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片桐仁対談①「面白いと思うものとアートの架け橋」

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太陽の塔”の誕生45周年祝う企画展、
「Re:TOWER OF SUN EXBIT みんなで太陽の塔展」
にも出展をされている、ラーメンズの片桐仁さん。
コメディアン、俳優、彫刻家などさまざまな顔を持つ片桐さんと、
平野暁臣との対談を6回にわたってお送りします。

②「絵は向いてないよね~」「画面を支配できないよね~」って(笑)
③たぶんそれもね、アート的なものに対する拒否反応が根っこにあって。
④ぼく、「片桐さんってほんとうにいるんですね」って、言われたことありますよ(笑)。
⑤たぶん一歩距離を置いているんですよね、アートってものに対して。
⑥ぼくも太郎さんの作品にちょい足しはしたいです。

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「俳優・彫刻家」って書いて「なんだろうこれ?」っていつも思います。

-まずは片桐さんと岡本太郎の出会いについてお聞かせいただきたいのですが…。

平野: 片桐さん、たしか美大のご出身でいらっしゃいましたよね?

片桐: ぼく多摩美なんです。
油絵学科に行こうと思ったんだけど、受からなくて。それで版画に行ったんです。

平野: そこで太郎と出会った?

片桐: いえ、大学時代にはそれほど意識してなくて。大学出てからですね。

平野: ああ、そうでしょうね。
当時、美大では岡本太郎ってほとんど無視されてましたでしょう?

片桐: 完全に無視でした(笑)。

平野: いや、そうでしょう。
おそらく太郎についてほとんど何も教わらなかっただろうし、
偉い先生方もたぶん太郎のこと嫌いだったと思いますよ。

片桐: 好きじゃないでしょうね(笑)。
だから学校で教わったわけじゃないんです。
ぼくが太郎さんを知ったのはいつだったのかな?
やっぱり太陽の塔を見たのが大きかったと思います。

平野: いつ頃の話ですか?

片桐: 大学を出てから立体をやるようになって、
目線が変わってきたというか、そういうタイミングで大阪に行くことがあって。

平野: はい。

片桐: ちょうどお花見の季節で。
あの公園(万博記念公園)には、
みんな普通に桜を見に来てるじゃないですか?
「いやいや、それより後ろに立ってるあのでっかいヤツ見なよ」って。

平野: (笑)

 

片桐: よく無視できるなと思って(笑)。
あのアート感ってすごいじゃないですか。
でも大阪の人は当たり前になっているから、
太陽の塔の周りでお花見をして騒いだり、
池でボートを漕いだりして遊んでる。
「いやいや、太陽の塔でしょ!」って。

平野: 最初に実物を見たときは、どんな風に?

片桐: でかいじゃないですか、とにかく。
正気の沙汰じゃないと思いました。

平野: (笑) 太陽の塔を見て、びっくりして、
それで太郎に興味を持った?

片桐: そうですね。本もいっぱい出てましたしね。

平野: たとえばどんな?

片桐: 『美の呪力(新潮文庫)』とか。

平野: えっ、またシブいとこ行くなあ(笑)。

片桐: 今日、平野さんに会ったらぜひ訊こうと思ってたんですけど、
太陽の塔って、けっきょく、アレ、何なんですかね?

平野: ああ、それ、よく訊かれるんですよ。
まあ、誰だって疑問に思いますよね、
あんな格好してるんだから。
で、そういうとき、ぼくはいつも正直に答えてるんです。
〝わかりません〟って(笑)。

片桐: あっ、そうなんですか?(笑)

平野: はい。
太陽の塔が何を表現したものなのか、ぜんぜんわかんない。
本人も〝ベラボーなもの〟とか
〝馬鹿みたいな素っ頓狂なもの〟とか言うだけで、
造形についていっさい説明してませんしね。

