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野中剛対談③ 《太陽の塔のロボ》プロデュース論

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トイデザイナーの野中剛さんと平野暁臣の対談最終回です。
野中さんのトイに対する思いと、
デザイナーを超越した商品への関わり方についてお聞きしました!
今回もビジネスマンは必読ですよ!

〈前回までは〉
①「ギエー!」って鳴く声とか、聞こえてきたんです。
②太郎さんは超古代文明人の生き残りで、1911年までは冷凍カプセルに・・・

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真剣にバカやったときに「気持ちいい」とか「楽しい」とか、
そういう経験を若いうちにしておくと、どんどん加速していきますよね。


平野:野中さんがおもちゃを提案されるときは、
完全にマーケティングの発想、いわば〝計算〟ってことですよね?
こうすれば売れるはずだっていうね。
でも《太陽の塔のロボ》は違うじゃないですか。
マーケティング会議で生まれた商品じゃないんだから。
ってことは、計算だけでもないわけでしょう?

野中:入口が計算だけだったとしても、その先が深いんです。
前回の携帯電話の話でいえば、
いかにカッコイイ、未来的な携帯電話をデザインするかってことなんです。
単なるオモチャに見えちゃダメなんですよ。
近未来に〝NOKIA〟が出しそうだなっていうのを、ちゃんとデザインし、
それがテレビでパッと映っただけでも、
ただものじゃないレベルだとわかるデザインが求められます。
リアルとヒロイックの狭間のものであること。
しかもそれがテレビではカッコイイ変身ポーズとともに、
構造的に連動するようになっている。
こどもが真似できる。
あまつさえポーズとともに効果音も鳴る。
その効果音も番組内で印象に残るものでなくてはいけません。

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平野:そこまでやるんですね。

野中:いろんな演出論とかデザインとしての見栄えとかも含めて
仕上げていくっていう技なんですよね。

平野:一筋縄じゃいかない仕事ですね。

野中:そのときに大事なのは、作っている自分自身が
「携帯電話で変身できる」ということに迷いがあってはダメで、
それがほんとうにカッコイイことだと信じてやらないと、
どっかで失敗するんですよね。

平野:ああ、そうだろうな。

野中:それで、たまにテレビ番組制作サイドと打ち合わせで
出されるモチーフが、自分好みのネタがあったりすると、
「キター!」って感じで嬉しいですね。
だから好きなものの幅が広い方が「キター!」の確率は上がる。

平野:野中さん、ベースはデザイナーだから、
ディテールとか質感とか、そういうところへのこだわりや、
クオリティをある水準以上に引き上げなければいけないっていう
徹底した使命感のようなものが強烈にあると思うんだけど、
それだけじゃないんですよね、見ていると。

野中:そうですか?

平野:結局ね、プロデューサーなんですよ。
《太陽の塔のロボ》のプロモーションビデオのときもそう思った。
あれ、素晴らしい出来じゃないですか。

野中:ありがとうございます。

平野:野中さん、撮影前に佛田監督に
えらくハードルの高い要望を出してましたよね。
自分で絵コンテまで描いて。

野中:いや、まぁ(苦笑)

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平野:一方では、パッケージはどうあるべきかとか、
プロモーションのヴィジュアルをどうしようとか、
この商品に関する全体的なイメージとかメッセージとかクオリティとか、
そういうもの全部束ねてコントロールしてたでしょう?
だからこの世界でリスペクトされているんだろうなって思いました。
デザイナーとして色や形を決めるだけじゃなくて、
その商品を取り巻く世界観までつくり込み、
プロモーションのあり方まで定めている。
しかも能書きを垂れるんじゃなくて、
自分自身で絵を描いてズバッと示す。

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野中:照れますね。

平野:難しいことですよ。
破綻のない高品質な世界観を組み上げる。
アイデアだけでなく、それをリアルなものとして実際に実現させる。
『腕力』のない人にはできません。
野中さんには腕力があるから
《太陽の塔のロボ》みたいなものがつくれるんだと思います。

野中:バンダイでキャラクターマーチャンダイジングをやるっていうのは、
そういう能力を求められていたような気がします。
それと、幸いぼくはただのオモチャのエンジニアではなくて、営業マンでもなくて、
いろんな作品や商品をよく見ていて、
そういうのが好きだったんで対応できたというか、
やらなければいけないんだというのは仕事をしていく中でありましたね。

