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Oscar Oiwathree-man discussions ④ "I spend the best time for creation"

大岩オスカール鼎談④「いちばんいい時間を自分の創作に」

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ブラジル出身の画家、現代美術家でありアーティスト・グループ『昭和40年会』のメンバーである大岩オスカールさんと美術史家で明治学院大学文学部芸術学科教授の山下裕二さんとの鼎談です。

〈前回までは〉
大岩オスカール①「『現代アートって、カッコイイじゃん!』って思ったんです。」
大岩オスカール②「いまでも朝早く起きて、夕方まで毎日描いてます。」
大岩オスカール③「アメリカに行くことに決めたときに9.11が起きて、すごく悩みました。」


第四回は芸術家が「自分の色を見つける」ということについてお伺いします。

昔の方法を真似るんじゃなくて、そのあり方や発想を学んだんです。

平野:いま見ると、「昭和40年会」ってすごいメンバーが揃ってたんですね。

山下:すごいですよ。

大岩:当時はみんなバイトしながら頑張ってました。

山下:当時、会田くんは津田沼に住んでいて、移動するのに駅で人が切符を落とすのを待ってたっていうもんね。

平野:(爆笑)

山下:そのくらい極貧生活だったってことですよ。みんな30歳くらいになるかならないかで……、ぼくも30代だったから、すごく楽しかった。そういう作家とのつきあいがね。みんな、ほんとうに立派になりました(笑)。

平野:いいですね(笑)。

大岩:みんな50歳を超えて、白髪も増えて…。

山下:ぼくなんて、もうすぐ還暦だからね。

大岩:いま若い作家たちに「どこでぼくの作品を見た?」って聞くと、「こどものときにオスカールの本を見て」って言われる。こどものとき!(笑)

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山下:ぼくには確信がありました。「昭和40年会」の人たちは活躍するだろうって。

平野:いまではみんな、美術館でワンマンショーをやるレベルですもんね。

山下:当時から「自分はアーティストとしてやっていくんだ」ってことを信じて、退路を断って真剣にやってましたからね。

平野;そんなオスカールさんの絵を見ていて感じるのは、とにかく描く絵がぜんぶ違うってこと。「作風」っていうのかな?…それがぜんぜん固まってなくて、とてもおなじ人が描いたとは思えないバリエーションが広がっている。

《Black Snow》 1997
《Black Snow》 1997


大岩:たんに数をたくさん描いているからですよ。25年間っていう歳月もあるだろうし。

山下:たしかにバリエーションは多いと思うけど、首尾一貫しているものがある。

大岩:やっぱりおなじ人間が描いているから、形がちょっと変わっても、消えないものがあるんでしょうね。

山下:ぼくは10センチ四方の「部分」を見ても、オスカールの絵だってわかりますよ。

平野:根っこにあるものは一貫していると?

《White Os(Car) 1》 1999
《White Os(Car) 1》 1999


大岩:学生にレクチャーするときにいつも言うのは、「店でインクを買った時点ではみんなおなじだ」ということ。そこから自分で味つけしないといけない。要するに自分の色を見つけるってことなんですけどね。料理とおなじです。

平野:塩加減みたいなこと?

大岩:ただ塩をかけるだけじゃダメだから、素材をどのように活かすか、処理のしかたを考えるわけです。

山下:オスカールは、その「処理のしかた」が首尾一貫しているんですよ。

平野:ああ、なるほど。

山下;素材も違うし、調理法もいろいろあるけれど、一貫したオスカールのスタイルは確立している。そこが好きなんです。

平野:その「味」って、どこで手に入れたものなんですか?

大岩:95年に1年間イギリスにいたんですけど、そこでとにかく絵を見たんですね。イギリスって美術館も多いんで。そこでレンブラントとかを見て、「普通のインクが、どうやったらこういう色になるんだ?」と考え込んで…。

山下:いまレンブラントの話があったけど、オスカールはオールドマスターの絵をたくさん見ているんですよ。

平野:へえ。

《Aquarium》 1999
《Aquarium》 1999


大岩:絵を見ながら、どうしていまの人はこういう色を出せないのかって考えたんです。おなじ人間なんだから描けるはずだと思って。

平野:彼らだって、魔法を使ってたわけじゃないですからね。

大岩:そうです。発想次第で描けるはずだと。

山下:レンブラントは自分のスタイルを確立していたってことなんですよ。

平野:うん。

山下:そういうオールドマスターが自分のスタイルを確立していることを勉強して……

平野:オスカールさんは自分のスタイルをつくろうと思った。

大岩:昔の方法を真似るんじゃなくて、そのあり方や発想を学んだんです。

平野:どんなアーティストであろうと、自分で絵の具を生産しているわけじゃない。絵の具は買うほかなくて、買った時点では、だれもが平等、公平、同条件だと。

大岩:そこから自分のスタイルを探していくんです。

平野:だれでもアクセス可能な材料を使っているにもかかわらず、オールドマスターは自分だけのスタイルを開発することで他者には真似できない表現をつくり出している。

大岩:音楽とおなじじゃないかと思うんですよ。おなじ楽器を使っていても、人によってまったく違う表現になりますよね。

平野:ブラジルのボサノバなんて、ギターと歌だけのシンプルな構成だけど、そのぶん難しい音楽だし、じつに表情が豊かで、個性がそのまま出る。

大岩:まさにそういうことです。



次回は《太郎さんの犬とシャドウ・キャットの出会い》について。

大岩オスカール⑤「物語を感じてくれたとしたら、うれしいですね。」

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大岩オスカール

1965年、日本人の両親の元にサンパウロで生まれる。
サンパウロ大学建築学部卒業後、91年より2002年まで東京を拠点に活動。
2002年よりニューヨークに拠点を移し現在に至る。
物語性と社会風刺に満ちた世界観を、力強くキャンバスに表現する油絵画家。
独特のユーモアと想像力で制作を続けている。

山下裕二

1958年、広島県生まれ。
東京大学大学院卒業。明治学院大学文学部芸術学科教授。
室町時代の水墨画の研究を起点に、縄文から現代美術まで、日本美術史全般にわたる幅広い研究を手がける。

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