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ダースレイダー対談⑥「日本語ラップの過去・現在・未来」

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ヒップホップ界をリードするラッパー ダースレイダーさんの対談、
第6回目は「高校生のラップ事情」についてお聞きします。

〈前回までは〉
①「シェイクスピアが元祖ラッパーだ」なんていう人もいるくらいで。
②ある意味「ぶっ壊しちまえ!」みたいなね(笑)。
③留守電に自分のラップを吹き込んで、練習したりね。
④向こうのヤツらが納得するような表現をどうやってつくるのか?
⑤アメリカ意識は相当薄まっていますけどね。

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いまは休み時間に廊下でみんな一緒にやってますからね。

平野:先達も若い人も含めて、日本のラップ界全体を考えれば、
ダースさんっていわば中間管理職的な存在でしょう?

ダース:そうですね。

平野:どの世界も中間管理職が一番辛いからね。
その会社を動かすのも、変えるのも、その世代。
これからの日本のラップをどうするかって、ダースさん、考えるでしょ?

ダース:いま高校生ラップ選手権がすごいブームになっているんです。
高校生たちがラップでバトルするんですけどね。

平野:ラップでバトル?

ダース:ラップバトルって昔からあるんですよ。
ニューヨークで70年代末期にギャング団同士の抗争が盛んで。

平野:はい。

ダース:黒人同士で喧嘩ばっかりしていた。
それをギャング団のボスでもあったアフリカ・バンバータが
「黒人同士が争って殺し合って誰が得するんだ?
俺たちが憎いと言っていた白人が得するだけじゃないのか?」と。
「みんなダンスが得意だったり、ラップが得意だったり、
DJが得意だったりするんだから、喧嘩するんなら、それでやれ!」
「ラップで戦え! ダンスで戦え!」っていうのを提唱したんです。

平野:おおお。カッコいいな。

ダース:それで、ラップで相手を打ち負かす能力が、
ヒップホップのスキルのひとつになっていったわけです。

平野:いってみればディベートみたいなものですね。

ダース:そのラップバトルがいま日本ですごく流行っていて。

平野:高校生の間で?

ダース:はい。BSのスカパーで放送しているんですけど、
全国的に高校生がラップしているんですよ。

平野:へえ。

ダース:ぼくらの時代はラップやってるってだけで変わり者だったし、
学校に一人いればい方だったけど、
いまは休み時間に廊下でみんな一緒にやってますからね。

平野:知らなかったな。

-青年の主張みたいな?

ダース:そうです。それのカッコイイ版みたいな。
いまではクラスの中でモテるカッコイイヤツがラップしてる。

平野:なるほど。

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ダース:これまではアウトサイダーのものだったのにが、
いまでは野球部のキャプテンみたいなヤツがやるようになってきて。

平野:(笑)

ダース:そうなると敷居が低くなるから、
やりやすくなって人口が増える。いまその気配があるんですよね。

平野:人口が増えたらどうなるんですか?

ダース:ぼくらはとりあえず「アメリカだ!」って目標があったから、
葛藤を経てラップを身につけるっていうある意味、
正当な身につけ方をしてきたと思うんですけど、
いまは気がついたらラップを着てるっていう状態だから、
その着ているものがどんなものなのかをある程度は
認識させなきゃいけないと思うんです。

平野:なるほど。

ダース:言葉なので意味がある。
意味をもつ言葉を相手に投げることにともなう責任も理解しなければなりません。
悪口を言っても「ラップだからいいじゃん」みたいに誤魔化すことが多いけど、
意味がある言葉を相手に投げているんだから、言いっ放しにしてはいけない。

平野:そうですね。

ダース:「ラップだから大丈夫ですよね?」
なんていう免罪符はないんだっていうことをね。
昔はラップをやること自体に覚悟があったけど。
いまは軽くやっちゃうから。
「覚悟」がない人が増えちゃってるんですね。

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平野:なるほど。
いま全国津々浦々で、スノーボードみたいな感じでラップ人口が増えている。
「なんだラップって気軽にできるじゃん!」って囓るヤツがいっぱい出てきて、
人口が増えてきた。
でもよく考えてみたら、「そもそもラップってなんのため?」っていう話になりつつあると。

ダース:そうです。

平野:ラップっていう存在そのものの意義とか役割とか価値とか、
そういうものに対する迷いが生まれつつあるってことですか?

ダース:いや、ぼくは、ラップってしょせんは
ただの歌い方のひとつでしかないっていうくらい軽く考えているので。

平野:なるほど。それでいいんだと。

ダース:歌を歌う人が増えるのは悪いことではありませんよね。
もちろんみんなが上手いわけではない。
ぼくはよくサッカーにたとえるんですけど、
サッカーをやってる人はいっぱいいても、
ブラジル代表レベルの技術をもっている人はごくごく一部の才能ある人です。

平野:そうですね。

ダース:ラップもおなじで、誰でもできます。
要はボーカルテクニックだから。
でも、それを上手にやったり、意義あるものにできるか、
価値あるものにできるかどうかっていうのは、タレント(才能)の問題。
絵だって世界中のこどもが描いてるけど、
みんなが天才画家になれるかっていうとなれないわけで。

