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第3回 岩間玄④

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「明日の神話」プロジェクトメンバーとして、
数々のテレビ番組を制作されたプロデューサーの岩間玄さんに、
岡本太郎への熱い思いを語っていただいています。

〈前回までは〉
岩間玄①「そこから大きなストーリーが始まるんです」
岩間玄②「太郎の死と“本当の出会い”について」
岩間玄③「大いなる後悔と“太郎宣言”について」

“隠れ太郎”が隠れられなくなった日について。

“隠れ太郎”だった岩間さんにも太郎のことを話せる人がいたようで・・・



ただ唯一例外だったのが、
後々脚本家になる大森寿美男です。
(※ドラマ『TAROの塔』の脚本家)

大森とは、
僕がテレビプロデューサー、
彼が脚本家になるずっと前、
10代のころからの親友で、
彼とだけは昔から実にいろんな話をしていたんです。

で、唯一彼とだけ太郎の話をしたことがありました。
ある晩、二人でめちゃめちゃ酒飲みながら
『岡本太郎って知ってる?』なんて話をして。
大森も『もちろん知ってるよ』と。
酔った僕が
『そういう意味の知ってるじゃなくて、
本当の意味で知ってるか?
本当の意味で岡本太郎と出会っているのか?』
なんてクダ巻いて(笑)。

のちに彼が岡本太郎の傑作ドラマを
書くことになるなんて
お互いこれっぽっちも思っていないから、
彼はいい迷惑ですよね(笑)。

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それで『これを読め!』っていって、
『今日の芸術』を一緒に読んだりするわけです。
で、あらためて二人で心を揺さぶられるわけです。

でもそれくらいですよ、
僕が太郎の話をしたのって。

だから数年間、ずっと“隠れ太郎”です。

98年にここ岡本太郎記念館が開館してからも、
ちょこちょこ“隠れ太郎”として来ているわけです。
でも“隠れ太郎”だから、
むやみに人に言ってはいけないぞ、みたいな。

だから文字通り隠れるようにきて、
敏子さんを見かけても、
『うわ、敏子さんだ』って心で叫ぶ(笑)。

いま思えば声をかけておけばよかったんだけど、
“隠れ太郎”だから、ダメなんです。
そんな風に簡単に声をかけちゃ。

だから、
『あの人が敏子さんなんだ。
なるべくそばオーラでも浴びておこうっと』みたいな。
そんな感じで後ろ姿に、
そっと手を合わせたりするような(笑)。

そんな日々を過ごして、
いよいよ“隠れ太郎”が
隠れていられなくなる
あの2003年になるんです。

2003年に、
『《明日の神話》がメキシコで見つかった』
っていうニュースを知りました。

『そうなんだ。そんなものがあったんだ。
それはすごいことだな。それはぜひ見てみたいな』

…なんて
本当にただの素人として、
そのニュースを聞いていました。

するとある日、
同じ日本テレビの土屋敏男
(※『進め!電波少年』の『T部長』として有名な
プロデューサー)が僕のところに
やって来たのです。

『岩間、最近、ヒマ?』って聞かれたので、
『そうでもないけれど、
まあ精神的には比較的ヒマかもしれない』なんて。
まぁいつもどおりの、
これといった意味のない
生産性のない会話をしていました。

ところがその日は違った。
続きがあったんです。

『あのさ、岡本太郎って、好き?』
唐突に聞かれて。
一気に心拍数は上がりました。

ただ質問の真意がわからないから、
こちらとしても警戒をするわけです。

もしここで迂闊に僕が
“隠れ太郎”だということを表明すると、
『そうか。オマエはダメなヤツだな』
なんて言われるかもしれない。

罠かもしれないわけです。

だから、
『そうね、好きか嫌いかでいったら、
どっちかっていうと、好きじゃない、
ってわけじゃない…かもしれないけれど』

どちらにも受けとれるような言い方を
したりなんかして(笑)。

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何を土屋が期待しているか分からないですからね。
そしたら意外な言葉が返ってきたんです。

『そうなんだ。実はさ、
岡本太郎が大阪万博の《太陽の塔》制作の同時期に、
《明日の神話》っていう壁画を作っててさ』

『あぁ、知ってる知ってる。何となくニュースで見た』

なんて、本当はよく知ってるんだけど、
まだ警戒してて。

『行方不明になっちゃってたんだけど、
それが見つかってさ』

『ふむふむ』

何の話だ?

