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Taku Satoh talk ④ " Design and Ego "

佐藤卓対談④「デザインと自我」

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「ロッテ キシリトールガム」や「明治おいしい牛乳」などの商品デザインでも知られている日本を代表するグラフィックデザイナー 佐藤卓さんとの対談です。

〈前回までは〉
佐藤卓①「デザインとは、なにかとなにかを“つなぐもの」
佐藤卓②「ぼくは主義・スタイルのようなものはいっさい決めていないんです」
佐藤卓③「自分の力でやっているっていう認識すらないです」


今回は佐藤卓さんが「若い人たちに伝えておきたいこと」をお聞きします。

「デザインする」っていうのは、じつはすごく危険な言葉なんです

平野:卓さんのデザインって、一言でいうと〝Simple & Nature〟じゃないかって思うんです。「Simple」は優先順位がはっきりしていて迷いがないっていう意味。余計なものを切り捨てていったとき、最後にのこすべきものを抽出している。「Nature」は本質という意味で使っていて、いちばん大切な部分がどこにあるかをつねに考えている。

佐藤:嬉しいですね。

平野:〝飛び道具〟を使うわけじゃないし(笑)。

佐藤:(笑)

平野:「こうすればぜったい目立つ」とか「これはまだ誰もやってない」みたいなところからアプローチすることはないでしょう?

佐藤:そうですね。

平野:直球勝負ですもんね。奇をてらう誘惑に負けず、つねに正面突破を狙う。誤解を恐れずいえば、「〝あたりまえ〟をきちんとやり抜く」っていうか…。著書の『クジラは潮を吹いていた。』にも、「塩辛は小さい器に入っているから美味しそうなのだ」って書いてあるし(笑)。

佐藤:だって、そうだから(笑)。

『クジラは潮を吹いていた。』 (トランスアート)
『クジラは潮を吹いていた。』 (トランスアート)


平野:言われてみれば〝あたりまえ〟ってわかるけど、でもね、そういうあたりまえにぼくたちは気がつかないし、あたりまえじゃない〝飛び道具〟のほうを「新しい」とか「カッコイイ」とか思ってしまうんですよ。

佐藤:そうかもしれないですね。

平野:あたりまえのことをあたりまえにやりながら、力のあるものをつくるっていうのがいちばん難しいことなんだって、最近つくづく思います。

佐藤:いや、でも、その力って、ぼくじゃなくて相手にあるものなんですよ。

平野:あっ、そうなの?

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佐藤:たとえば『TARO100祭』なら岡本太郎っていう最強のコンテンツがあるわけです。だからこそこのデザインが力をもつ。やるべきことは、眠っている価値をどうやって引き出して、どうやってつなぐか、だけ。価値はすでにそこにある。

平野:生み出すのではなく、引き出す?

佐藤:そう。すでにそこにあるものを見つけられるかどうかが求められていると思います。

平野:いま新しい本を書かれているそうですね。

佐藤:そうなんです。そこに書いていることで、若い人たちに伝えておきたいことがあるんですよ。

平野:ぜひ聞かせてください。

佐藤:「デザインする」っていう言葉があるでしょ?

平野:はい。

佐藤:もともと「デザイン」は動詞です。日本では名詞化もしてるけど。

平野:そうか。「デザイン」自体が動詞なのに、「デザインする」っていうのは、動詞をさらに動詞化しているわけだ。

佐藤:もともと「する」なのに、さらに「する」を加えているから、能動的な意味合いがきわめて強くなるんです。

平野:なるほど。

佐藤:だから発注者も受注者も、つねに「デザイン」しないといけないんじゃないかっていう意識、姿勢になっちゃうんですよ。本来なら「デザインしない」っていう選択肢がなきゃいけないはずなのに。

平野:「デザインしない」という選択が許されない状況にあるために、「こんなもの要らない」ってものが山ほど世の中に出回るわけですね。

佐藤:古きよき日本の景色が荒らされている理由のひとつだと思います。「デザインする」っていうのは、じつはすごく危険な言葉なんですよ。

平野:なるほど。

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佐藤:ぼくは「デザインしない」っていう選択肢をつねにもっていたいし、じっさいそうしています。

平野:シンボルマークなんてつくらなくていいんじゃないですか? とか。

佐藤:必要最低限でいいんじゃないですか? とか。

平野:ただ、「いろいろ考えた結果、デザインしないのが一番です」っていうのは、よほどの覚悟がないと言えませんよね。少なくともいまの日本では、それだと仕事をしたと見なされませんものね。ほんとうは「このままがいい」という結論だって、専門的な知恵とスキルを提供していることに変わりはないのに。

佐藤:それでも忘れてはいけないことだと思うし、ぼくはそうありたい。

平野:デザインするべきとなった場合、たとえば商品パッケージの場合だと、どんなふうに進めていくんですか?

佐藤:ものによって異なりますけど、まずは名前ですね。名前、すなわちそれを可視化した文字がないと人に覚えてもらえないし、次に買おうとしても買えない。

平野:まずは文字のデザインっていうこと?

佐藤:そこは最低限必要です。その商品を表すにはどんな書体で文字をつくると「らしさ」が出るかと考えるわけです。

平野:なるほど。

佐藤:ぼくの場合は一案だけしかつくらないなんてことはないので、考えられるいろんな方向性を見ていただいて、ディスカッションします。ほかのデザイン要素についてもいろんな案をつくって議論しますし、調査にかかることもあります。

平野:市場調査ですね。

佐藤:そういうことを経て、だんだん絞られていくわけです。

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平野:何案かをつくった段階で、どれが売れるかってわかるものなんですか?

佐藤:わからないですね。…あ、でも「わからない」って一言で片づけるのもちょっとちがうな。気配を感じるときと、ほんとうにわからないときがあるんですよ(笑)。

平野:へえ、そういうものなんですね。デザインのプロセスにいわゆるマーケティングの方法論は入っているんですか?

佐藤:「自分マーケティング」をしています。

平野:自分マーケティング?

佐藤:普段、歩き回って、いろんな情報に触れる。それがとても重要です。

平野:部屋に籠もって考えているだけじゃダメなんですね。

佐藤:できるだけ普通の生活を営みたいと思っています。

平野:コンビニにも行くし…。

佐藤:電車にも乗るし…。

平野:つねに〝普通〟でありたいと。

佐藤:友人からは、「オマエ、ぜんぜん普通じゃねえよ!」って言われますけど。

平野:そうでしょう(笑)。



次回は「佐藤卓流マーケティング術」についてお聞きします。
お楽しみに。

佐藤卓対談⑤

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佐藤 卓

グラフィックデザイナー

1955年生まれ。
1979年東京藝術大学デザイン科卒業、1981年同大学院修了。
株式会社電通を経て、1984年佐藤卓デザイン事務所設立。
「ロッテ キシリトールガム」や「明治おいしい牛乳」などの商品デザイン、
「金沢21世紀美術館」、「国立科学博物館」、「全国高校野球選手権大会」等のシンボルマークを手掛ける。
また、NHK Eテレ「にほんごであそぼ」アートディレクター、「デザインあ」の総合指導、21_21 DESIGN SIGHTディレクターを務めるなど多岐にわたって活動。

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