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一青窈対談④ “一青節”の作り方

一青窈EXシアター③

歌手の一青窈さんとの対談最終回です。

〈前回までは〉
①これでいいんだって、自信をもつことができたっていうか…。
②基本は愛することなんじゃないかと思います。
③ええかっこしいにならないように。


一青窈さんの「詞作」と「歌唱」について、
そして表現者としての「一青窈」についてお聞きしました。

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「この脱ぎ方はいかがなものかい?」って思いながら歌う。

平野:人に詞を提供するときにね。

一青:はい。

平野:自分のなかに沸き上がってきた情熱というか、
創造的な欲望みたいなものはもちろんあると思うけど、
一方では「こうした方が売れるかしら?」みたいなこともとうぜん考えるんでしょう?

一青:「売れるかしら?」って考えながらつくったことは一回もないですね。

平野:あっ、そうなんだ。

一青:ないです。だいいち売れるかどうかなんてわからないですしね。
じっさい「これどうだろう?」「どうなの?」って思うものが評価されてるんです。
「ハナミズキ」も「もらい泣き」も。

平野:へえ。

一青:「正直、わからない」みたいなものがいいって言われて。

平野:うん。

一青:逆に「こっちの方がいいんじゃない?」っていうものは売れないことが多い。

平野:(笑)あぁ、そうなんだ。

一青:そう。だからそこのジャッジはもう投げてしまいます。

平野:「あとはそっちで考えてよ!」ってことですね。

一青:それと信頼してないです。自分の判断力を。

平野:(笑) じゃあ沸き上がってきたものを、
二日酔いで戻すみたいに吐き出しちゃうって感じ?

一青:出てきたものをノートに書き殴って。
それを朝に清書したり、あるいは3年くらい寝かせたり…。



平野:自分が書いた詞をだれかが歌うわけじゃないですか。

一青:はい。

平野:それがどう歌われるかっていうのは気になりますか?

一青:気になります。
「なるほど。こういう解釈になるか」って発見することが多いですね。
それは自分の曲がリリースされたときにも毎回、思うんですけど。

平野:書いた詞を、自分で歌うものと人にあげるものとに、
どうやって切り分けるんですか?

一青:まったく一緒ですね。
書いた瞬間に産み落としたような感じなので、そんなに執着もないです。
「返して!」みたいなのもないし(笑)。

平野:なるほど。

一青:平野さんは芸術に立ち向かったときに
感動して震えて泣いた経験って何回もありますか?

平野:ないです。

一青:え? ない?

平野:泣いたことはないな。

一青:ほんとうですか?
あるいは怒りでもいいんですけど。感情がざわめくみたいな。

平野:それならありますよ。
たとえば最初に《ゲルニカ》を見たときは、しばらく動けなかった。

一青:同じです! あれはびっくりしますよね。

平野:衝撃でした。
どこに感動したのか説明しろって言われてもできないけど。

一青:あれ、もはや好き嫌いじゃないですもんね。

平野:そう。作品というより存在だし、
強烈ななにかを放射しているっていうか…。

一青:ラジオ波を出してるみたいな。

平野:そうそう(笑)。

一青:私は写真展とか行って、キャパだったかな。
戦場の写真を見ていて、おぞましすぎて気を失ったことがありますね。

平野:あぁ。

一青:太郎さんの展示でも言葉で感動して泣いたりもするし。
感動屋さんなんですかね?

一青窈EXシアター③

平野:やっぱりそれはアーティストの感性なんじゃないかな。
ぼくはプロデューサーでしょう?
もちろん直感で判断することも多いけど、基本はロジックです。
ものごとをロジカルに組み立てていくのがぼくの仕事。だからかな。

一青:客観性が求められる仕事ですものね。

平野:そうです。しかも奏者じゃない。
窈さんみたいに自分を表現する「演奏者」ではなく「指揮者」です。
たぶんもっている感覚とか感性の質が違うんでしょうね。
自分にない分、ぼくはすぐれた表現者をすごくリスペクトしているし、
泣ける人が羨ましい。