片桐: 言葉にできないものなんでしょうね。

平野: なのでぼくもわからないんですけど、
ひとつだけ確かなことは、あれに似たものが世界にないってことです。

片桐: そうですね。

平野: もちろん世界にはああいう大きな像っていろいろありますよ。
観音像にしても、リオのキリスト像にしても…

片桐: マーライオンにしても…(笑)

平野: そう(笑)。
ただ、みんなきちっとした意味と機能を持っていますよね?
なにを表しているのか、なんのために立っているのかがはっきりしているし、
一瞥しただけで誤りなくそれがわかる。

片桐: たしかに。

平野: 当然ですよね。
だって、意味を伝え、機能を果たすために立ってるんだから。
だけど太陽の塔にはそれがないんですよ。
なにを表しているかもわかんないし、
なんのために立っているのかさえ、わからない(笑)。
いちばん肝心なものがないんです。

片桐: それって、「大阪万博」が狂気の沙汰だったっていうことですかね。
だって、アレに事業としてGO!を出したわけじゃないですか。

平野: そこなんですよ。

片桐: 何なんだろう?
あのタイミングじゃなかったら絶対になかったことですよね。
もし5年、10年ズレてたらなかったって気がする。

平野: まさにぼくも同じことを考えてます。
ぼく、よく言うんですよ、太陽の塔は岡本太郎のモニュメントではないって。

片桐: というと?

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平野: たしかに形を決めたのも原型をつくったのも太郎だけど、
あれを〝岡本太郎のモニュメント〟と考えるのは間違いだと思う。
あの時代の日本人の、日本社会のモニュメントなんですよ。
だってあんなに大きな、しかも意味もわからないようなものが、
税金で建ったわけですからね。

片桐: そうです、そうです(笑)。

平野: なぜあんなものが税金でできたかっていうと、
大阪万博って、64年の東京オリンピックに続いて、
あの70年の万博を成功させれば、
敗戦国だった日本がついに〝先進国クラブ〟に仲間入りできるっていう、
一世一代の大事業だったわけですね。

片桐: はい。

平野: その時点で万博には120年の歴史があったけど、
日本には一度も主催経験がなかった。
しかもアジアではじめての万博でした。
敗戦から奇跡の復活を遂げつつあった日本としては、
なんとしてもこの機会に国際社会の見る目を変えたい。
そのためには衝撃的なデビューを飾る必要があった。

片桐: 世界をびっくりさせてやろうと。

平野: そうです。
「ここは一発カマしてやらないと」って思ったに違いない。
前例をチマチマ真似て60点とっても、
華々しい〝顔見せ〟にはなりませんからね。

片桐: なるほど。

平野: ちょうどそこにいいネタが飛び込んできた。
なんだかよくわかんないけど、強烈なインパクトがある。
「よし! 一か八かコイツに賭けてみよう!」。
そう考えたんじゃないかと。
太陽の塔って、当時の日本人の、
そういう心意気の産物なんだと思うんです。

片桐: なるほど、そうかもしれませんね。
それに今だとインターネット情報で知ったふうな気になっている人も多いけど、
当時はそうじゃなかったから、「これです!」って目の前に出されたら、
ダイレクトに対峙するしかなかったわけですものね。
そういった「生(なま)の力」みたいな、エネルギーっていうか…。

平野: そうそう。まさにそうです。

片桐: なんか今って、
なんでも言葉で説明したがるし、させたがるけど、
アートってほんとうはそういうことじゃない。
精神状態とか感情みたいなのはあったとしても、
「これです!」って言ったら、それでみんな見る人が考えればいいわけで。
前後の物語がどうとかじゃないだろうって思うんですよ。

