Talks

Matsuo Yudo talk ① "Jazz popularization committee"

松尾由堂対談①「ジャズ普及委員会」

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味のあるいぶし銀ジャズギターで知られる日本精鋭のジャズアーティスト松尾由堂さんとの対談です。

松尾由堂②「中学2年のときに『これって、もしかして、ものすごくカッコイイんじゃないか?』と思った。」
松尾由堂③「『味な真似をするヤツ』っていう感じですかね。」
松尾由堂④「ヘッドホンで爆音で『My favorite things』なんか聴いて「いやー、参りました!」ってなりましたし。」
松尾由堂⑤「音楽の素養がまったくない人たちだったのに、非常にピースフルな演奏になったから。」
松尾由堂⑥「ジャズマンには探究心の強い人が多いですね。むしろ強いからジャズを演るのかもしれませんが。」


第一回は岡本太郎記念財団20周年レセプションで演奏されたオリジナル曲についてお伺いします。

太郎さんの画集を一枚ずつめくっていったんです。

平野:今日は、自身のバンドや数々のセッションで注目されているジャズギタリストの松尾由堂さんにお越しいただきました。太郎ファンのみなさんはきっと、えっ? 太郎とジャズ? って、ピンとこないかもしれないけど、だからこそおもしろいと思って、先日ちょっとした試みをお願いしたんです。

松尾:はい(笑)。

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平野:3月に開いた岡本太郎記念財団20周年レセプションの締めに、オリジナル曲を演奏してもらった。たった1回演奏するだけのために曲をつくってもらったんです。もちろんテーマは岡本太郎。ふつう、こんな無茶なお願いはできないけど、じつは松尾さんはぼくのギターの先生。だから軽いノリで頼んじゃいました(笑)。

松尾:いやいや、とてもおもしろかったし、刺激になった。いい経験をさせてもらいました。

財団20年レセプションー1_1 平野:今日は、ジャズの話や音楽制作を支える創造性について、いろいろとお訊きしたいと思っています。まずはレセプションで演奏していただいた曲『Painted Warrior(装える戦士)』を聴いていただくことからはじめたいと思います。きょうはギターを持ってきていただいたので、さっそく演奏していただきましょう。



平野:全編にわたって躍動的に疾走するんだけど、けっして野性一辺倒ではなく、クールで知的。野蛮と知性がおなじ強度で対峙しているっていうか…、とても不思議な曲ですよね。どんなふうにして生まれたんですか?

松尾:平野さんから「太郎をモチーフに曲を書いて欲しい」って言われたとき、じつはだいぶ戸惑ってました(笑)。イメージ先行で曲づくりをするなんてこと、まずないですからね。でも引き受けちゃったしな、いや参ったな、って。

平野:(笑)

松尾:最初、平野さんからいただいた話、「岡本太郎はこういう人で」「こんなイメージで」というのをもとにいくつか曲を書いてみたんですけど、どうもうまくいかなくて。

平野:その状況をどうやって打開したんです?

松尾:太郎さんの画集を一枚ずつめくっていったんです。つぎつぎに作品を見ながら、とにかく思いついたことを弾いていった。

平野:おもしろいなあ。

松尾:曲になる、ならないはいったん脇において、短いモチーフを、とにかくどんどん出していったんです。

平野:作品から受けたインスピレーションをもとにして、ってことですよね?

松尾:そうです。

平野:いろんな作品を試してみたところ、たまたまヒットしたのが『Painted Warrior』、すなわち《装える戦士》だったってことですか?

松尾:そうです。けっこういい感じに進んだんですよ。

《装える戦士:Painted Warrior》
《装える戦士:Painted Warrior》


平野:へえ。

松尾:ほかにも《夜》とか、《森の掟》とか、旗がはためいている…

平野:《憂愁》かな?

松尾:そう、それとかでもモチーフをつくってみたんですけどね。

平野:それ、聞きたい!

松尾:そうやってどんどんモチーフを出していって、「これはおもしろそうだな」っていうのを探していったわけです。

平野:絵画というビジュアルイメージと音楽のモチーフって、ぼくのなかでどうやってもつながらないんですけど…

松尾:映画のワンシーンみたいな感じです。映像の後ろでどういう音が鳴っていて欲しいかっていう…。

平野:あっ、なるほど、そういうことか。1958年にマイルス・デイビスが『死刑台のエレベーター』の映画音楽を担当したとき、ラッシュ(音の入っていない未編集プリント)を見ながら曲をつくっていったように、松尾さんはいわば「太郎の絵につけるサウンドトラック音源」を制作していたってことだ。

松尾:そういうことになるのかもしれません。

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平野:それにしても、なぜ《装える戦士》?

松尾:それはわからないです。なんでだろう?

