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Shuichi Miyawaki talk ① “The produce is way of life, way of sing”

宮脇修一対談①「プロデュースは生きざま、唄いざま」

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フィギュア業界の風雲児として世界に名を轟かす、株式会社海洋堂の社長でありながら「センム」の愛称で親しまれる宮脇修一社長との対談です。

宮脇修一②海洋堂って「人格」として認知されているような気がする。
宮脇修一③
暮らしのなかでフィギュアを愛でる文化を育てたいんです
宮脇修一④ボクが大切にしているのは、フィギュアがいかにダメかを自覚する自覚力。
宮脇修一⑤造形師の作風が絵画以上に立体物には出るものなんです。

第一回目は、意外なことに宮脇さんは「日本はフィギュア嫌い」とおっしゃいます。その理由についてお聞きしました。

日本には立体物を楽しむ文化って、ないですからね。

平野:今日は、圧倒的な存在感でフィギュア界に君臨するカリスマ、海洋堂の宮脇センムにお越しいただきました。海洋堂は岡本作品のオフィシャルフィギュアを制作する唯一のメーカーであり、宮脇さんはその司令官。なによりプロデューサーとしてぼくがリスペクトする人です。今日はいろいろなお話をうかがおうと思っています。よろしくお願いします。

宮脇:こちらこそ。

平野:宮脇さんとのおつきあいって、もう10年以上になりますよね?

宮脇:最初はたしか「タイムスリップグリコ」の大阪万博編のときです。2004年のヴェネチア・ヴィエンナーレに展示したいっていう話になって。

平野:そうそう。日本館のコミッショナーとして企画を進めていた森川嘉一郎さん(現明治大学准教授)が太陽の塔をつくりたいって言ってきた。

宮脇:あのとき、平野さん、食玩やフィギュアにぜんぜん興味なかったでしょ?

平野:それはもう、まったく(笑)。どうせこども騙しのオマケだろ? おとながこどもの小遣いを巻き上げるんだろ?って思ってました。ろくに見たこともないくせにね。面目ないです。

宮脇:(笑)

平野:なんといっても200円ですからね。そんな値段で売ってるモノに価値なんかあるわけがないと思ってたんですよ。

宮脇:まあ、そうでしょうな。

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平野:でもね、はじめて海洋堂の食玩を見て驚愕しました。精巧さや質感などの技術力もさることながら、それを200円で売ってるってことにね。価格とクオリティのミスマッチ感が尋常じゃない。なんでここまでやるワケ?っていうのが第一印象。「この人たち、頭が少しおかしいんじゃないか?」って思いました(笑)。

宮脇:大阪万博や太陽の塔をつくりたいとずっと夢みていたんだけど、そりゃムリやろ、って半ば諦めてたんですよ。そこへヴェネチア・ヴィエンナーレの話が舞い込んできて。

平野:宮脇さんと話していて、太陽の塔や岡本太郎に愛情をもってくれていることがすぐわかりました。食玩化すべきかどうか、ちょっとだけ迷ったけれど、すぐに「この人とだったら、イチかバチか賭けてみる価値はあるな」って思ったんです。

宮脇:あのときはとにかくうれしくて、普段以上に手間をかけ、情熱をたっぷり注いでつくりました。いいものになったんじゃないかな。サンプルをもって、そこらじゅうに自慢しまくりましたよ(笑)。グリコのオマケとしてつくれたのも嬉しかった。グリコさんにとってもボクらにとっても記念すべき作品になったと自負してます。

平野:最初に原型を見せてもらったときのことをよく覚えています。たかが3センチなのにビシッとリアリティがあったから。なんて言ったらいいか…、そう、威厳があったんですよ。オマケのくせに媚びてない。

宮脇:嬉しいな。あのころタイムスリップグリコは初版で700万〜1000万個ぐらい売れてましたからね。タイムスリップグリコなら、世の中に太陽の塔や岡本作品の素晴らしさ、熱量や狂気を力技で伝えられるかもしれないとは考えてました。

平野:印象的だったのは、原型を見ながらぼくが「さすが日本はフィギュア文化の国だ」って感心したら、宮脇さんが「それはちがう、逆だ」って言ったこと。

宮脇:日本には立体物を楽しむ文化って、ないですからね。

平野:ぼくは、日本人には精緻なミニチュアを愛でる精神が根づいていると思ってたんです。箱庭しかり、盆栽しかり、ひな人形しかり。世界でも指折りの〝フィギュア大好き民族〟だってね。ところが宮脇さんはぜんぜんちがうって言う。

宮脇:「ひな人形」って、いわば期間限定商品でしょう? 飾っている期間も一瞬だけ。しかもひな人形を飾れる家というのは、江戸時代でも明治でも昭和でも、お殿様かお姫様。大阪でも豪商といわれるような大金持ちの家にしかなかった。

平野:一般庶民が楽しんだものではなかった?

