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Matsuo Yudo talk ⑤ "Jazz popularization committee"

松尾由堂対談⑤「ジャズ普及委員会」

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味のあるいぶし銀ジャズギターで知られる日本精鋭のジャズアーティスト松尾由堂さんとの対談です。

〈前回までは〉
松尾由堂①「太郎さんの画集を一枚ずつめくっていったんです。」
松尾由堂②「中学2年のときに『これって、もしかして、ものすごくカッコイイんじゃないか?』と思った。
松尾由堂③「味な真似をするヤツ」っていう感じですかね。
松尾由堂④「ヘッドホンで爆音で『My favorite things』なんか聴いて「いやー、参りました!」ってなりましたし。」


第五回はジャズミュージシャンの“アドリブ“。音によるコミュニケーションについてお伺いします。

音楽の素養がまったくない人たちだったのに、非常にピースフルな演奏になったから。

平野:ジャズって、ややこしいコードが次々に切り替わっていくし、構成や展開も複雑だから、譜面はさぞ難解だろうと思っていた。ところが、じっさいに現場で使っている譜面を見せてもらって驚愕しました。なんとペラ1枚、しかも下半分は白紙だった。

松尾:(笑)

平野:テーマのメロディとコード進行が書いてあるだけ。そんな程度の情報しか書いてないのに、ミュージシャン同士が複雑な音楽を織りなしていくわけじゃないですか、しかも即興で。

松尾:そこがジャズのおもしろいところですよね。

平野:それってやっぱり特別な訓練の賜物なんですか?

松尾:おもしろい話があって。大学のゼミに演奏に行くっていう仕事があったんです。教授が演習林を持っていて…。

平野:さっそくおもしろいです(笑)。

松尾:学生と何泊か共にして最終日に演奏する「森林とジャズ」っていう講義だったんですけど。

平野:演習林ということは、農学部の先生?

松尾:そうです。そこにいろんな教授が来て授業をするんですけど、そのひとつに野外に出てフィールドワーク的なものをやろうっていうのがあった。森の中にあるもので楽器をつくり、それでセッションをしようと。

平野:おもしろいですね。

松尾:セッションといっても、学生たちに音楽の素養があるわけじゃないし、教授たちも演奏するけど、別に楽器ができるわけでもない。

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平野:楽器をつくるって、どんなものを?

松尾:たいていは木を叩くとか、葉っぱをワサワサさせるとか、そんな程度です。で、「さぁ、やろう!」となるんだけど、そこにはひとつだけルールがあった。

平野:ルール?

松尾:「周りの人の音を聞きながらやりましょう」と。

平野:それだけ?

松尾:そうです。でもそれがとてもおもしろかった。ジャズミュージシャンが即興で演っているときに起こる基本的なことが、すべて起こったからです。

平野:へえ。

松尾:パターンをやるヤツがいたり、そこに別のパターンを被せてくるヤツがいたり、それと無関係に上の方にずっといるヤツなんかもいて。なんとなくみんなが一緒になる瞬間もあった。指揮者はいません。でも、あるとき、みんなが終わったなって思ったらしく、みんなできちんと終わったんです。

平野:すごいな。

松尾:物体の運動に「物理」があるのとおなじように、「楽理」っていうか、そういうものがあるんだって思いました。

平野:人間が本来的にもっている能力みたいなことですね。

松尾:以前に見た天草の花火大会では、開始の合図も終わりの合図もなかった。はじまりはドーンって打ち上がるからわかりますけど、終わりの合図がない。だけど、あきらかにみんなわかっていて、拍手をして、「よかった!」って解散する。

平野:なるほど。

松尾:そういうのって、それこそ譜面に書くようなことじゃないですよね。

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平野:ジャズの世界で起きていることは、かならずしも特殊な才能や特別なトレーニングがなければできないというものではなく、その能力は生まれながらにして誰もがもっているものなんだ、と。

松尾:そうです。もちろん、その上に音楽的なハーモニーやリズムの知識など、いろいろな要素がいっぱい重なっているわけですけれど、原理的には「周りの音を聞きながらやってください」っていうルールだけなんだと思うんですよ。そこに各々の持っているものが折り重なって、複雑なことが起きているように見えるだけで。

平野:人間にはもともと言語以外のコミュニケーション能力が備わっているってことですね。

松尾:そういうことです。あのときの体験は衝撃でした。音楽の素養がまったくない人たちだったのに、非常にピースフルな演奏になったから。

平野:前にダースレイダーっていうラッパーの方と話したときに(※アドレス指定)、彼が言ってたんですけどね。日本の政治家のしゃべりが心に響かないのはリズムがないからだ。だからパワーがないんだって。

松尾:おもしろいですね。

平野:だとすれば、ジャズを聴くという経験は、プレゼンテーション能力や表現力を養うとてもいいトレーニングなのかもしれないって思ったんですよ。ジャズのグルーヴって、もっとも上質なリズム感覚だから。

松尾:なるほど。

平野:いまの話を聞くと、専門的なジャズ教育を受けた人間でなくとも、生まれながらにコミュニケーション能力やリズム感覚をもっている。であるなら、それを研ぎ澄ますことも可能だっていうことですよね。

松尾:ぼくはそう思います。上に乗っているいろんなものが先に目についちゃうだけで、ほんとうはけっこうシンプルなんですよ。



次回はジャズ=エリートの音楽なのか?について。

松尾由堂⑥「ジャズマンには探究心の強い人が多いですね。むしろ強いからジャズを演るのかもしれませんが。」

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松尾由堂

1977年福岡生まれ、佐賀、熊本と移り住む。
中学時代にBob Dylanに傾倒、15歳でギターを始める。
東京大学入学と同時に上京、森田修史(ts)の演奏に衝撃を受け、ジャズを聴き始める。
2003年頃よりプロとして活動を開始。
2010年自家版CDR「BONANZA」を発売。
2012年公式アルバムとしては初となるCDを同タイトル「BONANZA」として発売。
現在は大口純一郎(pf)氏を迎えた自己のカルテットのほか、ジャズ系のセッションワークを中心に活動中。

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