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Shinji Higuchi ③ " special effects paradigm shift! "

樋口真嗣③「特撮パラダイムシフト!」

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約12年ぶりに復活したゴジラシリーズ『シン・ゴジラ』で監督・特技監督(兼任)の樋口真嗣氏との対談です!
※この対談は『シン・ゴジラ』公開前の2016年2月29日(月)に収録したものです。

〈前回までは〉
樋口真嗣①「ほんとうに暮らしていた場所って、やっぱり孕んでいる気配がちがいますね。」
樋口真嗣②「でもね、「なんでオレ、監督になっちゃったんだろう?」って、いまだによくわらかないんです。」


三回目は映画界その人を惹きつける魅力についてお聞きします!

自分が何気なく言った一言が、180度ズレていたことがあって。

平野:ぼくの周りにも、映画の世界で生きている人がいるんですけど…。

樋口:はい。

平野:見ていると、やっぱりたいへんそうなんですよ。仕事は不規則できつそうだし、次の仕事がいつ来るかわからないから生活は安定しないし。だけど映画から離れようなんてこれっぽっちも考えていない。

樋口:そういう人、多いです。ていうか、ほぼみんなそうです。

平野:それはなぜなんだろう、って思うんですよ。好きだからっていうのがあるにしても、そんなに辛い場所からなぜ逃げ出そうとしないのか。きっと映画の世界には、人を抜けられなくさせる、なにか麻薬みたいな〝特別な成分〟があるんじゃないかって睨んでるんです(笑)。

樋口:そうかもしれない(笑)。

平野:それほど人を惹きつける魅力って、何なんでしょうね。

樋口:うーん、そうだなあ。ただね、「ダメだ。もうイヤだ」って思うこともしょっちゅうあるんですよ。

平野:でもそれを超える魅力があるってことでしょ?

樋口:っていうか、現場に行くと背中を押されるんですよ。周りにいる全員に。

平野:監督だから?

樋口:そうです。背中を押されて一歩前に踏み出すしかない磁場みたいなものができていて。自分が現場に入ると、みんながその磁場をぼくに当ててくるんです。けっきょくみんなのおかげなんですよ。

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平野:彼らにとって監督は司令官であり、自分たちの〝旗〟ですもんね。

樋口:神輿ですね。

平野:ああ、神輿…。そういう文化があって、神輿がビシッと立ってくれないと自分も立てないっていうことなんでしょうね。

樋口:そう。それってすごく形式的なことなのかもしれないけど、それがないとたぶん自分はやれてないんですよ。

平野:なるほど。

樋口:ただ逆のときもあります。たとえば最初の頃にやるブロッキングっていうのがあるんですけどね、その空間で俳優をどこに配置するか。どう誘導させるか。自然にしながらも、画として成り立つような映画としての空間を同時に作り出さなきゃいけない。「どういうふうにやりますか?」って聞かれて、「じゃあ、ここに座っていただいて…」って。「それで台本のこの台詞からいきます」みたいな。映画ってたいてい会話の途中からはじまるじゃないですか。

平野:そうですね。

樋口:「こうこう、こうなってこうなって、だからこの辺にいますね」って、「みなさんよござんすね? じゃあ、とりあえずテスト行きましょう」と。それまでみんなが台詞を憶えたりしながら、役についていろいろ考えているイメージとすり合わせるわけです。

平野:なるほど。

樋口:そういう局面で、自分が何気なく言った一言が、180度ズレていたことがあって。

平野:ズレてた? 周りの人たちと?

樋口:そう。オレだけ完全にズレてたんですよ(笑)。自分はなったことないけど、胆石って最近、切らずに超音波で破壊するじゃないですか?

平野:ああ、爆発させるってやつね。

樋口:オレ、それを思い出した。そのときスタッフ・キャスト合わせて60人くらいいたんだけど、自分がポロッと言った瞬間に「なんで?」って全員思った。その「なんで?」が一斉にボクに照射されたんです。まさに爆発させられる胆石の気分だった。

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平野:(笑) でも映画の世界では、監督が言ったことが絶対なんでしょう?