宮脇:そうです。極論すれば、日本人の99パーセントはひな人形で遊んでいない。

平野:なるほど。

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宮脇:ひな人形はたしかに精緻なミニチュアではあるけれど、お人形さんの顔って、いわゆる「ドール」の顔なんですよ。日本の伝統的な美意識を反映した、ある種様式化された美です。

平野:あぁ、たしかにそうですね。

宮脇:それにお人形さんは、人間の髪の毛を植えたり、ミニチュアの服を着せるでしょう? でも彫刻はちがいます。たとえばデニムのジャケットだったら、どうやったらデニムの質感を見ただけでわからせることができるか、を考えるわけです。

平野:お人形とフィギュアはちがうってことですね?

宮脇:そうです。フィギュアは着せ替え人形ではなく、彫刻ですからね。

平野:なるほど。

宮脇:それに、そもそも日本には立体物を飾る場所がありません。欄間、ふすま、障子、掛け軸…。日本家屋には部屋に立体物を置けるような場所がないんですよ。せいぜい壺とか…。

平野:一輪挿し程度ですね。

宮脇:そういう地味なものが尊ばれてきました。すごい表現やリアルなものがもつディテール、精緻な造形物がもつ魅力を尊ぶ文化がなかった国なんです。

平野:そういえば、たしかに和のしつらえには立体物がほとんど登場しませんね。畳、座布団、ふすま、掛け軸、屏風…。

宮脇:日本は偉大なる二次元文化の国なんですよ。

平野:ぼくや宮脇さんのこども時代って、プラモデル全盛だったじゃないですか。小学校の頃、いちばんの楽しみはプラモデルだった。

宮脇:あの頃はみんなそうでしたね。

平野:ミニチュア造形物に対する愛情があるから流行ったんじゃないのかなぁ。

宮脇:フィギュアにはね、魂が入ってるんです。

平野:?

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宮脇:たとえば岡本太郎さんの作品が好きな人でも、立体物をもつというのはストレスです。たとえばここにボク自身のフィギュアがありますけど、まさにボクの分身のようなもの。これを名刺代わりに差し上げたとします。もらった人が部屋にもって帰って置くと、ものすごい存在感を放つわけですよ。それって、つまり魂が入っているからなんです。

平野:ああ、わかる。要らないからって、ゴミ箱に投げ入れられないもんなあ。なにかを背負っちゃった感、たしかにありますね。

宮脇:日本には人形が歩き出すなんて怪談もあるくらいですから。立体物をもつことは少なからぬ精神的負担を伴うものなんです。それもあって、三次元をプライベートで楽しむ文化が育たなかったんですね。根付けなんかもそうですけど、あれだけ素晴らしいものでも好事家くらいしか楽しむ人はいなかった。

平野:日本では立体造形を楽しむ風土が醸成されなかったわけですね。

宮脇:たとえば今年はスターウォーズの新作映画が公開されてすごい人気ですけど、アメリカではフィギュアが50万個とか100万個単位で売れます。スターウォーズクラスだと。

平野:すごいな。

宮脇:でも日本では2~3万個売れたら万々歳。

平野:ケタがちがうわけだ。

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宮脇:アメリカでは野球選手でも立体物にして楽しむけど、日本ではないでしょ?

平野:たしかに。日本はカードですもんね。

宮脇:そう、ぜんぶ二次元になってしまうんですよ。アメリカのフィギュア市場は日本の20倍くらい。それこそ酒瓶でも、海外ではニワトリや七面鳥の形とかありますよ。

平野:そういえば、香水の瓶なんかもカッコいいのがあるな。

宮脇:そういう造形の美を競うじゃないですか。でも日本では何もないほうがいい。ディテールを入れたらダメ。引き算の文化の国なので。

平野:なるほど。

宮脇:そう考えていくと、残念ながら日本はフィギュア嫌いと言うほかないんです。



次回は「チョコエッグ」大ヒットのマジックについてお聞きします。
お楽しみに。

宮脇修一対談②

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宮脇修一
1957年、大阪府生まれ。
ガレージキット黎明期から独自のフィギュア造形・製造技術を培い、
1999年に発売されたフルタ製菓「チョコエッグ」のおまけフィギュアが大ヒット。
同社に所属する高い造形力を持つ集団を率い、
様々なフィギュアをリリースし、世界的な評価を受けている。

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