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Shinji Higuchi ⑤ " special effects paradigm shift! "

樋口真嗣⑤「特撮パラダイムシフト!」

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約12年ぶりに復活したゴジラシリーズ『シン・ゴジラ』で監督・特技監督(兼任)の樋口真嗣氏との対談です!
※この対談は『シン・ゴジラ』公開前の2016年2月29日(月)に収録したものです。

〈前回までは〉
樋口真嗣①「ほんとうに暮らしていた場所って、やっぱり孕んでいる気配がちがいますね。」
樋口真嗣②「でもね、「なんでオレ、監督になっちゃったんだろう?」って、いまだによくわらかないんです。」
樋口真嗣③「自分が何気なく言った一言が、180度ズレていたことがあって。」
樋口真嗣④「エッジの立ってる人ってほんとうに早いんですよね。」


今回は映画づくりの基本構造についてお聞きします!

言っちゃえば「政治」になっていくわけです。

平野:「演出部」の人たちは、その映画の思想とか価値観とか、そういう部分までは踏み込まないんですか?

樋口:いや。最初に台本を読んで、なんでこの役はこうなんだ? っていう話をさんざんしますから。

平野:全方面にわたって監督をサポートするんだ。

樋口:そうです。で、それぞれの〝工場〟に発注するわけです。

平野:「美術」「撮影」「録音」などですね。

樋口:それとは別にもうひとつ「制作部」と言われる部署があります。たとえばロケ場所なんかが「制作部」の仕事です。

平野:ロケの許可をもらったり?

樋口:たとえば、記念館のこの部屋で撮るのがいちばんいいけど、許可が取れなくて他の場所で撮影しなければならないとなったときに、この部屋そっくりの物件を探すんです。

平野:わー、すごいな。そんなところからはじまるんですね。

樋口:家もそうだし、景色でもそう。最初にこの感じがいいなっていうのを探してもらって、そういうのをぜんぶ調べます。そういったイメージ的に合致するのとは別の側面でじっさいに撮影するときにはスタッフとキャスト合わせて100人を超えることもあるので、クルマをどこに駐車するとか…。

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平野:それこそ弁当の手配なんかも大事ですよね。

樋口:そうそう。夢と現実の両方をいつも見据えてないといけない。ものすごく大事な問題です。

平野:いまお聞きしている映画づくりの基本構造みたいなものは、昔からのものでしょう?

樋口:そうですね。

平野:そういう仕組みがいまの時代には非合理的だからぶっ壊してやりたいとか、そういうことはないんですか?

樋口:それがオレの中で矛盾しているところなんですよ。そういう不便な乗り物を、10年かけてやっと乗りこなせるようになったかな?と思えるようになったとこなんです。(笑)。

平野:おお(笑)。

樋口:いわゆる〝純粋な映画人〟でもないし。「特撮」という本流から外れたところでずっとやってきましたから。

平野:うん。

樋口:怪獣や壊れるビルを撮るほうだったから。そういうものだと役者さんはいないし、ロケに出るってこともそうそうないわけです。

平野:ああ、そうか。

樋口:ロケ地を探したり、気難しい俳優さんと早めに会って撮影がスムーズに進むように話をしたりっていうことが必要なかったんです、特撮だから。

平野:その種の面倒と向き合わずに済んでいたわけですね。

樋口:そう。純粋に絵の中身のことだけを考えていればよかった。

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平野:監督になって、それが変わっていくわけですね。

樋口:言っちゃえば「政治」になっていくわけです。それこそ純粋に「いい映画をつくろう!」で済んでいたのに、そうじゃなくなった。映画全体の監督になってしまったからです。みんないろんな言い分があるわけで、はらわたが煮えくりかえるような思いをしたとしても、なんとかクリアしていかなければならない。

平野:「お互いが折り合える地点を見つけましょう」ってことね。

樋口:折り合いをつけるのがこの10年だった。じっさい折り合いのつけ方がすごくうまくなったんですよ。でもね、一方で、もしかしたら自分のつくりたいものから猛烈に離れていってるかもしれないっていう思いもこみ上げてくるわけでして。

平野:よくわかる。

樋口:そうなったとき、「ほんとうにこれでいいのかな?」って思うこともあります。

平野:丸くなりすぎてるんじゃないか、っていう恐怖感みたいなものでしょ?

樋口:そう。

平野:あれ? でもね、なんとか乗りこなせるようになった。じゃ、今度はそれを壊してやる、って思ってたんでしたよね?(笑)

樋口:そうですよ(笑)。でもね、じゃあじっさいどう壊そうか? って考えはじめたときに、「せっかく乗りこなせるようになったんだから、なんとか壊さずに済む方法ってないかな?」っていうダメな気持ちが芽生えてくるわけですよ、自分の中に。

平野:(爆笑)

樋口:なんていうか、イノベーターとしてあるまじき…(笑)。

平野:(大爆笑)


次回は樋口監督の思うカッコ良さについて!

樋口真嗣⑥

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樋口真嗣
1965年東京都出身。
1984年「ゴジラ」で怪獣造形に携わることで映画界入り。
1995年には特技監督を務めた「ガメラ 大怪獣空中決戦」で日本アカデミー賞特別賞特殊技術賞を受賞。
監督作品に『ローレライ』、『日本沈没』、『のぼうの城』、実写版『進撃の巨人』など。
2016年公開の『シン・ゴジラ』では監督と特技監督を務める。

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