一青:別の才能なのかもしれませんね。
素晴らしいプロデューサーに出逢えるかどうかってすごく大きいことだと思います。
ただの絵を描く人、歌を歌う人がポツンポツンといてもどうにもならない。
人には伝わらないわけで。
それを「こうしたらたくさんの人に届くんじゃないか」とか
「こういう方向性にすればもっと見やすくなる」とかっていうようなことを
助言してもらえるのは、とても大切なことだと思うんです。

平野:うん。

一青:私自身のことでいえば、
「もらい泣き」のときに武部聡志さんや事務所の社長に出会えたことで
一青窈の道ができたっていうのがこの人生において大切な宝だと思っています。

平野:ただ、プロデュースサイドだって、
「こいつのここを引っ張りあげたら面白いことになるぞ」って思わなきゃ使いませんよね。

一青:そうでしょうね。

平野:つまり、出会ったときには、すでにもっていたんですよ。
一青窈の中に特別なものがあったからそうなった。
一言でいえば、得意技、決め技をもっていた。

一青:そうなのかなあ(笑)。

平野:横綱の白鵬ってね、寄切りや押し出しを除くと、
多くは上手投げで勝っているんです。
上手投が圧倒的な決め技なんですよ。

一青:へえ。

平野:つまり彼が土俵でなにをしているかというと、
いかにして相手を上手投げに引き込むかを考えているわけです。

一青:なるほど。

平野:相手を自分の得意技に引き込む術が「戦術」です。
窈さんはどうやって周囲を自分の得意技に引き込んでいるのか、
そこが知りたいんですよ。

一青:それはもうひたすらスタジオで裸になってるとしか言いようがないですね。

平野:裸になってる?

一青:「この脱ぎ方はいかがなものかい?」って思いながら歌う。

平野:(笑)

一青:「この肩見せはどうだ?」と。あるいは「スリットはどうだ?」と。
いろいろと脱いでいって「これが一番素敵な脱ぎ方じゃない?」
っていうものを曲に対して決め込んでいくってことですね。

平野:なるほど。ということは、窈さんの声とかこぶしとか表現力とか、
独特な個性のベースになっているものは計算じゃなくて、
生まれながらに身についていたものなのかな?

一青:すごくナチュラルにやってます。

平野:そうなんだ。

一青:人によってはレコーディングの過程でいろいろな歌い方を出して、
プロデューサーと一緒に決めていく人もいますけど、私はあまり見られたくない。
「鶴の恩返し」みたいなもので。

平野:(爆笑)

一青:「ちょっと待ってて」って言って、
家であれこれ歌い試していってレコーディングに臨みます。

平野:アーティストが一枚の絵を描くときにエスキースを何枚も描くじゃない?
そんな感じなのかな?

一青:私は理系だったので、わりとマッピングはしているかもしれないです。

平野:マッピング?

一青:X軸とY軸があって、ここら辺が明菜ちゃんぽい、これが林檎さんぽい、
これがMISIAぽい、エリカ・バドゥぽい、アレサ、ホイットニー…、
あるいはビル・エヴァンス。いろいろある合間はどこなんだろう?
っていつも考えてました。

平野:超ロジカルじゃない!



一青:ここでこんな感じの歌い方をすると
「やっぱドリカム好きだよね」みたいにならないように、
一青窈ならどうするんだ? ってマッピングの間を泳いでいくように歌詞を書き、
歌を歌っていくと、「なるほど。誰でもない」と。

平野:それは意識してやってること?

