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Matsuo Yudo talk ⑧ "Jazz popularization committee"

松尾由堂対談⑧「ジャズ普及委員会」

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味のあるいぶし銀ジャズギターで知られる日本精鋭のジャズアーティスト松尾由堂さんとの対談です。

〈前回までは〉
松尾由堂①「太郎さんの画集を一枚ずつめくっていったんです。」
松尾由堂②「中学2年のときに『これって、もしかして、ものすごくカッコイイんじゃないか?』と思った。
松尾由堂③「味な真似をするヤツ」っていう感じですかね。
松尾由堂④「ヘッドホンで爆音で『My favorite things』なんか聴いて「いやー、参りました!」ってなりましたし。」
松尾由堂⑤「音楽の素養がまったくない人たちだったのに、非常にピースフルな演奏になったから。」
松尾由堂⑥「ジャズマンには探究心の強い人が多いですね。むしろ強いからジャズを演るのかもしれませんが。」
松尾由堂⑦「互いに対して誠実であると同時に、音楽に対しても誠実であるということ。」


最終回は「再びジャズの時代は来るのか?」について語り合います。

ぼくだって、大学に入って最初にビル・エヴァンスのCDを借りたときには、すぐ寝ましたからね。

平野:ぼくはまたジャズの時代が来ると考えているんです。

松尾:来ますか。

平野:いまの音楽は打ち込みがベースになっているけど、かならず揺り戻しがある。いずれ〝生〟を求める気分が高まると思うんですよ。さっきも言いましたけど、生身の人間ゆえの〝ゆらぎ〟に起因するジャズのグルーヴは、機械由来のサウンドの対極にある。楽器の生音で勝負しているという点でも、最近の音楽とは真逆です。生音の力って、張りにしても艶にしてもすごいじゃないですか。

松尾:そうですね。

平野:アルトサックスなんか、脳幹に来ますよ(笑)。最近の音楽しか聞いてない若者がホンモノを聴いたら、まちがいなくブッ飛ぶ。

松尾:たしかにライブハウスで生音のジャズに触れたら、いい刺激になるかもしれませんね。

平野:そういう経験に触れる機会がなかったから知らないだけで、体験機会が増えればジャズはまちがいなく復権する。

松尾:ジャズ界でも若い世代が頑張っていて、90年代生まれのジャズメン自身が大きなイベントを企画して、盛り上がりを見せているようです。

平野:それはいいですね。ぼくがこどもの頃は、男の子はみなギター小僧で、ジミー・ペイジやエリック・クラプトンに憧れたわけだけど、いまではPVを見て「この人、自分で弾いてるよ!」って驚くらしい。

松尾:(笑)

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平野:ジャズに興味はあるけど、どうやって近づいたらいいのかわからないっていう人もたくさんいる。そういう人たちを、どうやったらこっち側に引き込めるか。

松尾:なんか「ジャズ普及委員会」みたいになってきましたね(笑)。

平野:ジャズをクラシックと同列に見て、とっつきにくい難解な音楽と考えている人も多いし。

松尾:まあ、たしかにジャズって難しくないとも言えないんですよね。ぼくだって、大学に入って最初にビル・エヴァンスのCDを借りたときには、すぐ寝ましたからね。

平野:いい話だ(笑)。

松尾:いま聴けばすごいってことがわかるけど、それはやっぱり自分の感覚が変わってきているわけで。

平野:なにせエリートの音楽ですから。

松尾:わからないけど、なんだろうって思って、もうちょっと聴いてみよう、ってやってるうちに…でもまあ、それはその人の自由なんで…(笑)。

平野:もうちょっと親切に伝えられないですかね、ジャズの魅力を。なにを言えばいいのか、ぜんぜんわかんないけど(笑)。

松尾:はい(笑)。

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平野:そういうことをジャズの世界の人たちはやってこなかったしね。どうすれば間口を広げられるか? みたいなことを。やってきたことはむしろ逆ですからね。間口を狭め、ハードルを上げて「そう簡単にこっちには来られねぇぜ!」って感じだった。松尾さんは昔のジャズ喫茶って行ったことあります?