平野:他人任せにすると、けっきょく後悔することになるものね。

野中:そうですね。
最初の頃はわからないから、
パッケージデザインの会社の人と打ち合わせして、
こちらとしてはもちろんプロのデザイナーの方の仕事だから、
それなりのものがあがってくるんだろうと思っているんだけど、
あがってきたのを見ると、「あれ?」というようなことがよくありました。

平野:きっと野中さんはそうでしょう。

野中:そうすると、
これは言い出した人間がぜんぶやらないと、
最初から最後まで筋の通ったことはできないんだということを、
20代の前半で理解してしまって。

平野:あぁ、やっぱりそうなんだ。

野中:さっきのプロモーションビデオのことで言うと、
東映作品で長年ご一緒させていただいている
佛田洋監督にお願いしたんですけど、
信用してるからって丸投げするかって言うとそうではなくて、
「こういうのが撮りたいんで」ってコンテをぜんぶ切っちゃうっていう。

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平野:その熱がすごい。事前にコンテを見せてもらってたんだけど、
それがほんとうにカッコイイんですよ。
でね、そのときぼくが思ったのは、
これは映像制作のための指示書というより、
ひとりのアーティストが
「俺はこういうことが言いたいんだ!」
っていう〝叫び〟なんだということ。

野中:ちょっと暑苦しい感じがしますけど、自分でもそう思います(笑)。

平野:野中さんがまた面倒な注文をつけるんですよ。
いまだったら簡単にCGでできるのに、「CG許さじ!」って(笑)。

野中:すべてロボそのものを現場で動かして撮影したんです。
そのため、撮影シーンごとに改造したロボを何体もつくらなきゃならなかったし、
撮影もすごく時間がかかったそうで、スタッフの方々には感謝するばかりです。

平野:だから、すごいお金かかったんでしょ?

野中:そうですね(笑)。
でもこのプロモーションビデオをつくれたことで、
わりとぼくの中では、
《太陽の塔のロボ》を仕掛けたことでの満足点に到達することができましたね。

「太陽の塔のロボ」プロモーションムービー

平野:ぼくは単純に嬉しかった。
だって、このPV、はっきりいって無駄じゃないですか?(笑)
ロボを売ることだけを考えるなら、ここまでやる必要はないんだし、
そもそも、もしかしたらPV自体いらなかったのかもしれない。

野中:たしかに。

平野:でもね、無きゃ無いで済むようなものに、
しかもビデオ自体でお金がとれるわけでもないのに、
大の大人があそこまでムキになってつくってるわけですよ(笑)。
まあ、はっきりいえば「バカじゃないの?」って世界です(笑)。
でもね、だからこそ、伝わるんですよ。
この種のバカげた情熱には、「大人の計算」にはない突破力がある。

野中:ああ、そうですね。

平野:そういうところを、みんな見てないようで見てるし、
皮膚感覚でわかるんですよ。熱量がね。

野中:どうやら、そうらしいです(笑)。
でも真剣にバカやったときに、
「気持ちいい」とか「楽しい」とか、
そういう経験を若いうちにしておくと、どんどん加速していきますよね。

平野:うん。

野中:この「PLAY TARO」って
若い方に見てもおうと思ってはじめられたんだと思いますけど、どうですかね?
最近はわりとビビってる人、多いですよね、若い人で。

平野:そうね。

野中:もっと「のびのび思いっきり生きてみなよ」って思いますね。
なんなんだ、その地味な生き方は! みたいな。
もったいないぞ!って。

平野:でもね、野中さん。
この《太陽の塔のロボ》のとき、
バンダイの若い人たち、みんなけっこうビビってましたよ、野中さんに。

野中:ええっ(笑)。

平野:もちろんそれはリスペクトから来ているんですけどね。

野中:いや、僕のことを面倒くさいなって思ってる人も多いと思いますよ(笑)。
でもいい歳になっても、やたら現場主義だったりするものですから、
経験値だけは異常に高いんです。
それを若い、次の世代に伝えていかなくちゃいけないっていう
使命感みたいなものはありますね。

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平野:どんなことを伝えていきたいですか?

