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Taku Satoh talk ③ " Design and Ego "

佐藤卓対談③「デザインと自我」

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「ロッテ キシリトールガム」や「明治おいしい牛乳」などの商品デザインでも知られている日本を代表するグラフィックデザイナー 佐藤卓さんとの対談です。

〈前回までは〉
佐藤卓①「デザインとは、なにかとなにかを“つなぐもの」
佐藤卓②「ぼくは主義・スタイルのようなものはいっさい決めていないんです」

今回は佐藤卓さんのアイデアの生み方、生まれ方をお聞きします。

自分の力でやっているっていう認識すらないです。

平野:卓さんは、いわゆる〝アーティスト〟になろうと思ったことはないんですか?

佐藤:若い頃は思いましたよ。でも社会人になり、仕事をするようになってからは変わりました。

平野:というと?

佐藤:ぼくたちの仕事って、依頼にお応えすることであって、「自分のやりたいことをやる場」ではないですよね。クライアントがお金を出しているわけですから。

平野:やりたいことをやるんじゃなくて、やるべきことをやる。それが仕事だと。

佐藤:どんな人でも社会人になれば知ることですけれど。ぼくも若いときには作品をつくったりしてたんですよ。どこかでアーティストにあこがれていましたから。

平野:それでもデザイナーの道を選んだ。

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佐藤:最初は、広告から入ったんですけど、仕事をはじめてみたら、「どうもちがうな」と思いはじめたんです。

平野:?

佐藤:いろいろ格闘しているうちに、「不特定多数の、つながるべき方々をおつなぎする仕事なんだ」っていうことがわかって。その段階で、いわゆる作家活動に対するコンプレックスもすっかりなくなりました。

平野:自分の役割は〝デザイナー〟だと。

佐藤:徹底的にデザインをしていくんだと思うようになりましたね。

平野:卓さんの場合、その「徹底的」って言葉に重みがありますもんね。

佐藤:(笑)

平野:卓さんには、ものごとの本質を見抜く力があると思うんですよ。

佐藤:とんでもないですよ。とてもじゃないけど、そんなところまで行けません。せいぜい依頼主と一緒に探っているという感じがあるくらいです。

平野:さきほども話しましたが、『TARO100祭』のケースでいうと、このプロジェクトがどんな意味をもち、なんのために存在するのか、なにを伝えればそれを感知できるのか、っていうことを、1回の打ち合わせで見抜かれた。なぜそんなことができるんです?

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佐藤:感覚的には、いろんなお話をうかがって、太郎さんの生き方だったり、作品だったりをもう一度、自分の中に入れてみる。それで100歳ということを考えて。それって言い換えれば「祭」なんだって思って。

平野:そうやっていろんな情報を頭の中に詰め込んでみるんですね。

佐藤:多くの人がパッと見たときに太郎さんだってわかったほうがいいよなとか。まあ、だれでも普通に考えることですけど。わかんないよりわかったほうがいいですもんね。

平野:そりゃ、そうです(笑)。

佐藤:で、太郎さんの作品をそのままシンボライズするっていうのもちょっとちがうな、でも太郎さんっていうのも知ってもらいたいな…って、いろんなモヤモヤを自分の中に入れたり出したりしながら、フィードバックさせていくんです。

平野:なるほど。

佐藤:考えていくうちに、もしかしたらいまの若い人たちに欠けているかもしれない太郎さんの精神性みたいな、目に見えない“遺伝子”みたいなものに行き着いて。でもそれに形はないし…、どうしたらいいかなってまた考えていくんです。

TARO100祭_3
平野:そうやってずっと考えつづけるんですか?

佐藤:いろいろ角度を変えていきます。たとえば“100”っていうのも、「100歳なんだから、100っていう数字はないとダメだ。でも漢字だと海外の人にわからないし・・・数字になるんだろうな」って考えたりもして。

平野:角度を変えるのもポイントになりそうですね。

佐藤:で、「100って丸が2つあるな…」とかね。そうすると見えてくるんです。「丸って太く描くと、真ん中にもうひとつ丸が現れるな」みたいなね。「あれ? ちょっと待てよ。これってけっこう細胞みたいだな」と、グジグジグジグジ考えていく。そんなことをやっているうちに、「あれ? マークって1つじゃなきゃいけないんだっけ?」なんて…(笑)。

平野:(笑)

佐藤:2つあれば縦にも横にも並べられるし、いろんな組み合わせができる。それなら映像になっても大丈夫だな、とかね。動かしてもおなじものだと感じられるから、1つより2つのほうがいいかもしれない、なんていうことを、自分の中に条件としていっぱい増やしていくんです。

ロゴ(組み合わせ)
平野:可能性の種みたいなものですか?

佐藤:そうですね。最初はほんとうに小さな点のようなものだけど、その点をできるだけたくさん自分の中に増やしていくんです。そうするといろんな点と点がつながりはじめる。

平野:ああ、わかる。

佐藤:それを待っている感じなんです。

平野:しばらく寝かせて、つながるのを、つまり化学反応が起こるのを待つんですね。

佐藤:そう。だから自分がアイデアをひねり出しているっていう意識はまったくないんです。〝すでにある〟状況をたくさん自分の中に詰め込んでおくと、いつのまにか自然につながる。けっきょく、それだけ。自分の力でやっているっていう認識すらないです。

平野:そこには「自分がやりたいこと」は入らないんですか? さきほどデザインの仕事とは「やりたいことをやる場ではない」と言われていましたけれど。

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佐藤:人には自我があるので、そこが難しいところですよね。「やりたい!」っていうことがどうしても出てきちゃう。

平野:それって、いいことじゃないんですか?

佐藤:デザインって、基本的に「適切につないであげる」ことが仕事なんで、そこに〝自分〟が出てきちゃうと、つなぐべき方法が見えなくなっちゃうんですよ。

平野:デザイナーに自我は要らない?

佐藤:どうしても出てきちゃうものなんですけどね。でもそれが大切なことを覆い隠してしまう可能性があるんです。

平野:でもそれって、よほど強い意志の力がないと負けちゃいますよね? だって快感だから。自分のやりたいことができるっていうのは。

佐藤:悟りを開いているわけじゃないので、どうしたって自我は出てきてしまう。でも、一回眠って、次の日に冷静になって見直してみると、「なんだ、これ?」って。

平野:わかる。

佐藤:そういうときは、自我が強く出ている。客観的になったときに、「これはぼくがやりたいことであって、やるべきことではない」っていうのがわかるんです。

平野:いまでも、そうでしょ?

佐藤:いまでもしょっちゅうありますね。つねにそれに気をつけていることがとても重要だと思っています。



次回は「若い人たちに伝えておきたいこと」をお聞きします。
お楽しみに。

佐藤卓対談④

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佐藤 卓

グラフィックデザイナー

1955年生まれ。
1979年東京藝術大学デザイン科卒業、1981年同大学院修了。
株式会社電通を経て、1984年佐藤卓デザイン事務所設立。
「ロッテ キシリトールガム」や「明治おいしい牛乳」などの商品デザイン、
「金沢21世紀美術館」、「国立科学博物館」、「全国高校野球選手権大会」等のシンボルマークを手掛ける。
また、NHK Eテレ「にほんごであそぼ」アートディレクター、「デザインあ」の総合指導、21_21 DESIGN SIGHTディレクターを務めるなど多岐にわたって活動。

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