『あれをさ、日本に持ってきたらどうだ?
みたいな話があるんだけど、
それって面白くない?』

だんだん質問が輪郭をともなってきて。
なるほどそっち方向かと(笑)。

『めちゃめちゃ面白い。それは面白い!』

『でしょ。岩間さ…、一緒にやんない?』

『やる!!』

土屋敏男っていうのは本当に変わった男で、
ぼくより10歳上なんですけど、
会社でちょっと異端なやつとか、浮いているやつとか、
本流に染まってない変わったやつとかをハントするのがうまいんです。

嗅覚が鋭いっていうか。

だからそのときも社内をプラ-っと歩いて、
『あ、岩間がいるぞ』と。
『あいつ異端の異端だし、どれどれ話かけてみるかな』
くらいの、多分そんなテンションなんですよ。

で結果、『じゃ、岩間、オレとやろう』って。
そこから物語がドーッと動き出すんです。

僕もそれまでは“隠れ太郎”だったのが、
隠れてなくてもよくなるわけで。
いやいやむしろ隠れている場合じゃないぞって
ことになるわけです。

土屋も急に真顔で言うわけです。
『実は今メキシコにあってボロボロなんだよ。
でもこれをとにかく日本に持ってくるには、
ベラボーに金がいるし、
いろんな人たちの応援がないといけない』

『そのためにオレたちはテレビ局だから、
まず番組を作ったり、いろんな呼びかけをして、
応援の風を吹かそう!』

それから当時は氏家齊一郎会長っていう、
(※日本テレビ放送網代表取締役会長)
昭和の傑物がまだ存命だったので、
『氏家会長を口説いて、
日本テレビがそのプロジェクトに、
きちんと協力をするというのを取りつけよう!』

そう決めて二人でけっこう動くんです。

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まずは編成や営業のところに行って、

『岡本太郎がこれから大変なことになる!』

『今は誰も知らないけど
まもなくすごい状況になる!』

『今のうちに日本テレビは
いち早く手を上げておいたほうがいい!』

みたいな、よく分からないトークをしまくるんです。

言われた方は、意味が分からないから、
『大変なことってどういうことですか?』って
なんて不審な目で訝しんだりして。

『いやいや、今は分からないかもしれないけど、
いずれオレたちに感謝するときがくるから!』

みたいな、もうほとんど詐術のようなトークです(笑)。
でも煙に巻くくらいの感じで
一気に突っ走らないとダメだと思って。

土屋と僕の二人で
いろんな人を煙に巻きながら、
その人も『いつの間にかやることになってる』という状況に持ち込んでいくんです。

『氏家会長も今ノリノリだから』とか言って(笑)。

もちろん半分くらい嘘じゃないんですよ。

でも氏家会長が『特番をやれ!』って
命じたわけでもないし、
何か具体的に指示を出したわけでもない。

ただ氏家会長は、
『《明日の神話》修復を日本テレビでも応援しよう。
オレも太郎さんは大好きなんだよ』
とは笑って語っていた。確かに。

だからそのことを以て
『会長もどんどんいけ!と仰っている』と(笑)。

『社命に逆らうようなことはオレもできないから。
これはやらないとマズいよねぇ…』なんて(笑)。

本当にそうやって一人一人巻き込んでいって
『そうなのか。それなら…』っていう感じで。
本当にそんな風にして
土屋と僕とで
少しずつ仲間を増やしていくんです。

こうして集まっていった仲間は、
本当に信頼できる熱い人たちでした。
土屋と僕に巻き込まれたのに、
いつの間にかその人自身も
すっかり巻き込む側に回っている(笑)。
「あれ?」みたいな。



次回はいよいよ動きだすプロジェクト!

岩間玄⑤

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岩間 玄

1966年北海道生まれ。
早稲田大学第一文学部美術史学科卒業。
日本テレビ放送網・事業局 統括プロデューサー。
ドラマ・ドキュメンタリー・バラエティなど20年以上番組制作を指揮し、
2014年より現職。
2014年「チームラボ 踊る!アート展と、学ぶ!未来の遊園地」、
2015年「えのすい×チームラボ ナイトワンダーアクアリウム」など
従来にない新しいタイプの展覧会を企画・プロデュース。
かつて「明日の神話」移送・修復の際、プロジェクトメンバーとして
数々のテレビ番組を制作した。

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