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5th Ishii Takumi ②

第5回 石井匠②

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岡本太郎をリスペクトする著名人の方々に、太郎への思いを思う存分語っていただきます。

第五回目は國學院大學博物館学芸員、岡本太郎記念館客員研究員で、2016年岡本太郎記念館企画展「生きる尊厳-岡本太郎の縄文-」をキュレーションをされた石井匠さんです。

今回は受験に失敗し、浪人生になった石井さん。
しかし鬱々とした日々に射し込む光が!



受験に失敗し、浪人生になったぼくは、御茶ノ水の駿台予備校に通うようになりました。親に迷惑をかけることになったわけですが、

「これから一年間、また勉強しないといけないのか・・・」

そんなことを考えて鬱々としていました・・・。ろくに勉強していないくせにね(笑)。

当時は18歳。多感な時期なので、いろいろと悩みはじめる年頃です。

浪人時代のぼくの一番の悩みは、
「自分はなんのために大学へ行くのか?」
ってこと。

「ぼくは考古学をやりたいと思っていたけど、考古学をやってどうするんだ?」
「なんのために考古学をやるんだ??」なんて考えはじめると、よくわからなくなってくる。

答えが出せないので、もう悩みのドツボにはまっていく。

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そのうち、「ぼくはなんのために生きているのか?」と考えだしちゃって・・・。

生きている意味が、考えても考えてもわからない。「生きている必要はないんじゃないか?」ってところまで行ってしまうわけです。

その先にあるのは・・・「死」です。

生きている意味がわからないなら、もう、死ぬしかない。単純な思考なんですが、若いがゆえに、まっすぐすぎるほどまっすぐ。本気でそう考えて、「死」を意識するようになったんです。

それからは受験勉強をしていても、なんのために大学に行くのかもわからないし、なんのために生きているのかもわからないから、生きがいもやりがいも見えてこない。

で、頭にはずっと、
「死ぬしかない、死ぬしかないんだ俺は。死にたい、死にたい・・・」という考えしか思い浮かばないようになってしまって。

思い込みが激しいので、それで自殺を決意して、電車に飛び込もうとするんだけれど、もう足がガクガク震えて、怖くて飛び込めない。

黄色い線の内側で、ガクブルです。まったく、うごけない。

一度、ビルの屋上から飛び降りようとも考えました。でも、やっぱり怖くて、屋上までたどりつけないんです。

死のうと思っても死ねない。

なぜなら、怖いから。
怖くて死ねないので、とぼとぼ予備校に行き、とぼとぼ帰る毎日のくり返し。

いまは、あのとき死ななくって良かった、と思えるんだけれど、当時のぼくにとっては深刻な問題だったんです。

毎日毎日、死のうとしても怖くて死ねない。するとどういうわけか、そんな自分が情けなく思えてくるんです。

「なんだオマエは!意気地なし!」と、死ねない自分を責めて、部屋の壁に頭を打ちつけて、毎晩ひとりで泣いている。そんな毎日でした。

その頃は、親にも当たり散らしていました。亡くなった母は、相当心配していてくれていたけれど、親には理解してもらえない、という思いこみしかありませんでした。

もっと両親と腹を割って話せば、楽になれたのかもしれないんですけれどね・・・。

そんなある日、どういうわけか「芸術ならオレを救ってくれるかもしれない」と思い立つんです。岡本太郎のことはすっかり忘れていたんですが(笑)。

浪人の夏、本屋で『ぴあ』をひらいてみたら、「ジャスパー・ジョーンズ展」が、東京都現代美術館で開催されている、という情報が目に入ったんです。
※『ぴあ』 映画情報・コンサート情報などが掲載されていた情報誌。

それがなんとなく気になって、「よし・・・。これを見に行ってダメだったら、ほんとうに死ぬしかない・・・」という想いで、美術館に行ってみたんです。

いまは笑い話にできますが、当時のぼくにとっては深刻です。

会場に行くと、入り口にジャスパー・ジョーンズについて横尾忠則さんが書いている文章が掲げられていて、大絶賛しているんですね。

「横尾さんも大絶賛している!これは救われるかもしれない!」って思って、期待しながら入ってみたら・・・

ぼくには、ゴミが並んでいるだけにしか見えなかった。

あぁ、もうダメだって思いました。芸術も、オレを救ってくれないんだと絶望しました。

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絶望して、美術館の展示室を後にして、トボトボと、灰色の床の石畳をみつめながら館内を歩いていたら、目の前に階段があらわれて。

もう落ち込んで死ぬしかないと思っているから、下しか見ないわけです。で、そのまま階段を降りていく・・・。

地下に降りたら、そこに美術館の図書館があったんです。

「そういえば、高校時代に図書館で岡本太郎の本を借りてたくさん読んだよなぁ・・・」と、ふと思い出して。

「そういや入試の面接でも、あんなに熱く語ったのに、あれ以来、ぜんぜん読んでない!」と気がついたんです。

美術館の図書館なら、もしかしたら読んだことのない太郎さんの本もあるかもしれないと思って、パソコンで調べてヒットしたのが、どこかの展覧会の図録でした。

それを受付の人に書庫から引っ張り出してもらって、席について、座ってページをめくったら、そこに書いてあったのが、

「絶望を彩ることが芸術だ。」

その言葉を読んだ瞬間は、もう表現のしようがない。死ぬしかないと思っていた自分の道が急にひらけて、真っ暗だった目の前に、一気に光が射してきたんです。

ほんとうに、ぱぁっと光が見えた。

図書館で、本を開きながら、声をひそめて、その場でずっと嗚咽していました。もう涙がとまらない。

美術館からの帰りのバスでも、他人に見られないように、うつむきながら泣いていました。

だからぼくは、岡本太郎の言葉に、いのちを救われたんです。

太郎さんは、文字通り、ぼくのいのちの恩人です。

あのとき、どんなに怖くても自ら死を選んでいたら、救われることもなかった。

心も体もボロボロ。身が引き裂かれるほど悩んでいるときは、死にたいほど苦しいけれど、それでも生きていることで、なにかが起こる。

そういえば、子供のころの太郎さんは、いじめられっ子だったそうです。100年前のいじめられっ子。不登校児で、小学生のときから自殺のことばかり考えていたそうです。

そんな太郎さんは、迷ったら黒い道、もしかしたら死んじゃうじゃないかと思うような道を選べ! そうすると生が、いのちが燃え上がる!と言っています。

それは、ほんとうに自ら死を選んで終止符を打つことではなく、死を身近に感じながら生きろ!という太郎流のメッセージなんです。



次回、石井匠さんは悩みます。
「自分がどこから来て、どこへ行くのか?」

石井匠③

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石井 

1978年生まれ。國學院大學大学院文学研究科博士課程後期修了。博士(歴史学)。
現在、國學院大學博物館学芸員、岡本太郎記念館客員研究員。
第2回岡本太郎記念現代芸術大賞、入選。
岡本太郎の巨大壁画《明日の神話》再生プロジェクトスタッフとして、メキシコでの壁画回収・修復・設置作業に従事。
2016年岡本太郎記念館企画展「生きる尊厳-岡本太郎の縄文-」をキュレーション。
著書に『縄文土器の文様構造』、『謎解き太陽の塔』、共著に『縄文土器を読む』他多数。

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