樋口:それを超えるくらいの「なんで?」だったんですよ。

平野:(爆笑)

樋口:その日一日の撮影プランを、スタートラインからぜんぶ鉄壁の計算でつくっていたのに、その「なんで?」で一気にぜんぶひっくり返されて。

平野:(笑)。

樋口:「ごめん。30分時間をください。みなさんお茶でも飲んでて」なんて言って…。

平野:でも逆に言ったら、監督の存在ってそれほど大きいってことですよね。

樋口:大きいですね。もちろん「こういう映画なんだから、君はこういうふうにやらなければダメなんだよ」とか、「そうじゃないんだよ。こうやったほうがいいに決まってるだろ」って言うこともできなくはないんです。ただその場合にはやはり根回しをしないと…。

平野:根回し?(笑)

樋口:日本的ですけど。

平野:《ローレライ》のメイキングを見たときにね、「本読み」のときだったかな? 名優やスタッフたちを前に、樋口さんが開口一番「オレはこれをやりたいんだ!」ってビシッと言うシーンが映ってるじゃないですか。

樋口:そうでしたっけ? すいません。

平野:さすがだなって思いました。多くの人間を集めてプロジェクトをはじめるときに最初にやるべきことは、理念と価値観を示すことだとぼくは考えているんだけど、
「あ、やっぱり映画の世界も同じなんだ」って。

樋口:そうですね。

平野:樋口さん、わかりやすくて、スッと入ってくる、すごくいい話をしているんですよ。

樋口:まだ理想に燃えていた頃ですね。

平野:(爆笑)

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樋口:ほんとにそんなこと言ってました? そんな時期あったんですね…。

平野:(笑) 樋口さんがずっと監督をやってらっしゃるのはやっぱり楽しいからでしょうし、スタッフとして映画界にいる人たちもそれぞれに〝特別な誇り〟を持ってますよね。

樋口:たしかに昔はそういう面がありました。撮影所にいる人が「オレは誰々とやってる!」って自慢したりね。でもじつをいうと、ボクはそれが嫌いだった。

平野:というと?

樋口:それが邪魔だって考えていたんです。我々は「なに」をつくるかが大事であって、つくり方はどうでもいいと思っていたから。

平野:ああ、なるほど。

樋口:けっきょくそうじゃないんですけどね。つくり方があって、はじめてなにができるかっていうのがあるわけで。

平野:その頃は「そういう昔ながらのつくり方をしているから進歩がないんだ」と思っていたわけですね?

樋口:そうです。まずそれを壊そうみたいなところから入って。「うるせえ!ジジイ!」なんて言葉には出しませんでしたけど、心の中では渦巻いていたわけです(笑)。

平野:よくわかります。

樋口:「そうですね」なんて相づちを打ちながら、心の中では「こんなことやってるから止まっちゃったんだよ!」なんて思ってた。どうしたらいいか、自分ならどうするか、をいつも考えてました。けっきょく自分たちが壊していくしかないと考えて、壊し続けたんだけど、その結果、一周して元に戻ってたんです。

平野:戻ってた?

樋口:戻ってたっていうか、螺旋のような感じかな。「いつまでも同じところにいやがって!」と思っていた先輩たちが、じつは螺旋のひとつ先にいたっていうことに気がつくわけです。

平野:なるほど。

樋口:それでいつのまにか自分たちも同じところにいて。「あ、これ先輩たちがいた場所じゃないか!」って知るんです。20年もやってると。


次回は映画監督の仕事と速度についてお聞きします!

樋口真嗣④

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樋口真嗣
1965年東京都出身。
1984年「ゴジラ」で怪獣造形に携わることで映画界入り。
1995年には特技監督を務めた「ガメラ 大怪獣空中決戦」で日本アカデミー賞特別賞特殊技術賞を受賞。
監督作品に『ローレライ』、『日本沈没』、『のぼうの城』、実写版『進撃の巨人』など。
2016年公開の『シン・ゴジラ』では監督と特技監督を務める。

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