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Shinji Higuchi ④ " special effects paradigm shift! "

樋口真嗣④「特撮パラダイムシフト!」

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約12年ぶりに復活したゴジラシリーズ『シン・ゴジラ』で監督・特技監督(兼任)の樋口真嗣氏との対談です!
※この対談は『シン・ゴジラ』公開前の2016年2月29日(月)に収録したものです。

〈前回までは〉
樋口真嗣①「ほんとうに暮らしていた場所って、やっぱり孕んでいる気配がちがいますね。」
樋口真嗣②「でもね、「なんでオレ、監督になっちゃったんだろう?」って、いまだによくわらかないんです。」
樋口真嗣③「自分が何気なく言った一言が、180度ズレていたことがあって。」


今回は映画監督の“仕事と速度”についてお聞きします!

エッジの立ってる人ってほんとうに早いんですよね。

樋口:けっきょく映画の製作現場のほとんどって「やり方論」なんですよ。「どのやり方がいちばんいいか?」。「なにをつくるか?」ももちろんあるけど、「どうやってつくるか?」もじつは監督の仕事で。

平野:Whatだけに目が行きがちだけど、Howが問題なんだってことですね。

樋口:いかに早くつくるかっていうこともある。たぶん太郎さんはものすごく早いんじゃないかな。

平野:メチャクチャ早いです。

樋口:ぼくの知っている小説家だったり漫画家だったり、エッジの立ってる人ってほんとうに早いんですよね。

平野:音楽もそう。力のある人って、あっという間に一曲つくっちゃいますからね。

樋口:ですよね。ほんとうに早い。だからボクは、「いいものをつくる」のはあたりまえ、その先の「どう早くつくるか」を考えようと思っていて。まだ答えは出ていないし、ボクはつくるのが遅いほうなんで、ぜんぜんダメなんですけどね。

平野:うん。

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樋口:早さってすごく大事だと思うんです。「どうすれば早くつくれるか」=「どうすれば迷わずにやれるか、回り道をしないで的確な答えにたどり着けるか」っていうことじゃないですか。

平野:映画に限らずね。

樋口:いろんなことすべてがそうですよね。そうすることによって、逆に「迷う時間」もつくれる。

平野:ああ、なるほど。

樋口:迷ったり、新しいものを掘ったりとか。先輩たちを含めてそのあたりはすごかったんだなっていまにして思うんです。

平野:プロジェクトを率いるときに、もちろん「なにをつくるか?」や「どうつくるか?」は大事だけど、もうひとつ「誰とつくるか?」がすごく大きいと思うんですよ。

樋口:ありますね。

平野:一緒に戦う、ともに戦場に出ていくわけですからね。名刺交換して「はじめまして」で信頼関係ができるわけじゃない。やっぱり一緒に戦った経験や成功体験を分かち合った人と一緒にやりたい。

樋口:わかります。

平野:でも、いつもそういう人たちばっかり集めていると、マンネリという罠が待っている。

樋口:硬直化していくんですよね。

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平野:映画界では「黒澤組」みたいなチームができるじゃないですか。でも、なにも考えずにそれを続けていると、やっぱり硬直化しますよね。そのあたり、樋口さんはどうされているんですか?

樋口:ボクはそれを意識的に壊すようにしています。

平野:あぁ、やっぱりそうなんだ。

樋口:たとえば「今回は時代劇だからこのカメラマンとやろう」とか、それは絵筆のようなもので。変な話ですけど、油彩でやるか版画でやるか、みたいな。映画にも絵筆ってあるような気がするんですよ。

平野:絵筆か…。

樋口:そういうときの絵筆って、自分の中ではカメラマンだったりしますね。引き出しがちがうんです。

平野:なるほど。

樋口:自分にとっていちばん重要な部分がそこなので。だからなるべく「組」っていうふうには固めないでやろうと。むしろ固めるのは「演出部」「制作部」など実務を支える連中です。

平野:カメラマンって、キーマンなんですね。

樋口:「撮影」「照明」「美術」「録音」などの技術パートは専門職です。専門的な知識を持っているがゆえに、それをどう扱うかについての美学を持っている。「あの人はこういう歌を歌える」みたいなね。「カメラを通して歌を歌える人だから、この人がいい」とか。それは台本を読んだときのイメージで考えます。もちろんずっとおなじカメラマンを使う監督もいます。そのカメラマンが持っているいろんな引き出しをひっぱり出すっていうタイプです。でもボクはなるべく混ぜるようにしていますね。空気を入れ替えます。

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平野:なるほど、よくわかります。基本的にはぼくもおなじだから。ただ「はじめまして」の人ばっかりになるとリスクが大きすぎるので、一定割合で「読める人」、つまり共同体験がある人を選びます。直感的にいって、初顔合わせのメンバーの上限は三分の一くらいかなと思っていて。三分の一までなら、仮にその全員が機能しなくてもなんとかゴールできる。そう考えています。

樋口:それで言うと、さっき言った「演出部」って言うのが助監督って呼ばれるポジションで…。

平野:助監督ってなにを?

樋口:かっちり決まっているわけではないんだけど、たとえば太郎さんの話をつくりましょうってなったときに、最初にやらなければならないのは調べものです。

平野:どんなことを?

樋口:たとえば平野さんのところに「取材させてください」って連絡をして、写真を撮影させてもらったりする。台本の中に「何年の何月に何があった」って書いてあると、「この日は具体的に太郎さんはなにをしていましたか?」とか「どんな服を着ていましたか?」とか調べるわけです。

平野:この部屋を再現するってこともあるでしょうしね。

樋口:そうです。配置などすべてに意味があるじゃないですか。その意味を調べて、「美術部」や各スタッフと共有するための情報を整理するんです。もしかして愛用のライターがあったりしたら、どういうものでしたか? とか。

平野:なるほど。助監督ってそういうことをやってるんだ。

樋口:オレにはとてもできないですよ。オレが言えるのは、「本物とおなじにしてね!」っていうことだけで(笑)。

平野:実在する人の話だったら、とうぜんそう言いたくなりますよね。

樋口:そういう形で、その映画に必要なものをぜんぶ用意するうえで、司令塔になるのが「演出部」。

平野:何人くらいの陣容なんですか?

樋口:4~5人です。いちばん上の人間が役者と交渉してスケジュールをつくって、その次が現場を仕切るんですけど、仕切る上で「衣装」「小道具」「メイク」「美術」「持ち道具」をそれぞれの担当者を撮影前に集めて、衣小合わせに臨むわけです。
(註:衣装・小道具合わせを略して衣小合わせといいます。衣裳合わせではないのです。)

平野:衣小合わせって、じっさいに役者を呼んでくるやつですよね?

樋口:そうです。自分と役者の最初のセッションです。すべてを「演出部」が用意ししてくれます。

平野:その「演出部」をいつも同じメンバーにしていると。

樋口:そうです。映画製作のチームが新しい組み合わせになっても、自分の考えていることがスムーズに伝達できるようにね。


次回は映画づくりの基本構造についてお聞きします!

樋口真嗣⑤

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樋口真嗣
1965年東京都出身。
1984年「ゴジラ」で怪獣造形に携わることで映画界入り。
1995年には特技監督を務めた「ガメラ 大怪獣空中決戦」で日本アカデミー賞特別賞特殊技術賞を受賞。
監督作品に『ローレライ』、『日本沈没』、『のぼうの城』、実写版『進撃の巨人』など。
2016年公開の『シン・ゴジラ』では監督と特技監督を務める。

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