野中:“信念”って言っていいのかわからないですけど、
そういうものが何かを成し遂げられる唯一のエネルギーだと思うんで、
“信念”を大切に持ってほしい。
ま、その信念を持つまでが大変なんですけどね。
「自分って何が好きなんだっけ」すらわからないいまの若者たちに対して。

平野:そういう意味では、この《太陽の塔のロボ》だってそうでしょ?

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野中:そうですね。ぼくが好きで好きで、
そういう思い、“信念”から生まれたものですね。

平野:まさに『欲望』と『情熱』の結晶なんですよ。だから強いんです。
いまの社会って、競争社会っていわれて、勝たなければいけないし、
戦術とか戦略とか、そういうことを一生懸命学んで、
ライバルに勝つにはどうすべきかって、
誰かと比較ばっかりして生きている。
常に相対的にものごとを考える。分析ばっかりやっている。
でもね、そうやって生まれるのは“相対価値”です。
そうしているうちに、気がついたらみんな比較分析から
導き出される相対価値ばっかり狙うようになっている。
だけど最初に野中さんが《太陽の塔のロボ》を思いついたときは、
そういう相対性はゼロだったと思うんですよ。
「だってコレつくりたいんだもん!」
「だってこれカッコイイと思ったんだよ!」ってだけでしょ?

野中:完全にそうです。

平野:岡本太郎自身がそうですからね。
なんていうか、太郎からいちばん遠い〝態度〟が
マーケティングなんですよ。
彼にはマーケティングの思想がいっさいないんです。
「オレはこれが描きたいんだ!」ってつくってるだけ。
そういう意味でいえば、太郎と、野中さんの《太陽の塔のロボ》は
根源的な部分では同じレイヤーにいるんです。

野中:“相対価値”を求めない。
“絶対価値”を追求するってことですよね。

平野:そう。言い換えれば、
競争に勝つためじゃない。だから響くんですよ。

野中:最近は自分たちの仕事も含めて
マーケティングに頼りすぎている感がありますよね。
でもね、ほんとうはよくわからなくなってきていて。

平野:うんうん。

野中:そこに頼るっていうか、
根拠を求めるのはすごくつまらないことだし、
「あなたは何がしたいの?」って。
ぼく、最近、会う人会う人にこればっかり言ってる気がする。
何か行動するときにも自分が好きだからじゃなくて
“流行ってるから”になってるでしょ?
もっと自由に、自分というものをちゃんと認識するみたいなことに
時間を割いてもいいんじゃないかと思うんですよね。

平野:わかる。

野中:さっきも言ったように、
ぼくもマーケティング重視の仕事をしますけど、
そもそもトレンドリサーチというものは、最初の準備であって、
ほんとうの価値は「得た情報から何をクリエイトするか」ですからね。
そこに腕の見せ所というか、その人なりの個性が出るところですから。
そこを楽しむために「自分ならどう考えるか」、だと思うんですよね。

平野:まずは自分が惚れてるものを「これってどうよ?」ってね。

野中:「だって好きなんだもん!」が全ての始まりだと思います。(笑)

 

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野中剛(のなかつよし)
日本の玩具デザイナー兼、イラストレーター兼、プランナー。
東京デザイナー学院在学中に、
『テレビマガジン』誌上で『トランスフォーマー』などのイラストを手がけ、
学院卒業後1987年バンダイに入社。男児向け玩具を多く担当する。
2011年から2014年の夏にかけて、
バンダイアメリカにおいてデザイン部門を担当する「PLEX」のヘッドデザイナーとして、
『パワーレンジャーSAMURAI』などの北米向け男児玩具を中心にデザインを担当。
2014年7月末、バンダイを退社後独立。
9月に活動拠点を日本に戻し、
トイデザインのみならずあらゆるコンテンツ制作、デザインワークなどを展開。
Facebookページ
https://www.facebook.com/TsuyoshiNonakaZ/

平野暁臣(ひらのあきおみ)
1959年生まれ。岡本太郎が創設した現代芸術研究所を主宰し、
イベントやディスプレイなど“空間メディア”の領域で
多彩なプロデュース活動を行う。
2005年から岡本太郎記念館館長を兼務。
最近では、『「明日の神話」再生プロジェクト』に続いて、
岡本太郎生誕百年事業「TARO100祭」を率いた。
当サイトのエグゼクティブプロデューサーでもある。

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