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Toshiko's Essay⑲ The Oirase "blowing snow open-air bath which dances"

敏子のエッセイ⑲奥入瀬「風花舞う露天ぶろ」

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お正月の東京は寂しい。
独り者は身をもてあます時だ。

どうしても何処かへ逃げ出したくなる。
何処にしようか。

寒い土地には冬行った方がいい、
というのが岡本太郎の持論だった。
ある時は、地吹雪の津軽を抜けて、
寒風吹きすさぶ十三湊に。
また山形の羽黒山へ大晦日の神事「松例祭」を拝見に。
或いは浪の華の舞い散る能登半島を海ぞいにぐるっと廻ったり。
冬の旅の想い出は数々ある。
まだまだ彼が心惹かれながら、果たせなかったところも多いが。

スキーにも行きたい。
でも年末年始はリフトも混むし、
この時だけしか休みがとれないお勤めの人たちの邪魔をするのも悪いから、
七草までは遠慮することにしている。

で、今年は青森の雪の中で年越しをすることにした。
奥入瀬渓流。
ここは紅葉の名所として有名だが、新緑も美しいし、冬がまたいい。

かつては、冬の間は八甲田から谷地温泉までの間、道がとざされてしまい、
谷地も深い雪に埋もれて、人気がなかったものだが、
今は通年、車も通るし、さすが青森県が観光立県宣言しただけあって除雪も万全だ。
「奥入瀬渓流グランドホテル」という本格的な施設も出来ている。

このホテルには岡本太郎の遺作となった10メートルの巨大彫刻暖炉「河神」もあるし、
もう一つのラウンジには暖炉「森の神話」もある。
幻想的で無邪気なレリーフに囲まれてとろとろと優しい炎が嬉しい。
私には懐かしく、心休まる宿だ。

さすが、年末から三が日は満室で、賑やかだった。
この時期は家族連れが多い。
知らぬ者同士も何かうちとけて、ほほ笑みかわすような雰囲気に心が和む。

 

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奥入瀬温泉のホテル群の間を、「湯めぐりシャトルバス」が走っている。
真っ黄色の車体に、暖炉・森の神話のモチーフを、
赤緑ブルーなどの明るい原色で展開して、
誰でも乗りたくなるような楽しいバス。

私も早速、乗せて貰って、「湯地の宿・おいらせ」に去年出来た外湯に入りに行く。
九重の滝という壮麗な滝の直下、混浴のひろびろとした露天風呂だ。
滝の眺めも雄大だし、ゆったりと大きな湯は身も心も伸ばしてくれる。
これはいい。

薄日がさしていたと思うと、ひらひらと細かい雪が降りかかってくる。
あたたまった顔に、快い。

「やっぱり山ですね。いま日がさしていたのに、雪が降って」。
隣に、顎までつかっている小父さんに話しかけると、
「この辺では、こんなのは雪が降るとは言わないですよ。風花が舞う」
「へえー、舞っているのね。その方が美しいわ」と言っている間に、
もう雪はやんで、明るい日ざしが降ってくる。
滝はきらめく。

次の日、奥入瀬渓流ぞいの道を子の口まで登る。
木の葉がすっかり散り落ちて、梢ばかりの木立の向こうに、
夏は見えない細かい滝が孤独に飛沫をあげている。
一句。

凍る滝 紅山桜 夢みけり

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