平野:はい。

ダース:悲しいけどそれが現実です。
逆にみんながプロになれないからこそ、プロになれた人の価値がある。
むしろみんながやるようになってはじめて、
すごい人の価値も認められるようになるんだと思います。

平野:高校生ラップバトルとかが流行ってどんどん広がっているということは、
ラップがもはや特別なものではないということであり、
同時にプロの価値が認められる土壌ができたということなんですね。。

ダース:そうです。もはや特別なものではないんです。
そう認識してもらう方が、いろいろ広がるのかなって思います。

平野:なるほど。

ダース:だからこそ、すごいラップをしている人ってすごいんだっていうことになるし。

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平野:簡単にいえば、「ラップをあたりまえの日常の中に」。そんな感じかな?

ダース:そうですね。

平野:単純に、ラップをやれた方が楽しいよ!ってね。

ダース:遊びですから。サッカーと同じなんですよ。
絵だって、紙があれば誰でも描けるし、描けばいい。
でも、世界中の人がびっくりするような絵を描くっていうのは、
それは大変なことなんですよっていうあたりまえのことにしたいんです。

平野:よくわかります。

ダース:ラップもこども同士が集まったらやってほしい。
リズム感はもちろん、ボキャブラリーっていう意味でも、
国語教育として取り入れてほしいですね。

平野:ああ、なるほど。

ダース:「韻を踏む言葉」をリズムに合わせて出していく。
これは教育として、とくに小学校でやったらいいんじゃないかと思います。

平野:ラップって、アドリブではないんでしょ?

ダース:いえ、基本はアドリブ、即興ですよ。

平野:え!? そうなの!?

ダース:とくにバトルでは即興でやることに価値がある。
相手が言ったことにその場で返すわけですからね。

平野:それって、すごいことじゃないですか!

ダース:でもそれをいま高校生がやっているんです(笑)。

平野:ぼくはてっきり、歌のように書いたものを
暗記して歌ってるんだと思ってました。

ダース:そういう人もいますけどね。
でも、普通にしゃべるときでも、
そんな風に考えたものを用意してしゃべったりしてないじゃないですか。

平野:はい。

ダース:そのしゃべりにリズムを付けたのがラップですから。

平野:あ、そうなんだ。それは難しいな。

ダース:やり方を習得すればね。
スキーなんかと同じで、できるようになればできちゃうってことなんで。

平野:そう?

ダース:じっさい、いまの若い子たちは柔軟にそれができるようになってきてますよ。

平野:とうぜん、いちおう韻が踏めていればOKとかいう話じゃなくて、
メッセージ性とかヒネリとか、アイロニーとかいろいろなものがないとダメなんでしょ?

ダース:そうですね。

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平野:ってことは、大喜利に近い?

ダース:ええ。大喜利みたいなものを瞬発的にやっていく感じです。

平野:ただし攻撃的なんですよね? ラップって。

ダース:それがある種のパワーになるというか、
言葉にパワーを与えていくんです。
たとえばアメリカの政治家がしゃべっているのって、やっぱりリズムがあるんですよ。
でも日本の政治家がしゃべってるのを見ると、ノペーっとしていて入って来ない。

平野:うんうん。

ダース:それは言葉にパワーを与えられてないから。
リズムがないから。もちろん紙を見ながらなんていうのは論外。

平野:そうね。

ダース:けっきょく紙を読むために下を向くことによって、
言葉が下に出て行くから全然広がって行かない。

平野:おもしろいなぁ。
ラップって、メチャクチャ知的なことをやってるんじゃないですか。

ダース:ぼくはそう思っています。

平野:ほんとですね。

ダース:でもおもしろいのは、ラップって、ろくに教育も受けていないような、
ニューヨークのスラムに住んでいるようなヤツが上手だったりするんですよ。

平野:ああ。

ダース:だからこそ、そこにいろんな可能性があると思うんですよ。
遊びとしてもそうだし、レベルの高い文学的なこともできると思うし、
応用して演説の精度を上げることもできると思うんですよね。



次回はいよいよ最終回です。
「岡本太郎とラップ」についてお聞きします。
お楽しみに。

ダースレイダー対談⑦

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ダースレイダー

日本人のヒップホップ・ミュージシャン/トラックメイカー。
1977年フランス、パリ生れ。
少年期はロンドンで過ごす。東京大学文学部中退。
音楽に傾倒しつつも何も出来ずにいたところをラップと出会い、
独自のFUNK/SOULミュージックとしての、
HIPHOPを追求することになる。
Da.Me.Records主催。
“ファンク入道”や“RAYMOND GREEN”名義でも活動。
98年、MICADELICのメンバーとして活動開始。
2004年の『THE GARAGEFUNK THEORY』を皮切りに、
コンスタントに作品を発表。
『月刊ラップ』編集長を務め、著書も発刊。
音楽愛にあふれたMCにも定評があり、
TV番組ほかさまざまなメディアでマルチに活躍。
2014年に漢a.k.a.GAMIが率いる鎖GROUPに加入、
レーベルBLACKSWANの代表に就任した。

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