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Oscar Oiwathree-man discussions ⑤ "I spend the best time for creation"

大岩オスカール鼎談⑤「いちばんいい時間を自分の創作に」

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ブラジル出身の画家、現代美術家でありアーティスト・グループ『昭和40年会』のメンバーである大岩オスカールさんと美術史家で明治学院大学文学部芸術学科教授の山下裕二さんとの鼎談です。

〈前回までは〉
大岩オスカール①「『現代アートって、カッコイイじゃん!』って思ったんです。」
大岩オスカール②「いまでも朝早く起きて、夕方まで毎日描いてます。」
大岩オスカール③「アメリカに行くことに決めたときに9.11が起きて、すごく悩みました。」
大岩オスカール④「昔の方法を真似るんじゃなくて、そのあり方や発想を学んだんです。」


第五回は《太郎さんの犬とシャドウ・キャットの出会い》についてお伺いします。

物語を感じてくれたとしたら、うれしいですね。

平野:ここまでオスカールさんにお話を伺ってきて、スタイルというものは、ロジカルに説明できるようなものではないということがよくわかりました。

大岩:そうですね。

山下:にもかかわらず、ぼくには5センチ10センチ四方の部分を見てもこれはオスカールのスタイル、タッチだとわかる。そういうものなんですよ。

平野:それは歌の〝こぶし〟みたいなものなのかな?

山下:そうね。そういうものかもしれないな。ロジカルには説明できないけど、聞けばこの人の歌だってわかる。芸術の本質ってけっして言語では説明できないものですからね。

平野:あっ、そうなの? でも、山下さんの仕事って、言語で芸術を語ることでしょ? いまの話、自分の首を締めてない?(笑)

山下:だって、ほんとのことだから(笑)。ぼくが文章を書いているのは、外堀を埋めているだけであって、もっとも核心的な部分はけっして言語化できないんですよ。オスカールのタッチを見て、如何に素晴らしいかっていうのは言葉では説明できない。

平野:だとすると、「美術批評」って、一言で言うと、どういう存在なわけ?

山下:要するに、「芸術のいちばん本質の核心は言語では伝えられない」っていうことを、言い続けているだけ(笑)。

大岩平野:(爆笑)

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山下:本来言葉では説明できないこと、「見りゃわかるでしょ!」ってことを説明しようとしているだけで。学生にはいつもそう言ってます。

大岩:たとえば料理の「おいしい」っていうのもなかなか説明、言語化できないですよね。それとおなじですね。

山下:でもオスカールの作品にはすごく親切なところがあって、かなり多くの人が見て、感じ取ることができるサービス精神みたいなところがあるんですよ。

平野:あぁ、なんとなくわかる。

山下:ユーモアだったり、社会性とリンクしていたり……

大岩:物語性とかね。

山下:物語性もあるし。そういう意味では親切な作品ですよ。

平野:ぼくは今回の《太郎さんの犬とシャドウ・キャットの出会い》を見たときに、とても魅力的だと思ったんだけど、それはまさしく物語を感じたから。ビジュアルとしては固定されたワンシーンしかないんだけど、まるで短編映画を見ているような気分になった。

《太郎さんの犬とシャドウ・キャットの出会い》 2016
《太郎さんの犬とシャドウ・キャットの出会い》 2016


大岩:シャドウ・キャットっていうのはいままでのぼくの作品に何回が出てくるんです。

山下:それを知っている人はさらにニヤリとするっていう…

《シャドウキャットとライトラビットの出会い 1》 1998
《シャドウキャットとライトラビットの出会い 1》 1998


平野:もう1つ思い出したのは、太郎が亡くなったときのこと。

大岩:?

平野:亡くなった日の夜、塀の向こうに、若い子たちがいたんですよ。夜ずっと帰らないで。

山下:塀の外から見ていたんだ。

平野:そう。太郎の遺体がここにある。彼らは太郎に一目会いたかった。入りたい。でも自分は中に入れるような立場じゃない。だから外にずっと立ち尽くしていたんですよ。遠慮がちにね。この絵を見たとき、あの日のことを思い出した。

山下:わかるな。

大岩:そういう物語を感じてくれたとしたら、うれしいですね。

山下:太郎さんが亡くなった1996年1月7日。その日に隕石が落ちたんだよね。

平野:そうそう。

山下:あのときニュースのテロップを見たときに背筋がぞっとしたのを覚えています。

平野:当時、山下さんは太郎になんの興味もなかったんでしょ?

山下:いや、興味はあったんですよ。本もちらほら読んでたし。『原色の呪文』を古本屋で買ってきて、赤線を引きながら読んだりね。でも太郎についてなにかを書いていたわけではなかった。

平野:漠然と「この人っておもしろいかも」くらい?

山下:そう。「改めてしらべてみようかな?」くらいかな。

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大岩:山下さんも生前の太郎さんとは会ってないんですね。

山下:うん。だからオスカールが今回、この作品つくってくれてほんとうにうれしかったな。

平野:この絵には、太郎に対する愛情を感じる。これを描いた人は太郎に対してほんとうにシンパシーを抱いてくれているんだって。あったかいなって思いました。

大岩:もちろん。太郎さんの芸術への思い。ぼくも知っていますから。



次回は最終回。
大岩オスカールさんが芸術を続けていくうえでの大切な考えとは?

大岩オスカール⑥「『次のなにか』をしなくちゃいけないと思いますね。」

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大岩オスカール

1965年、日本人の両親の元にサンパウロで生まれる。
サンパウロ大学建築学部卒業後、91年より2002年まで東京を拠点に活動。
2002年よりニューヨークに拠点を移し現在に至る。
物語性と社会風刺に満ちた世界観を、力強くキャンバスに表現する油絵画家。
独特のユーモアと想像力で制作を続けている。

山下裕二

1958年、広島県生まれ。
東京大学大学院卒業。明治学院大学文学部芸術学科教授。
室町時代の水墨画の研究を起点に、縄文から現代美術まで、日本美術史全般にわたる幅広い研究を手がける。

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