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Toshiko's essay ⑩ play character " impressed deeply with Shindo work"

敏子のエッセイ⑩遊ぶ字「新藤作品に惚れこみ」

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今回の「満月日記」は、
岡本太郎の「書」と映画監督の新藤兼人さんとのこと。
太郎の「書」の魅力とは?

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岡本太郎の書が随分多くの映画のタイトルになっていることは、
御存知ない人が多いだろう。
新藤兼人監督の「鬼婆」「母」「本能」、
アメリカ映画の「マーニー」などという片仮名もある。

岡本太郎は新藤さんの「裸の島」に本当に感謝していた。
深刻にでありながら、映画詩のような透明で美しい。
世界史のベスト5に残る映画だと惚れこんでいたから、
その人からタイトルを頼まれた時は喜んで無条件で引き受けた。

最初が「母」。
豊かな母性であると同時に、女である。
なまなましくセクシュアルで、神聖な母。
すぐ翌年「鬼婆」。

一面のススキの原。
激しく風になびく。
その荒涼ともの凄まじい風景の上に
「鬼婆」という独特の文字が赤い色で浮かび上がる。
まるで鬼婆そのものがさあっと走って行く。
凄みのある、美しいタイトルだった。

すっかり惚れ込んだ新藤さんはそれから作る映画、
たて続けにタイトルの文字を頼んできた。
「本能」も、「性の起源」も、エロティックであり、高貴で、
すばらしい迫力のタイトルが出来た。

新規ドキュメント 5_1
筆を持つことは好きだった。
『遊ぶ字』という、絵のような書の画集もある。

漢字は象形文字だから、
彼にとっては意味と同時にイメージそのものであり、
モチーフを触発されるらしい。
この画集の企画を持ち込まれたときも、
「うむ。いくらでも書けるね」と即座に引き受けた。
そして楽しそうに、次から次から、多彩な文字を繰り出していった。

「絵」という字は、
まさに、絵筆を持って絵を描いている画家の形をしているし、
「色」という字には、
黒一色なのに、その中からあらゆる彩りが湧きあがってくるよう。
「鼠」はかわいい小動物がキョロリと丸い眼を見ひらいて、
何ともいえぬ無邪気な生命感。

どこからこんなイメージが湧き出してくるのだろう。
奇想天外の、まさに抽象絵画なのだが、
それがちゃんと読めるところが面白い。
いまの前衛書道というのは、何という字ですよと解説されても、
まるで読めないものがほとんどだが、
岡本太郎のはそうではない。

「母」は母であり、
「能」はまぎれもなく能である。
しかし、その形象の緊張感。気格。
これは日本人のように漢字に親しんで育った者でなくても、
間違いなく感得されるものらしい。

ベトナム戦争たけなわの頃、
市民団体「ベ平連」の人たちがアメリカ人に反戦をアピールするために、
ニューヨークタイムズの一面を買い切って、全面広告を出した。
頼まれて岡本太郎は「殺すな」という文字を書いた。
勿論、筆書きだ。
この広告は強烈な迫力で、今でも語り草になっている。

うまい字を書こうなんて気は全然ない。
天衣無縫だから良いのだろう。
そのうちに一度、書の展覧会を企画してあげたいと思っている。



次回は「自然『衰え見せない“磁力”」をお送りします。

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