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Matsuo Yudo talk ⑥ "Jazz popularization committee"

松尾由堂対談⑥「ジャズ普及委員会」

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味のあるいぶし銀ジャズギターで知られる日本精鋭のジャズアーティスト松尾由堂さんとの対談です。

〈前回までは〉
松尾由堂①「太郎さんの画集を一枚ずつめくっていったんです。」
松尾由堂②「中学2年のときに『これって、もしかして、ものすごくカッコイイんじゃないか?』と思った。
松尾由堂③「味な真似をするヤツ」っていう感じですかね。
松尾由堂④「ヘッドホンで爆音で『My favorite things』なんか聴いて「いやー、参りました!」ってなりましたし。」
松尾由堂⑤「音楽の素養がまったくない人たちだったのに、非常にピースフルな演奏になったから。」


第六回はジャズ=エリートの音楽なのか?についてお伺いします。

ジャズマンには探究心の強い人が多いですね。むしろ強いからジャズを演るのかもしれませんが。

平野:それにしても、ジャズはやっぱりエリートの音楽ですよ。ジャズを演奏できる人は、ミュージシャンとしてまちがいなくエリートですし。

松尾:そういう部分はあるかもしれませんね。生まれた時はそうじゃなかったんでしょうけれど。

平野:誤解を恐れずにいえば、ジャズを聴いている人もそう。リスナーとしてのエリートですよ。だって、生まれてすぐにジャズを聴きはじめました、なんてヤツはいませんからね。みんないろいろな音楽を経験したあとでジャズに行く。

松尾:なるほど。

平野:「私はジャズ以外の音楽は聴いたことがありません」なんてジャズ愛好家は、たぶんひとりもいない。いろんな知識をもっているし、おそらくは本人も鑑賞者としてエリートだと自覚している。

松尾:おもしろいですね。

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平野:音楽的エリートであるジャズミュージシャンは、エリートであるがゆえに、つねに「もっと先に行こう」「さらに実験してみよう」と考えているでしょう?

松尾:たしかにジャズマンには探究心の強い人が多いですね。むしろ強いからジャズを演るのかもしれませんが。

平野:ですよね。でも一方で、ジャズだってエンターテインメントだから、多くの人に聴いて欲しい。

松尾:はい。

平野:もっと先に行きたい。でも、あまり実験が過ぎるとリスナーについて来てもらえない。そのあたりの葛藤についてはどうですか?

松尾:ぼく自身について言えば、いまの方向をもっとちゃんとやっていこうと考えているので、オーディエンスを置いていくみたいなことにはならない気がします。

平野:なるほど。

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松尾:なにしろボブ・ディランの3コードからはじまったわけで。ニューヨークのいまのジャズを聴いても、「ちょっとややこし過ぎるな」って思うこともあるし。

平野:わかる。

松尾:いま聴くと、「あぁ、こういうふうになってるんだな」っていうのはわかるし、かっこいいとも思うけど、毎日聴きたいとは思えない。そういうのは勉強として聴くって感じで。

平野:いまもリスナーの感性が鈍っていないっていうことですね。

松尾:残ってますね。それこそいま書いている曲は、高校時代には書けないものだけど、でもそれって、なんていうか、高校のときには「そうしたかったけど、できなかった」っていうだけで。

平野:高校生の知識と技術ではできなかったことがいまはできるようになった。もともとそういうものが好きだった…。

松尾:けっきょく本質は変わってないんだと思います。だから〝ザ・エンターテインメント〟な曲をつくれって言われても、たぶんできない(笑)。反対に、マニアック過ぎて誰にもわかんないよ!っていう曲も書かない。

平野:よくわかる。

松尾:もっと極端なほうがアーティストとしては新しいことができるのかもしれないけど、それは自分のもっている適性ですからね。

平野:あとで「松尾さんのオリジナリティってなんですか?」って訊こうと思っていたんだけど、いまの話を聞くと、そのあたりにありそうですね。ミュージシャンってみんなそうなのかな?

松尾:10代のしょっぱなでジャズに衝撃を受けて、ずっとジャズを演ってるっていう人もいますよ。たしかにそういう人の演奏を聴くと、リアルジャズメンだなって思います。

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平野:音楽の初期衝動っていうか、どんな音と最初に邂逅したかが大きいのかもしれないな。

松尾:そうですね。

平野:もしかしたら、松尾さんをジャズミュージシャンって呼んじゃいけないのかも。

松尾:あー、ジャズも好きですよ、もちろん。

平野:(爆笑) でも、もしかしたら10年後にガラッと変わってるかもしれないじゃないですか。ギターをビブラフォンに持ち換えるとは思わないけど。

松尾:そうですね。ギターは好きですから(笑)。

平野:でもたとえば、映画音楽の巨匠になってるかもしれない。

松尾:それ、いいですね。

平野:あるいは演歌歌手のバッキングをやってるかも。

松尾:それは避けたい(笑)。



次回は「ジャズバンド」。
松尾さんは猛者どもをいかに束ねているのか。

松尾由堂⑦「互いに対して誠実であると同時に、音楽に対しても誠実であるということ。」

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松尾由堂

1977年福岡生まれ、佐賀、熊本と移り住む。
中学時代にBob Dylanに傾倒、15歳でギターを始める。
東京大学入学と同時に上京、森田修史(ts)の演奏に衝撃を受け、ジャズを聴き始める。
2003年頃よりプロとして活動を開始。
2010年自家版CDR「BONANZA」を発売。
2012年公式アルバムとしては初となるCDを同タイトル「BONANZA」として発売。
現在は大口純一郎(pf)氏を迎えた自己のカルテットのほか、ジャズ系のセッションワークを中心に活動中。

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