平野: ほんとにそうですね。

片桐: 今は〝物語が先〟っていうマーケットができちゃっていて。

平野: はい。

片桐: なんか、有無をいわせぬものがあんまりないっていう気がする。

平野: よくわかります。
今は、作品そのものより、
裏側にある文脈で勝負してるようなところがありますもんね。

片桐: そうなんですよ。そればっかりで。

平野: 肝心な作品そのものはたいしたことないのに、
いっぱい物語を背負って、いろんなところに保険をかけて。

片桐: そこで補強するんだっていう。

平野: そうそう。

片桐: もう世界的にそうなってますからね。

平野: ぼく、ラーメンズを観ているとね、
なんていうか、ワクワクするんですよ。
なぜなのか、うまく説明できませんけど、
たぶんいちばん大きいのは「似たものがない」ってことじゃないかと思うんです。
ラーメンズって、プロフィールに「コント」って書いてあるからコントなんだろうけど、
同時に芝居であり、パントマイムであり、パフォーマンスであり、
そのすべてであって、いずれでもない、みたいな。
そんな唯一無二の世界を見せてくれるところに、
脳味噌が刺激されるんじゃないかな。

片桐: ありがとうございます。

平野: もうひとつ、お二人ともいろんな顔を持ってるじゃないですか。
片桐さん、「あなた何屋ですか?」って訊かれたら、
ビシッと答えられないでしょう?

片桐: ああ…(笑)

平野: そこの部分がすごく面白いし、
太郎とちょっと似てるなって思うんです。
そもそも自分で「何屋」っていう概念、あります?

片桐: 書かされますけどね。
「俳優・彫刻家」って書いて「なんだろうこれ?」っていつも思います。

平野: そうでしょ?(笑)

片桐: はい。

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平野: ぼくが想像するに、
おそらく片桐さんにとって、芝居やコントも、
立体作品の製作も、その他の活動も、
すべて等価であって、優劣も強弱もない。
たまたまこれを表現したい、これを吐き出したいっていうときに、
一番フィットするのは立体だと思ったら立体をつくる、
ただそれだけなんじゃないかと。

片桐: そんなうまくコントロールできないんですけど…(笑)。

平野: そう?(笑)

片桐: 雑誌の連載でいろんな職業の人と会ってるんですけど、
職業なんてみんな違うんですよね。
みんなの中の主観にしかないから。
それを「あなたはこういう職業の人ですね」って言われたときに、
「違う」っていうのも違うし。
他の人が思ってるのと自分の主観っていうのがあるんですよね。

平野: ああ、なるほど。

片桐: なかでもとくにアートがそうだと思っていて。
作家にしかわからないんですよね、なにもかもが。

平野: そうですね。でも今は「俳優・彫刻家」と書かれてる。

片桐: 「彫刻家」って書くのはおこがましくて嫌なんです。
でも「粘土アーティスト」って書くよりは文字としてわかりやすいんで。
「彫刻家」っていうイメージは嫌なんですよね、先生っぽい感じが。
だからほんとうはもっとゆるい感じがいいんですけど。

平野: 片桐さんの立体作品を拝見していて、
すごく知りたいなと思ったのは、
「なぜつくってるんだろう?」
「モチベーションはどこにあるんだろう?」ってことなんです。
どう考えても「オレの作品をどこかの県立美術館が高く買ってくれないかな」
なんて願いながらつくってるとは思えない(笑)。

片桐: まぁ、そうですね(笑)。

平野: 普通のアーティストのモチベーションとは…、

片桐: まったく違いますね。

平野: でしょ?

片桐: 言っちゃうと、これ「逃げ」なんですけど、
ぼく自身、美大を出て、アーティストになろうと思ったんですけど、
どうやってなればいいかわからないし、
自分のやりたいことを、そこまでアプローチしていく自信もなくて、
そんなときにラーメンズをはじめたら、
アーティスト業というか、
雑誌で「好きなことをやっていいよ」って言われるきっかけがあって、
「じゃあ、立体やっていいですか?」って、横入りみたいな感じで。

平野: なるほど。

片桐: 考えてみれば、
そのときのぼくを取り巻く状況からそういう話が来たわけだから、
いいチャンスだったんです。
それでそのままずっと15年。
毎月締め切りが来るので、走りつづけてるっていう感じですね。

平野: なにを手に入れるために?

片桐: 最初の最初でいうと、認めてもらいたかったんです。
それがとっても大きかった。
だから最初は自分の顔ばっかりつくってました。

平野: でも今は違いますでしょう?

