真剣な遊び」についてお聞きします!
タナカカツキ対談②
タナカカツキ(たなかかつき)
1966年、大阪府出身。18歳でマンガ家デビュー。
著書は岡本太郎の作品に感動したトン子が芸術とは何か、己とは何かを問う『オッス! トン子ちゃん』や
『バカドリル』(天久聖一との共著)など、映像作品も多数手がけ、アーティストとして幅広いジャンルで活躍中。
「コップのフチ子」の原案者でもある。 http://www.kaerucafe.com/
平野暁臣(ひらのあきおみ)
1959年生まれ。岡本太郎が創設した現代芸術研究所を主宰し、
イベントやディスプレイなど“空間メディア”の領域で多彩なプロデュース活動を行う。
2005年から岡本太郎記念館館長を兼務。
最近では、『「明日の神話」再生プロジェクト』に続いて、 岡本太郎生誕百年事業「TARO100祭」を率いた。
当サイトのエグゼクティブプロデューサーでもある。