一青:意識してやってます。
っていうか、意識してました。大学生の頃ですね。

平野:そういうトレーニングを大学時代に積んでいたから、いま無意識のうちに…

一青:はい。

平野:なるほど。

一青:サブカルを叩き込んでくれたのが
福田和也先生とその研究会に集まっていたメンバーたちでした。
「こんな音楽もある」「こんな映画もある」「こんな変わった人たちが世の中にいる」
っていうのを教えてもらったんです。
私が知っている世界はすごく狭かったんだなと思って。
そこで私ははじめてカルチャーみたいなものに興味をもったんです。

平野:なんか、いま、わかった。

一青:え?(笑)

平野:岡本太郎をつくったのはあきらかに「民族学」ですよ。

一青:はい。

平野:パリ時代、太郎はパリ大学で民族学の父マルセル・モースに師事して
民族学に没頭したんですね。
その経験が太郎の芸術思想の核になっていることは疑いがないし、
だから太郎の発想は普通の画家や彫刻家と決定的にちがう。

※「マルセル・モース」
フランスの社会学者、文化人類学者。
デュルケームを踏襲し、「原始的な民族」とされる人々の
宗教社会学、知識社会学の研究を行った。

一青:そうなんですね。

平野:太郎が普通の絵描きとまるで違うものをつくったり、書いたりできたのは、
ベース「民族学」的な感性とものの見方が身についていたからです。

一青:なるほど。

平野:同じように、一青窈は意識せずとも素っ裸になれば一青窈。

一青:そうです(笑)。

平野:その一青窈をつくったのは、大学時代の超ロジカルなマッピング思考と
福田さんから注入されたサブカルの教養。メカニズムは太郎と同じですよ。

一青:大学時代に自分の歌の立ち位置みたいなものを模索したあと、
一人旅に取り憑かれたんですね。

平野:はい。

一青:とにかく書いてある事柄よりも自分の感覚を信用しようと決めて、
たくさんの国に行って、たくさんの人に出会って。
中学の心に《ゲルニカ》に会って感じた感覚っていうものを
もっとたくさん貯蓄しようと思ったんです。

平野:うん。

一青:そのためには一人じゃなきゃダメだっていうのがあって。
誰かと共有するとやっぱり感覚が濁るっていうか。

平野:わかる。

一青:『キリング・フィールド』っていう映画を見て、
それがカンボジアの大量虐殺だって勉強しても、
ほんとうに自分がその場所に行ったら違う感情が沸き上がってくる。

平野:そうだろうね。

一青:そのときに私だったらどうするか?
それを獲得するための旅だったんです。
そこで得た感覚を歌詞に落とし込んでいったり。

平野:それって…

一青:はい。

平野:旅っていうより、取材だよ。

一青:(笑)

 



一青窈

東京都出身。
台湾人の父と日本人の母の間に生まれ、
幼少期を台北で過ごす。
2002年、シングル「もらい泣き」でデビュー。
5枚目のシングル「ハナミズキ」、
そして初のベストアルバム「BESTYO」が大ヒットを記録。
ガイド本や詩集などの書籍の執筆や、
音楽劇や映画で主演をつとめるなど、
歌手の枠にとらわれず活動の幅を広げている。
2015年末公開予定の映画「はなちゃんのみそ汁」への出演、
主題歌担当も決定している。
オフィシャルHP 
http://www.hitotoyo.jp/

○新譜情報
カバーアルバム
「ヒトトウタ」
2015年7月29日発売


51-3746_2A_001@99_o_4P

<通常盤>
CD  11曲入
¥3,000(税抜)
UPCH-20398

51-3746_2A_001@99_o_4P

<初回限定盤>
CD 11曲入+DVD
¥4,200(税抜)
UPCH-29192
(DVDには 「一青窈 TOUR 2014-2015 ~私重奏~」
2015.2.28  TOUR FINAL @ EX THEATER ROPPONGI ライブ映像 10曲収録)

<CD収録曲>
1.ハナミズキ (一青窈 初のセルフカバー)
2.幸せな結末 (大滝詠一)
3.たしかなこと (小田和正)
4.Everything (MISIA)
5.アイ (秦 基博)
6.ジュリアン (PRINCESS PRINCESS)
7.瑠璃色の地球(松田聖子)
8.糸 (中島みゆき)
9.ロマン (玉置浩二)
10.青春の影 (チューリップ)
Bonus Track 四照花(ハナミズキ Chinese Ver.)

<配信>
iTunes Music Store: http://po.st/ithitotouta
レコチョク: http://po.st/recohitotouta

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