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Shinji Higuchi ⑦ " special effects paradigm shift! "

樋口真嗣⑦「特撮パラダイムシフト!」

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約12年ぶりに復活したゴジラシリーズ『シン・ゴジラ』で監督・特技監督(兼任)の樋口真嗣氏との対談です!
※この対談は『シン・ゴジラ』公開前の2016年2月29日(月)に収録したものです。

〈前回までは〉
樋口真嗣①「ほんとうに暮らしていた場所って、やっぱり孕んでいる気配がちがいますね。」
樋口真嗣②「でもね、「なんでオレ、監督になっちゃったんだろう?」って、いまだによくわらかないんです。」
樋口真嗣③「自分が何気なく言った一言が、180度ズレていたことがあって。」
樋口真嗣④「エッジの立ってる人ってほんとうに早いんですよね。」
樋口真嗣⑤「言っちゃえば「政治」になっていくわけです。
樋口真嗣⑥だって「亀」ですからね。

今回は映画『ローレライ』の潜水艦と太陽の塔についてお伺いします。

「こどもの頃にそれを見た我々は縄文じゃなくて未来を感じちゃった。」

樋口:《ローレライ》で参考にしたのは、実在するフランスの潜水艦です。それがドイツに行って改造されたというお話でして。で、宮脇センムに「ドイツ人になったつもりで、どう改造するか考えてくださいよ」って言ってつくってもらったんです。

平野:建築であれモニュメントであれ、どんなに巨大なサイズを想定していても、最初の原型ってみんな小さいわけですよね。全長が100メートルを超える潜水艦であっても、原型はせいぜい1メートルくらいでしょ?

樋口:はい。

平野:つまり順番からいうと、最初に1メートルでつくり、それを100メートルに拡大する。映画の場合は特撮技術で100メートルに見せるわけですけど。で、このとき往往にして起こるのは、1メートルのときにはカッコよかったのに、100メートルになった途端に「ぜんぜんダメじゃん」っていう…。

樋口:だらしなく間延びしてちゃうってこと?

平野:そう。1メートルで手を動かしているときに、頭の中は100メートルになっていなければならないんだけど、これってものすごく難しいんですよね。どうしても目の前にある1メートルで見たときにいちばんカッコいいモノになっちゃう。

樋口:なるほど。

平野:でも太郎にはそれができた。太陽の塔にはいろんなサイズの原型があるけど、大阪の実物がダントツでカッコいい。

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樋口:太陽の塔って70メートルでしたよね?

平野:そうです。最初に太郎がつくったのは1.5メートルくらいだったんだけど、このとき太郎の頭の中は完全に70メートルになっていたということです。言い換えれば、70メートルになったときにいちばんカッコいい造形を1.5メートルでつくることができた。

樋口:それはすごいな。

平野:ガメラもおなじですよ。どう考えても「亀」をそのまま大きくしたところでカッコイイわけないんだから、40メートルになったときに最高にカッコいい「亀」を、原型をつくる段階でイメージするわけですよね?

樋口:それで判断しますね。

平野:樋口さんにもそういうスケール感覚があるってことです。

樋口:ボクらは逆に、大きいものをどうやって小さくてして見せるかっていうことばかりやっているんで。

平野:原理は一緒だと思いますよ。

樋口:嬉しいな。だってほんとうにすごいと思うもんなあ、太陽の塔って。実物を見るときにいちばん好きなのは、腕の付け根…っていうんですか?

平野:あっ、一緒だ(笑)。

樋口:背中から見るんですけど…。

平野:そこも一緒!(笑)

樋口:後ろに反りつつ前にぐっと出てる、あの相反する流れみたいなのが、下から見上げたときに「すごいな」」って思いますね。

平野:うねってるもんね。

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樋口:おそらく建築物としてスレスレなわけじゃないですか。だって施工しないといけないし。

平野:うん。

樋口:太郎さん、けっこう我慢したんじゃないかな。じっさいに建てようとしたらこうしなければダメだっていうような、いろんな制約があったに違いない。それをぐっと飲み込んだっていうか…。

平野:太陽の塔の建築設計を担当した人の話を聞いたことがあるんですよ。太郎が彼らに「これだ!」って渡した原型は1/100。手作業でベシャベシャとつくった石膏原型だから、いびつだし、ゆがみやひずみの塊だった。でもそれだと施工できないから、ぜんぶ幾何学的な形に置き換えて、円とか楕円の組み合わせで設計したんだって。

樋口:そういえば図形的にできているような気もするな。

平野:太郎がつくったものとちがって、左右対称だし。

樋口:原型はもっと混沌としたものだったんですね。

平野:そう。だから厳密にいえば、太郎がつくったそのままではない。近似はしているけれど。だけど太郎は、そこは我慢というのか、本質はズレてないから、現場を見て「まあ、これでいいや」って思ったんじゃないかな。

樋口:そうなんでしょうね。

平野:〝折り合い〟ですよ。クリエイターにあるまじき…(笑)。

樋口:(爆笑) でも、ボクはそういう我慢がいろいろあったと思うし、それにオッケーを出した太郎さんはすごいと思いますね。〝混沌〟を業者に託したところで、絶対にちがうものになるはずだから。どこかでそれを受け入れるっていうか…。

平野:うん。

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樋口:前に太郎さんのスケッチを見せていただいたけど、もっとカオスじゃないですか。でも建築物として折り合いをつける中でコスモスになっていくっていうか。それがあってはじめて完成したものなのかなって。

平野:想像するに、いろいろな思いがあったにしても、できないよりはできたほうがいいと思ったにちがいない。

樋口:建たなかったらゼロですもんね。

平野:アーティストというより、プロデューサーの視点で判断していたんだと思いますね。

樋口:あああー!。

平野:太郎はおそらく「自分の血の中にある縄文を思い出せ!」って言いたくて太陽の塔を突き立てた。とにかくメッセージを打ち込む、っていうことが最上位にあったんだと思うな。

樋口:でも、こどもの頃にそれを見た我々は縄文じゃなくて未来を感じちゃった。

平野:そうかも(笑)。

樋口:思いとは裏腹ですよね(笑)。それに自分なんかは、ずっとテレビや雑誌で見てたヒーローや怪獣や宇宙船のような存在がこれなんだっていうか…。テレビとかでは嘘だけど自分たちには…、

平野:これがある!と。

樋口:うん。

平野:リアルに!

樋口:現実にあるんだっていうのをこどものとき感じましたね。

平野:ってことは、太陽の塔は映画監督樋口真嗣にとってすごく大きな存在だってことですね。

樋口:そりゃもうメチャクチャ大きいですよ。


次回はCGとアナログ的な特撮の関係についてお伺いします。

樋口真嗣⑧「眼が光るって日本ならではというかガラパゴスなんですよね。」

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樋口真嗣
1965年東京都出身。
1984年「ゴジラ」で怪獣造形に携わることで映画界入り。
1995年には特技監督を務めた「ガメラ 大怪獣空中決戦」で日本アカデミー賞特別賞特殊技術賞を受賞。
監督作品に『ローレライ』、『日本沈没』、『のぼうの城』、実写版『進撃の巨人』など。
2016年公開の『シン・ゴジラ』では監督と特技監督を務める。

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