大発掘した岡本太郎第1画文集『アヴァンギャルド』!
今回は「詩とデッサン」から、
「苦腦」をお届けします!
花――太陽
大きな花輪
幼兒が抱かうと
双手をあげた――
空しい!
悲歎にくれ
身悶えて哭く
ひき裂かれた
傷口は――癒やされない
酸鼻!
—
この「苦腦」について、
太郎のこのような文章があります。
「私はパリ生活十年余りにして、
今さらのようにはっきりと、
自分が単なるエトランジェであるにすぎないことを自覚した。
すでに私の孤独感はたえられないものになった。
孤独から脱(のが)れ、
社会人として現実生活の上に己を見出すために、
母国に帰らなければならないことをひたすらに痛感したのである。
だが、日本に帰って来ると、意外な試錬が特っていた。
五年間の軍隊生活である。
連帯性を絶対化する軍隊に於て、
私は全然それらしいものを発見することができなかった。
復員して以来、私は激しく現実生活の上で仕事している。
しかし、果してそれによって孤独感から救われたであろうか。
連帯性を求めて帰国した私は、
社会の現実にふれることによって、
むしろ孤独者の純粋な苦悩が如何に稀な、
尊いものであるかということを覚ったのである。
私は先年「苦悩」と題して、
いとけない幼児が太陽を花と見、
それを求めて絶望するという一篇の詩を書いた。
(略)
いったい、人間が云々する生活とは何だろうか。
おそらく人間自身、それを識ったためしはないのではないか。
まして、生活の信条などという文句はナンセンスである。
そんなものがあったとしたら、
差し当り、猫にでも喰わしてしまえばよかろう。
(『藝術と青春』知恵の森文庫)
いかがでしたか?
次回は「時計」をお届けします。
お楽しみに!!!