平野:ビジュアルイメージに音をつけられるってことは、理論的には、いくらでもつくれるってことですよね? それこそ100曲でも200曲でも。

松尾:イメージできない絵もありましたよ。なぜかはわからないですけど。

平野:ああ、なるほど。

松尾:それに、じっさいに作業しているときには「さっきはこういう感じで弾いたから、次はこんな感じで弾こう」みたいな感覚もどこかにあったと思うし。

平野:それはそうでしょうね。

松尾:自分のなかで場面が変わったっていう感覚ですね。1枚の絵だけをひたすら見て、それの世界に籠ってつくる、っていうのとはちょっとちがうかな。

平野:太郎が作品に込めた〝なにか〟を抽出し、それを音として表現した、っていう話ではないと。

松尾:それは無理でしょう(笑)。そんなことはできません(笑)。

平野:そりゃ、そうですよね(笑)。

松尾:モチーフは感覚で弾いてるだけだし…。それを曲に仕上げる段階では、知識を使う部分もありますけど。

平野:今日は太郎の話は脇に置いて、徹底的にジャズの話をしようと思っているんですけどね。

松尾:いいんですか?(笑)

平野:PLAY TAROを見てくれている若い世代には、ジャズにあまり馴染みがない人も多いと思うし、そもそも「モチーフを曲に仕上げる」っていうアクションがどういうことなのか、まるでわからないと思うんですよ。ぼくだってわかってないし。まずはそこから解説してもらえると嬉しいんですけど…。

松尾:うーん、なにを話せばいいのかなあ。

平野:まずは「モチーフとはなにか?」ってところからお願いします。

松尾:それなら音があった方がわかりやすいと思うので、ギター弾いてもいいですか?



平野:モチーフってなんですか?

松尾:まずパッと見て、リズミックな印象があった…あんまり複雑な和音というよりは、原始的な。力強い感じで。そういう感覚で、このコードが出てきているんだと思うんです…

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松尾:ここからなにかたちのぼる…また戻るみたいな…

平野:言ってみれば、最初のモチーフを広げていく、展開していくっていう感じですか?

松尾:そうですね。だからこのパートがまずできて…、それでちがうところ行きたくなったときに、「どこへ行くか」を考える。

平野:最初のモチーフを広げていきながら、次に曲全体のストーリーを考えていく…。けっこうロジカルな作業ですね。

松尾:場合によりますね。最初から最後までひとつのモチーフで押し切ることもあるし、なにかもう一展開あるくらいのサイズ感にしたいって思うときもあるし。料理みたいなもので、素材に塩だけで食べようっていう場合もあるし、付け合せもソースもつくりたいという場合もある。

平野:なるほど。いずれにしろ、目の前に《装える戦士》があって、絵との対話の中からモチーフが生まれる、その瞬間は、構築的というよりは〝なんとなく出てきちゃった〟っていう感じなんですよね?

松尾:あとから説明すれば、原始的なイメージだったり、躍動感だったりっていうことになるんでしょうけれど、まずはサウンドイメージとしてなんかこういう…「こういう感じのやつ」みたいな…(笑)。

平野:そこから曲に構成していくっていうのは、モチーフを生み出すプロセスに比べれば編集的な作業ですよね?

松尾:どうなんですかね? この後…

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松尾:もうワンセクションあるんですけど、ここら辺は進むに任せているところがあるんです。

平野:いまいろいろなフレーズが出てきましたけれど、弾いているときにはなにを考えているんですか?

松尾:なにも考えていないです。

平野:えっ、すごい!

松尾:今回の場合はとくにそうなんですけれど、弾きやすいように弾いているだけで。

平野:弾きやすいっていうのはつまり気分よくってこと?

松尾:自分の弾き癖もあるし。普段はもっとメロディを優先して作曲することが多いんですけど、この曲に関しては「流れて」欲しかったんで。

平野:ひたすら〝吐き出した〟ってこと?

松尾:即興をそのまま曲にするようなことを試してみたんですよね。どうなるかわからないけれど、こういうのが入るな、とか。なんとなくこういうところに行くな、みたいなのを弾きやすいように。

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松尾:ただどうしてもここはこういうメロディが欲しいから開放弦を使うしかない とかっていうのは後から微調整したんですけどね。

平野:じゃあ、もしかして作業的にはめちゃくちゃ早くできちゃったっていう感じですか?

松尾:そうですね ただ、ラストが難しかった。テーマとの関係を含め、どうやって終わるかが。

平野:というと?

松尾:テーマを1回聴いて終わったとして、果たしてそれで「曲を聞いた」感じになるかなって。そこでたとえばフリーなソロみたいなパートを入れようかとか。そういうことを考えるのにちょっと時間はかかりました

平野:ただ吐き出しただけだったものを、音楽として成立させるにはどうすべきかっていうことですね?

松尾:そうですね。じっさいに人前で演奏するときにはどうしたらいいかを決めるのに時間がかかったような気がします。



次回は松尾由堂さんの音楽遍歴についてお伺いします。

松尾由堂②「太郎さんの画集を一枚ずつめくっていったんです。」

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松尾由堂

1977年福岡生まれ、佐賀、熊本と移り住む。
中学時代にBob Dylanに傾倒、15歳でギターを始める。
東京大学入学と同時に上京、森田修史(ts)の演奏に衝撃を受け、ジャズを聴き始める。
2003年頃よりプロとして活動を開始。
2010年自家版CDR「BONANZA」を発売。
2012年公式アルバムとしては初となるCDを同タイトル「BONANZA」として発売。
現在は大口純一郎(pf)氏を迎えた自己のカルテットのほか、ジャズ系のセッションワークを中心に活動中。

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