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Kaichiro Morikawa talk ⑦ "OTAKU culture lecture"

森川嘉一郎対談⑦「オタク文化講座」

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明治大学において「東京国際マンガミュージアム」(仮称)の開設準備、および米沢嘉博記念図書館の運営に関わる森川嘉一郎さんとの対談です!

最終回となる今回は日本で漫画が愛される理由についてお伺いします。

〈前回までは〉
森川嘉一郎①「『おたく:人格=空間=都市』という画期的なもの。」
森川嘉一郎②「黒幕の意図が介在しているのかいないのかを確認したわけです。」
森川嘉一郎③「科学技術信仰は、大阪万博を象徴的なピークにしてガラガラと崩れていった。」
森川嘉一郎④「おたく文化の基盤の一つとなっている概念が、学校の中で培われているわけです。」
森川嘉一郎⑤「強引に想像してみると、アウトサイダー的な匂いを感じとっているのかもしれないですね。」
森川嘉一郎対談⑥「文化的なメインストリームから外れたところに広がっている感じです。」


大人が漫画を読んでいても後ろ指をさされないということも、大きいと思いますよ。

平野:漫画が日本人に爆発的に愛されるようになったのは、いつくらいからなんでしょうね。

森川:戦後のベビーブームを軸にとらえるといいかもしれませね。こどもの人口が爆発的に増え、そのこどもたちが小学校高学年、つまり漫画を読みたい盛りで、かつ自分の小遣いで買える年頃になった1959年に、少年サンデーと少年マガジンが同時に創刊されました。日本初の週刊少年漫画誌です。

平野:それまでは毎週漫画を提供するような媒体はなかったっていうこと?

森川:そうです。週刊誌はありましたけど、こども向けに漫画を提供するものはなかった。

平野:ベビーブーム世代のこどもたちって、いわゆる団塊の世代ですよね。

森川:そうです。そしてそれまでは、漫画っていうと中学生になる頃には卒業するものでした。

平野:なるほど。

森川:でも、後に「団塊の世代」と呼ばれる人たちから、中学生や高校生、さらには大学生になっても漫画を読みつづける人が多くなったんです。それこそ社会的に注目されるほどに。

平野:「大学生になってもまだ漫画を読んでいるとは嘆かわしい」みたいな投書が新聞に載ったりしてね。でも、なんで団塊の世代は漫画を卒業しなかったんだろう?

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森川:自分たちの世代に向けて作られた新しいメディアとして、週刊少年漫画誌を手に取ったわけです。漫画というものに、世代体験を構成するものとしての愛着を持ったんでしょうね。加えて、彼らの成長とともに、やや青年向けの漫画がそうした少年漫画誌に掲載されるようになったことも大きいと思います。「あしたのジョー」とか「巨人の星」とかですね。

平野:ああ。

森川:さらには「ビッグコミック」など、青年向けの漫画誌も多く創刊されるようになりました。そうしてだんだん、日本では背広姿のサラリーマンが電車で漫画を読んでいても、誰も驚かないという状況になりました。

平野:外国人観光客は驚いてるのかもね。

森川:日本独特の情景ですね。電話帳のようなその厚さにも、驚く人がいるようです。

平野:それにしても世代を超えて共感されるっていうのはすごいこと。そのくらい日本人は漫画が好きなんだな。

森川:小さい頃から読んでいて漫画が好きってことももちろんあるでしょうけど、大人が漫画を読んでいても後ろ指をさされないということも、大きいと思いますよ。

平野:そうか。どんなにおもしろくても世間から後ろ指をさされたら読めないもんね。そこが漫画やアニメの普及における日本と外国の大きなちがいなのかもしれませんね。

森川:そうですね。

平野:とはいえ、いくらそういう環境にあったとしても、漫画そのものに魅力がなければとうせん売れないわけですよね。

森川:そう思います。

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平野:改めて聞きたいんだけど、日本の漫画やアニメの魅力と強みを一言で説明してくれっていわれたら、なんて答えます?

森川:いろいろな要素がありますが、仮に一点に絞って説明するなら、作品の内容や表現の多様性ですね。ディズニーが非ディズニー的なものの排除によって普遍性を指向したのに対して、日本の漫画はむしろ逆の方向に発達しました。

平野:なるほど。

森川:古典的なディズニー作品は、男の子向けでもなく、女の子向けでもなく、前提としてファミリー向けであり、さらには世界中の老若男女に受け入れられることが指向されています。だから、受け入れられにくい要素が排除されるわけです。それに対して、日本の漫画はそのほとんどが雑誌連載によってつくられます。そうした漫画雑誌は、少年向け、少女向け、青年向け、大人の女性向け、おたく向けという風に、細分化された読者層に特化されたつくりになっているわけです。

平野:はじめから土俵自体がセグメントされているわけだ。

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森川:そうです。ありとあらゆる人に受け入れられようというのとは逆で、親が顔をしかめるかどうかなど気にせず、特定の年代の少年なり少女なりがもっとも面白いと思うもの、あるいはこどもに読まれることを想定せずに、大人の女性が読めば深く突き刺さるもの、などに特化する方向で発達してきたわけです。

平野:ディズニーと競り合うんじゃなくて、ディズニーとはちがうアプローチをしたから世界的に浸透したと。

森川:加えて同人誌市場の発達が、さらに趣味的に細分化された作品の成立を促進してきました。おたく向けの漫画やアニメの重要な土壌ですね。

平野:いろいろな幸運な出会いが積み重なったってことですね。裾野が広がるような動きがあり、大人になって漫画を読んでいても後ろ指をささないメンタリティがあり、手塚治虫が切り開いた哲学があって…。

森川: そうですね。

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平野:ぼくはもっと単純な話かと思ってたんですよ。

森川:といいますと?

平野:日本人にはもともと平面的・漫画的なものを愛でる血が流れている。だから「鳥獣戯画」みたいなものが現れた。その伝統と感性が日本の漫画文化を育んだ。すべては「鳥獣戯画」のおかげである…、みたいなね(笑)。

森川:この分野はまだまだ研究が途上なので、今後も新たな発見や視点がいろいろ出てくると思います。

平野:いや、今日はほんとうにおもしろかった。ありがとうございました。

森川:こちらこそありがとうございました。

平野:最後にひとつ聞きたいんだけど…。

森川:なんでしょう?

平野:森川さんって…、オタク?

森川:まぁ、そうですね(と、オタクの定番アイテムウエストポーチをつける)。

平野:やっぱり!(笑)

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森川嘉一郎 (もりかわ かいちろう)
明治大学国際日本学部准教授
1971年生まれ。早稲田大学大学院修了(建築学)。
2004年ベネチア・ビエンナーレ第9回国際建築展日本館コミッショナーとして「おたく:人格=空間=都市」展を製作(日本SF大会星雲賞受賞)。
桑沢デザイン研究所特別任用教授などを経て、2008年より現職。
明治大学において「東京国際マンガミュージアム」(仮称)の開設準備、および米沢嘉博記念図書館の運営に関わる。
著書に『趣都の誕生 萌える都市アキハバラ』(幻冬舎、2003年)など。

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