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5th Ishii Takumi ④

第5回 石井匠④

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岡本太郎をリスペクトする著名人の方々に、太郎への思いを思う存分語っていただきます。

第五回目は國學院大學博物館学芸員、岡本太郎記念館客員研究員で、2016年岡本太郎記念館企画展「生きる尊厳-岡本太郎の縄文-」をキュレーションをされた石井匠さんです。

今回は石井匠さんと敏子さんの運命の出会いについて。



いまふり返れば、よくまぁ、何も考えずにいきなり電話したよなと思うんですが、とにかく書かれていた番号に電話をしたら敏子さんが出た。

「おお!敏子さんじゃん!!」
と叫んではいないですが(笑)、

テレビの『知ってるつもり?!』のラストに出演されていたので、敏子さんの声だとすぐにわかりました。

ぼくは「じつは岡本太郎にいのちを救われて、絵を描いているんです。敏子さんにぼくの絵を見てもらいたいんです!」と、気づいたらそう言っていました。

「あらそう。わかったわ。今度、ワタリウム美術館で講演をするから、そこにあなたの絵をもっていらっしゃい」と、二つ返事でOK。おどろきです。

それで敏子さんの講演に絵をもって行きました。講演が終わった後に、自分の絵を見せようとしたら、敏子さんがそれを止めるんですね。

「わたしに見せたって仕方ないでしょ?」と。

え???敏子さんに見せたいんですけど!持って来いって言ったのは敏子さんじゃん!と戸惑っていたら、

「ここにいるみんなに見せなさい」
と彼女が言うんですよ!

自分が浪人の頃に描きためていたものを、岡本太郎賞の展覧会で、なおかつ敏子さんの講演目当てに集まっている全員に見せなさいと・・・。

予想外のことに戸惑いつつも「わかりました」と、崖から飛びおりるつもりで、絵をみなさんの前に出しました。緊張で汗びっしょりだったと思います(笑)。

大小10枚くらいあったかな。だいたい岡本太郎の影響を受けすぎな絵なんですが(笑)、1枚1枚どういう絵なのか説明をして、なぜ岡本太郎に影響されて絵を描きはじめたのかってことも話して。

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でも、ふつう、美術館でいきなり素人の絵を見せられても困りますよね。18の若造が敏子さんの講演後に、聴衆相手にいきなり自分の絵を見せてトークをおっぱじめるんですよ? ありえません(笑)。

ですが、ありがたいことに、見てくださったお客さんたちの反応も良くて、おもしろがってくださったのか、いろいろと質問を投げかけてくれました。

それがひとしきり終わった頃に敏子さんが、「良かったわね。みんなに見てもらえて」って言ってくれたんです。
たぶん確信犯で仕向けたんだと思います(笑)。この人、すごい人だなと。

それが敏子さんとの出会いです。

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会の終了後、敏子さんがみんなに向って、こう呼びかけました。

「いま、岡本太郎記念館の準備をしています。でも、人手が足りないので、誰かボランティアで手伝ってくれる方いませんか?」

ぼくは大学もすぐ近くなので、「手伝います」とその場でお伝えしました。

4月になって、大学の入学式も終わり、発掘現場で遺跡を掘る日々もスタートしていたところ、敏子さんから「手伝って」という内容のFAXが届きました。

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いよいよIDEEから覗いた、あの岡本太郎のアトリエに入れる!と思うと、ワクワクしたのを覚えています。

行ってみると、当時は記念館の準備作業で室内も庭もグチャグチャ。あちこちに段ボールの山が積まれているし、なんだか見たことがないものがいろいろ散乱しているし、工事現場そのもの。

そこで現場のスタッフさんたちと一緒になって、庭の手入れをしたり、2階の大きな手すりを運んだり、いまアトリエに《光る彫刻》がつり下がっていますが、それを設置したり、屋内や庭にある彫刻を移動したり、とにかくなんでもしていました。

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それから約1ヶ月の5月7日。岡本太郎記念館がオープンします。その時に敏子さんにかけられた言葉は、今も忘れられません。

「あなたは家族よ!」

赤の他人から、そんな言葉を投げかけられたことはなかったので、びっくりしましたが、とても嬉しかったです。

それからは、大学の講義に出席するために発掘現場を途中で切り上げ、渋谷に出てくるんですが、だいたい授業はさぼって敏子さんにアポなしで会いに来ていました(笑)。

敏子さんも「あら、来たの?」ってふつうに迎え入れてくれるんですね。そこから何時間も話していると、授業が終わってしまっているという・・・(笑)。

いまにして思えば、相当迷惑だったと思います(苦笑)。でも彼女は、嫌な顔ひとつしないんです。

その頃、太郎さんは世の中から忘れ去れている存在でしたから、敏子さんが先陣を切って岡本太郎をリバイバルする活動に邁進している時期でした。

敏子さんは、呼ばれれば全国どこでも飛んで行って、有名無名問わず、新聞・雑誌・テレビ・ラジオとあらゆるメディアに出ていって、岡本太郎巫女と公言しながら、太郎の布教活動みたいなことをずっとしていた頃です。だから、とっても忙しいはずなのに。

自分だったら、そんな多忙なときに、自分みたいなめんどくさい奴に唐突に来られても困ります(笑)。

ふつうは「アポくらいとれよ!」って話だと思うんですけど、「敏子さ~ん、こんちは~」と、いきなり遊びに行っても、嫌な顔ひとつせず受け入れてくれていました。

そんなとき、第2回岡本太郎現代記念現代芸術大賞(現・岡本太郎現代芸術賞)のチラシができて、「あなたも出したら?」って、ひょいと渡されました。

「そういえば、敏子さんと出会ったのも絵をみせたのがきっかけだったな」と思って出品したんですが、《超・縄文》というアホなタイトルの作品で入選することができました(笑)。

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次回は《明日の神話》修復に石井さんが欠かせなかったその理由とは。

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石井 匠

1978年生まれ。國學院大學大学院文学研究科博士課程後期修了。博士(歴史学)。
現在、國學院大學博物館学芸員、岡本太郎記念館客員研究員。
第2回岡本太郎記念現代芸術大賞、入選。
岡本太郎の巨大壁画《明日の神話》再生プロジェクトスタッフとして、メキシコでの壁画回収・修復・設置作業に従事。
2016年岡本太郎記念館企画展「生きる尊厳-岡本太郎の縄文-」をキュレーション。
著書に『縄文土器の文様構造』、『謎解き太陽の塔』、共著に『縄文土器を読む』他多数。

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