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ダースレイダー対談②「日本語ラップの過去・現在・未来」

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ヒップホップ界をリードするラッパー ダースレイダーさんの対談、
第二回目は「ラッパーの存在」と「ヒップホップの考え方」についてお聞きします。

〈前回までは〉
①「シェイクスピアが元祖ラッパーだ」なんていう人もいるくらいで。

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ある意味「ぶっ壊しちまえ!」みたいなね(笑)。

平野:いま話を聞いていて思うのは、
たとえば演歌歌手が、「波止場」「女」「煙草のけむり」を切々と歌いますよね。
構造としては、これっていわば〝演説〟じゃないですか。
コンテンツを一方的に開示しているだけだから。

ダース:はい。

平野:でもラッパーは最初から相手を挑発したり触発したり、
コミュニケートする目的で声を出してる。

ダース:そうですね。とくに最初の頃はそうですね。

平野:でしょ? しかもレコードのここの15秒は最高だけど、
あとはクソだっていうのは、ある種の批評じゃないですか?

ダース:批評ですね。

平野:ですよね。つまりラッパーとは、
ミュージシャンであり、批評家であり、アジテイターであるっていうこと?

ダース:そうですね。おもしろいのは、楽器もできないし、
楽譜も読めないような人たちがやっちゃうっていうところ。
そのあたりはパンクとかと考え方は一緒です。

平野:うん。

ダース:ある意味「ぶっ壊しちまえ!」みたいなね(笑)。
「自分ではちゃんとした演奏ができないから、
人様のちゃんとした演奏を使って、自分を表現するんだ!」っていう考えなんです。

平野:なるほど。

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ダース:よくこういう話をするんですけど、エジソンは数学ができないって話で。

平野:はい。

ダース:エジソンが「オマエは偉そうなこと言うけど、数学できないじゃないか!」
って言われたときに「私は数学ができないけど、数学者を雇って
自分の考えを形にすることはできる」って。
つまり「そんなのは得意なヤツにやらせりゃいいんだよ」っていう。

平野:おもしろいな。

ダース:ヒップホップの人たちは、ギターも弾けない。ピアノも弾けない。
だけど「上手いピアノ弾いてるヤツがこのレコードにいるんだよ」ってレコードから拝借する。
さらに「ドラムは、このドラマーがすごくいいいから、このドラマーに叩いてもらおう」って
そのドラマーのレコードを使う。なんならそのドラマーのレコードのところに、
さっきのピアノを上から乗っけちゃう。

平野:なるほど、なるほど。

ダース:そうやって自分の好きなものだけで音楽をつくって、
そこに自分の好きなことをしゃべりはじめる。

平野:まずは壊すことからスタートするわけですね。

ダース:でもだからこそ、いまだにそういったことをやる上での
権利関係の問題はずっと付きまとっているんですけどね。

平野:そうでしょうね。

ダース:最近もボブ・ジェームスっていうジャズの人が、
ヒップホップのプロデューサーのマッドリブを訴えたんですよ。
「自分の曲を勝手に使いやがった。
しかも自分はそういうつもりで曲をつくってないのに、
そこだけ勝手に使うんじゃない!」って怒るわけ。
つくった側からすれば、とうぜんの理屈です。

平野:はい。

ダース:だけどヒップホップ側は「知りません」。
「ぼくは楽器もできないし、聴いててここがいいと思ったから、
使ってるだけです」と(笑)。

平野:やんちゃだな(笑)。

ダース:でも、いまみたいに大きなビジネスになって、お金を生んでしまう以上、
そういったことが裁判になってしまう。
だから権利関係で細かい話をしなきゃいけないんです。

平野:ま、そうでしょうね。

ダース:でもとくに牧歌的だった80年代初頭は、
ほんとうに自分の好きなレコードを使って
「その上でオレは自分の好きなことをしゃべるよ~」みたいなことをやってたんです。

平野:「最高の部分だけを使いたい!」っていう気持ちはわかるけどね。

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ダース:そうやって使うことによって、
昔の曲の再評価につながることもあるんですよ。

平野:なるほど。

ダース:ジェームズ・ブラウンなんて、
80年代に終わった人って言われていて、
ロートルの、それこそ老いぼれた演歌歌手のような扱いだったのが、
「いや、ジェームズ・ブラウンのレコードにはこんなカッコイイところがあるんだよ」
っていうのをヒップホップの観点で見つけ直していった。

平野:そうすることで再び光が当たったわけですね。

ダース:音楽への着眼点を変えることによって、
曲のポテンシャルが出てくるっていう。
これはヒップホップが果たした役割として大きいのかなと思いますね。

平野:でもぼくはずっと、それこそ70年から洋楽を聴いてますけど、
ラップなんていうワードが出てきたのは、かなり後のほうでしょ?
いつ頃入ってきたんですか?

ダース:歴史としてしっかり研究しているわけではないけど、
82年くらいに「ワイルドスタイル」っていう
ヒップホップ映画が日本で上映されるんですね。

平野:映画か…。

ダース:ヒップホップの四大要素は、
ラップ、DJ、ブレイクダンサー、
そしてグラフティライターっていう絵を描く人たち。

平野:壁に絵を描く人たちですね?

ダース:はい。それを記録した映画なんです。

平野:うん。

ダース:ニューヨークの若いグラフティライターの日常を追っかけながら、
ヒップホップのパーティをみんなで企画するっていう他愛もない話なんですけど。

平野:それでラップという言葉が入ってきた?

ダース:そうですね。その映画が82年に公開されて。
それに出ていたダンサーたちが来日ツアーをして、
「笑っていいとも!」にも出たりして。
それをたまたま見た人たちが日本のヒップホップをやるようになったんです。

平野:そうか…。
いや、ぼくね、いままでいろんな人とお話する機会があったんですけどね。

ダース:はい。

平野:ものごとをこんなにわかりやすく説明してくれる人、ほんとに久しぶりです。

ダース:(笑)

-ヒップホップ語らせたら日本一ですよ。間違いなく。

平野:メチャクチャ頭いいんだろうな。いや、ほんとにわかりやすかった。

ダース:(赤面)



次回は「コンプレックス」についてお聞きします。
お楽しみに!

ダースレイダー対談③

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ダースレイダー

日本人のヒップホップ・ミュージシャン/トラックメイカー。
1977年フランス、パリ生れ。
少年期はロンドンで過ごす。東京大学文学部中退。
音楽に傾倒しつつも何も出来ずにいたところをラップと出会い、
独自のFUNK/SOULミュージックとしての、
HIPHOPを追求することになる。
Da.Me.Records主催。
“ファンク入道”や“RAYMOND GREEN”名義でも活動。
98年、MICADELICのメンバーとして活動開始。
2004年の『THE GARAGEFUNK THEORY』を皮切りに、
コンスタントに作品を発表。
『月刊ラップ』編集長を務め、著書も発刊。
音楽愛にあふれたMCにも定評があり、
TV番組ほかさまざまなメディアでマルチに活躍。
2014年に漢a.k.a.GAMIが率いる鎖GROUPに加入、
レーベルBLACKSWANの代表に就任した。

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