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Taku Satoh talk ⑤ " Design and Ego "

佐藤卓対談⑤「デザインと自我」

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「ロッテ キシリトールガム」や「明治おいしい牛乳」などの商品デザインでも知られている日本を代表するグラフィックデザイナー 佐藤卓さんとの対談です。

〈前回までは〉
佐藤卓①「デザインとは、なにかとなにかを“つなぐもの」
佐藤卓②「ぼくは主義・スタイルのようなものはいっさい決めていないんです」
佐藤卓③「自分の力でやっているっていう認識すらないです」
佐藤卓④「『デザインする』っていうのは、じつはすごく危険な言葉なんです」


今回は「佐藤卓流マーケティング術」についてお聞きします。

そこにかならず個性があるだろうって信じているんです

佐藤:とにかく日常生活を普通に営んでいたいと思っているんです。

平野:それでも触れることができない情報もいっぱいありますよね。

佐藤:それも重要なこと。たとえばメーカーの人は自分の会社をみんなが知っていると思いがちなんですけど、ぼくが適度にテレビを見て、適度にネットもしている中での結論は「よく知らない」。そういう事実がまた重要なんです。

平野:なるほど。

佐藤:そういう人がかなり多いんじゃないかって予測が立つ。

平野:普通に生活しているのにそれほど接点がないっていうことは、なにか理由があるのかもしれないわけだ。

佐藤:そういうことが見えてくるわけです。

平野:やはり必要なのは客観的な視点なんですね。

佐藤:そうです。自分を客観的に分析するのも重要なマーケティングだと思います。

平野:いち生活者としてね。

佐藤:ひとりの人間がどういう状況にあるのかを冷静に分析する。それは意外に普遍的な情報なんだと思う。

平野:それって、ただ自分がやりたいことのために、自分の考えのすべてを肯定するっていうのとはぜんぜんちがいますね。

佐藤:そこが大切なポイントです。

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平野:真に創造的なもの、新しい価値をもたらすものは、お客さんに「なにが欲しいですか?」と訊くような意味でのマーケティングからは生まれないとぼくは思っていて…。

佐藤:はい。

平野:それこそヘンリー・フォードが「もし私が顧客に、彼らの望むものを聞いていたら、彼らはもっと速い馬が欲しいと答えていただろう」って言ってますが、まさにそれが創造の核心だと思うんです。

佐藤:そうですね。

平野:卓さんのデザインクオリティは、とうていマーケティングでなんとかなるレベルじゃないと思っていたけど、やっぱりそうだった。

佐藤:「自分マーケティング」はやってますけど(笑)。

平野:それって要するに、「自我」ではなくて、「経験」を信じるってことですよね?

佐藤:そうですね。けっきょく世の中の見方、世の中をどう分析するかっていうのは、イヤでも「自分」ですからね。いくら客観的っていっても自分は「個」なので。

平野:そうですよね。

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佐藤:完全なる客観的視座なんてあり得ないし、仮にあったとしても、それには意味がない。

平野:見ている自分は「自我」ですからね。

佐藤:そこにかならず個性があるだろうって信じているんです。だからこそ、そこには頼らない。そんなことはまったく考える必要がないというスタンスです。

平野:「自分」なんて意識しなくても、考えているのがほかでもない自分ですものね。

佐藤:否が応でも自分のフィルターを通るわけですから。

平野:考えなくたって、自ずと〝佐藤卓〟は出ちゃうってことでしょ?

佐藤:そう。そうやって〝出ちゃう〟ものこそ個性なんじゃないかって思うんですよ。

平野:わかる。

佐藤:太郎さんだって、〝出ちゃった〟わけでしょ?(笑)

平野:まさにそう。「自分の個性とはなにか」なんて一回も考えたことないんじゃないかな。

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佐藤:ぼくの場合も、「自分のスタイル」なんてことを考えていたら、きっとこんなに長くつづかなかったと思いますね。

平野:人の目を気にして、それに応えようとしていたら、っていうことですね。

佐藤:「個性」は出すものではなくて、〝出ちゃう〟ものだから、「自分」なんてものは考えなくていい、無視していいんです。

平野:でもそれは、けっして「個性」を否定しているわけじゃない。

佐藤:そうなんです。でも、こういうことを言うと、たいてい誤解されるんですよね。

平野:「佐藤卓、個性を全否定!」(笑)。

佐藤:そうじゃないんだけどなあ(笑)。個性はだれにでもある。だから心配する必要はない! って言ってるだけなのに。

平野:もう亡くなりましたが、慶応に高橋潤二郎先生という方がいて、とても尊敬していたし、可愛がってもらったんです。ぼくは万博など海外に日本文化を紹介する仕事をしているので、ある日、先生に訊いたんですよ。「どうすれば日本の特性を表現できるのでしょうか?」みたいなことをね。そうしたら、即座に「そんなことは考える必要なし」って言うんです。日本で育った日本人の君がつくるんだから、イヤでも日本が出る。見ればすぐわかるよって。要するに〝出ちゃう〟んだと。

佐藤:ほんとにそういうことですよね。

平野:とくに若い人は「個性」について悩みますからね。

佐藤:教育がそういう方向なので、ぼくも悩まされたというか…。「もっと卓ちゃんらしいものをつくるべきだ」なんて言われて。

平野:「オレらしさ」ってなんだろう?ってね。

佐藤:そこで悩ませるわけですけど、そんなことで悩まなくていい。だって個性はみんなあるんだから。

平野:うん、そうだ。

佐藤:それを「らしさ」なんて言葉で悩まされて、自我がヘンに働くと、本来、自然と出るはずの個性まで覆い隠してしまう。

平野:ほんとにそうですね。

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佐藤:やるべきことを徹底的にやっていれば、自ずと個性は出るはずなのに、若い人は無理矢理出そうとがんばっちゃう。

平野:そうですよね。

佐藤:けっこう由々しきことだと思いますね。



次回は最終回です。
「仕事に向きあうときの姿勢」についてお聞きします。
お楽しみに。

佐藤卓対談⑥

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佐藤 卓

グラフィックデザイナー

1955年生まれ。
1979年東京藝術大学デザイン科卒業、1981年同大学院修了。
株式会社電通を経て、1984年佐藤卓デザイン事務所設立。
「ロッテ キシリトールガム」や「明治おいしい牛乳」などの商品デザイン、
「金沢21世紀美術館」、「国立科学博物館」、「全国高校野球選手権大会」等のシンボルマークを手掛ける。
また、NHK Eテレ「にほんごであそぼ」アートディレクター、「デザインあ」の総合指導、21_21 DESIGN SIGHTディレクターを務めるなど多岐にわたって活動。

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