片桐: 今は……違いますね。
今はなんでしょうね。
息抜きでもあるし、遊んでる感じありますよね。

平野: ああ、なるほど。

片桐: お笑いでもそうなんですけど、
お客さんの前でコントをやるときに、
先輩方の評価で「よく遊んでたね」って言われることがあって。
お客さんの前では台本に沿ってやるんですけど、
舞台上のぼくたちが楽しく遊んでるように見えるっていうのが、
すごく褒め言葉なんですよね。

平野: よくわかります。

片桐: だからそれと通じるところがあるのかもしれないですね。

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平野: だけど、少なくとも、片桐さんの作品は、
「本業の疲れを癒やす趣味です」ってレベルではないじゃないですか。

片桐: ありがとうございます。

平野: そんなに力抜けてないし(笑)。

片桐: はい(笑)。
これはもう15年やってるからなんですけど、
下手なものはできないなっていうのがあって、
最近は美術館に刺激を受けに行ってみたりして。
そこで見た作品を再現しつつも自分のものにしてみようかなって、
そういう考え方もでてきましたね。

平野: というと?

片桐: これまでは自分の中で、
自分自身も見たことないものを出そう出そうってしていたんですけど、
それはそれであるとしても、
でもぼくがつくったらぼくのものになると思うので。
だからどこかできっかけをもらったら、
そこからはじめたらどうなるのかな? とか。

平野: 片桐さんがものをつくるときって、
なんていうか、飲み過ぎて気持ち悪くなって、
「あっ、吐きそう、出ちゃう!」みたいな感じなんですか?(笑)

片桐: そういうときもあります(笑)。
それが一番幸せですよね。
まあ、締め切りがあるんで、基本は理詰めで考えるんですけど、
つくってて、ふと「あれ? 思ったものとも違う」ってなったときに、
「あぁ、こういう体験がしたくてつくってるんだな」って感じることはありますね。

平野: なるほど。

片桐: 一生懸命、頭の中でつくりたいものを想像して、
それをアウトプットしていく過程で、
思いもよらないものが出来てしまったり、
人から「これって、こういうことなんじゃないの?」って言われたり。
美大のときにありがたかったのが、
絵を描いてる途中で思いもしないことを言われて、「違うな~!」って。

平野: (爆笑)

片桐: 「そうじゃないんだけどな~」って(笑)。
「これ顔だよね?」って言われて、
「顔?……たしかに顔に見えるな」って方向転換したり、みたいな。
そういうのってすごく楽しくて。
舞台っていうのも生(なま)のものなんで、
ほんとうにお客さんの評価がみんな違うんですよね。
そこになにか出したものに対する、
出してる途中の過程と出来た物を見る人によっての感性の違いというか、
やっぱり自分だけでつくるものじゃないんだなっていうのは思いますね。

平野: 〝関係〟の中で出来ていくってことですね。


片桐さんのモチベーションの秘密は、
どうやら“締め切り”にあったようです(笑)。
次回は、“舞台系とアート系のクリエイティブ”についてお聞きします。

片桐仁対談②

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片桐仁(かたぎりじん)
多摩美術大学在学中に小林賢太郎と共にラーメンズを結成。
以後舞台を中心に俳優・タレントとして、
テレビ、ラジオなど様々な分野で活動している。
また粘土を使った造形作品の創作では、
2013年に渋谷パルコにて個展を開催、
18日間で1万3000人を動員。
その独特の感性と存在感が人気を博している。


平野暁臣(ひらのあきおみ)
1959年生まれ。岡本太郎が創設した現代芸術研究所を主宰し、
イベントやディスプレイなど“空間メディア”の領域で
多彩なプロデュース活動を行う。
2005年から岡本太郎記念館館長を兼務。
最近では、『「明日の神話」再生プロジェクト』に続いて、
岡本太郎生誕百年事業「TARO100祭」を率いた。
当サイトのエグゼクティブプロデューサーでもある。

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