松尾:〝昔の〟はないです。

平野:ぼくは40年くらい前、高校〜大学時代によく行きました、当時はジャズ喫茶の全盛期で、そこらじゅうにあったんだけど、とにかく敷居が高くて。

松尾:そういう話をよく聞きます。

平野:扉を開けると、マスターはもちろん、客も一斉にこっちを見る。どんなヤツか、品定めするんです。こっちはガクラン着た高校生ですからね、「この若造が!」って感じです。

松尾:(笑)

平野:で、聴きたいレコードをリクエストするわけだけど、それこそビル・エヴァンスの名盤みたいな、「ジャズレコード100選」に出てきそうなポピュラーなものをリクエストした日には、「ケッ、なんだよ! オマエみたいな素人が一丁前にリクエストなんかするんじゃねえよ!」みたいな空気になるわけです。

松尾:厳しい(笑)。

平野:だからこっちも頑張って、レアで尖った盤を懸命に探し、満を持してリクエストするわけです。「どうだ! え? 知らねぇだろ?」みたいなね。

松尾:勉強にはなっているわけですね(笑)。

平野:プレイ中のレコードジャケットが飾られるんだけど、聴いたことがない音が流れはじめると、客が「なんだ、これは?」って顔をしながらチラチラ見るわけ。ガン見すると知らないのがバレちゃうから、こっそり何度もね。そのとき店内に、えも言われぬリスペクトの空気が流れるわけですよ。歓喜の瞬間です。「やった! 勝った!」ってね。

松尾:(爆笑)

平野:ジャズってそういうところがある。

松尾:最初はぼくもよくわからなかったので、その経験でいえば、好きなジャズもあればまったくわからないジャズもあった。だから好きなジャズから聴いてみてってことかな。

平野:うん。

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松尾:ただ、ジャズってなにが楽しいの? って訊かれて、一言で答えるのは難しいですね。間違いなくおもしろいからこれだけ世界中に広がってるわけだけど、音楽ですから、別に無理して聴くものでもないよって思っちゃったりするし(笑)。

平野:食べ物にたとえれば、いまインスタントな音楽が増えているでしょう?

松尾:そうかも。ぼくは和定食が好きで、味噌汁と魚とか…がっつり食いたい。こういう話があってですね。以前ライブに来てくれてたお客さんなんですけど、自分も趣味でギターを弾く方で。あるときふっつり見かけなくなった。で、何年かしてひょっこりライブに来てくれたと思ったら、足を片方失ってるんですよ。

平野:へえ。

松尾:さすがにびっくりしていろいろ話をしていたら、血栓かなにかで切断したらしくて、もうなにもする気が起きないと。ギターも全部売って、ライブ観に行くのも今日で最後にしようと思って来たというんです。でも、その日の演奏を聴いて、「やっぱりまたギターが弾きたい、来てよかった、ありがとう」って言ってくれたんです。

平野:いい話だな。

松尾:こっちがありがとうっていうところなんですけど、そういう場面で、音楽が音楽としての効用を発揮できればそれでいいと思うんですよね。インスタントなものが増えてるって話ですけど、コンビニのご飯で十分と思ってる人にはなにを言ってもしょうがないですよ、元気なときは。ただ弱ってるときは、ちょっとちゃんとしたものを摂ったほうがいいだろうと思います。

平野:ジャズには体を細胞レベルで喜ばせる力があるんですよ。ジャズは細胞を活性化する。グルーヴって、きっとそういうことなんだな。

松尾:よく噛んで食べて欲しいですね。

平野:まずは食べてみてくれ! そしてよく噛んで味わってくれ! ってことですよね。きょうは楽しい話をありがとうございました。

松尾:こちらこそ、ありがとうございました。

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松尾由堂

1977年福岡生まれ、佐賀、熊本と移り住む。
中学時代にBob Dylanに傾倒、15歳でギターを始める。
東京大学入学と同時に上京、森田修史(ts)の演奏に衝撃を受け、ジャズを聴き始める。
2003年頃よりプロとして活動を開始。
2010年自家版CDR「BONANZA」を発売。
2012年公式アルバムとしては初となるCDを同タイトル「BONANZA」として発売。
現在は大口純一郎(pf)氏を迎えた自己のカルテットのほか、ジャズ系のセッションワークを中心に活動中

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