大阪のレゲエ・サウンドRED SPIDER のセレクター・MCであるJUNIOR (ジュニア)さんとの対談です。
〈前回までは〉
RED SPIDER JUNIOR①「じつは最初、レゲエが好きじゃなかったんですよね。」
RED SPIDER JUNIOR②「かならずしもジャマイカだけが正解じゃない」っていうこと。」
RED SPIDER JUNIOR③「『どう思う?』って聞いたら『なんでオマエやらへんねん!』て言われて。」
RED SPIDER JUNIOR④「いまは一人なんですが、16歳ではじめたときは10人くらいいたんです。」
RED SPIDER JUNIOR⑤「やっぱり楽しませないとあかんっていうのはありますね。」
今回はJUNIORさんのステージングについて。
その秘密を暴きます。
「興奮しているみたいな感じでわざと台から落ちたりしますよ。」
平野:この前JUNIORのステージを見せてもらったでしょう? はじめてだったんだけど、正直、「いったいあれは、何なんだ?」と思ったわけですよ(笑)。
JUNIOR:(笑)
平野:あれだけの時間、ひとりでしゃべり続けているのに、「朗読」でもなければ「演説」でもない。やっているのは観客との対話なのに、「会話」でもないし「説教」でもない。いったいあのコミュニケーション形式をなんと呼べばいいんだと(笑)。いままで見たことのない景色でした。
JUNIOR:でも嬉しいな。ありがとうございます。
平野:ステージ上のJUNIORを見ながら、頭の中に二つのイメージが湧きあがってきたんです。
JUNIOR:??
平野:ひとつはゴスペルの教会です。黒人の牧師が歌いながら説教しているでしょ? 説教なのに、参列者は笑顔でからだを揺らしながら、嬉しそうにノっている。
JUNIOR:はい。
平野:もうひとつは、こどもの頃に見た啖呵売。バナナの叩き売りとか、ガマの油売りとか…。
JUNIOR:はいはい(笑)。
平野: だからJUNIORを見ていてね、この男は「聖職者」であり「詐欺師」だ、と思ったわけです。
JUNIOR:(爆笑)
平野:しかもね、やり口が巧妙なんですよ(笑)。あれだけワーっと盛り上げたと思ったら、とつぜんクールダウンさせたり・・・、あるいはみんなに語りかけていたかと思ったら、突然ひとりに話しかけたり・・・
JUNIOR:はい。
平野:それを見ていて、すごく興味を惹かれた。どういう仕掛けになっているんだろうってね。
JUNIOR:仕掛け、ですか?(笑)
平野:すべてはJUNIORの直感と反射神経だけで走っているようにも見えるし、逆に、綿密なシナリオが組み立てられているようにも見える。言い換えれば、ステージ上のJUNIORの頭の中は空っぽでなにも考えてないようにも見えるし、ぎっしり詰まったプログラムをクールに遂行しているようにも見える。きっとそのどちらかなんだろうけど、どっちなのか、ぜんぜんわからなかったんですよ。だからね、ステージを見ながら、ぼくはそれをずっと考えていたわけです。
JUNIOR:(笑) じつはね、めっちゃ考えてます。
平野:ああ、そうか。そっちだったか(笑)。
JUNIOR:考えているところはあまり見せないですけどね。マネージャーには見られてもいいけど、お客さんにはノリだけが伝わってほしいから。
平野:うん。
JUNIOR:作曲家が悩んでいるところなんて、見たくないじゃないですか。
平野:たしかに。
JUNIOR:MCのネタもけっこう考えているし、選曲もある程度決めています。もちろん、その場で変えることも頻繁に起こりますけど。
平野:現場で簡単に変更できるんですか?
JUNIOR:ごっそり変えることはできませんけど、ある程度なら流れは変えられるし、じっさい変えてます。 Aの流れで進んでいたとして、お客さんのノリを見ながら、このままだとスベるなとか、尻すぼみになりそうだと感じたら、Bの流れに変えるんです。
平野:へえ。
JUNIOR: あとはMCの感じで・・・オレはパッと下ネタを言ったりするんですけど、下ネタを受け付けない人もいる。そういうときは「Cに変えなきゃあかん!」とか…。ABCDEくらいまでは考えていますね。
平野:なるほどなぁ。
JUNIOR:MCはどんな構成でもハマるように考えてます。
平野:こういうことを言うと営業妨害になっちゃうのかもしれないけど…(笑)、なにも考えずに勢いでワ―っとやっているように見えて、じつはウラでキチッと緻密に戦略を組み立てている。現場に熱く反応しているように見せて、「あ、そろそろこっちへ行ったほうがいいな」と冷静に判断している。
JUNIOR:そうですね。めちゃくちゃ冷静ですよ。
平野:だとしたら、相当うまいってことですよ。じっさいぼくだって、もしかしたらそうかもしれないと思いつつも、「おそらくなにも考えていないだろう。すべては身体的な反射行動なのだ」って思ったからね。
JUNIOR:(笑)。
平野:そんなふうにミステリアスに見せることができるっていうのは最上級ですよ、演技者として。
JUNIOR:興奮しているみたいな感じでわざと台から落ちたりしますよ。
平野:(爆笑) それは技術と戦略に基づくプログラムだから、とても知的なアクションですよ。経験や試行錯誤でだんだん出来あがっていくものだろうし。
JUNIOR:そうですね。
平野:どんどんうまくなっていくでしょう?
JUNIOR:昔よりは流れを読めるようになったと思いますね。余裕が出てきたというか…。昔は「もし詰まったらどうしよう?」みたいに心配したけど、いまは「このパターンにすればいいか」と切り替えられるようになってますし。
平野:でもやっぱり計算できないこともあるでしょうね。
JUNIOR:ありますね。
平野:たとえば盛り上がると思ったら「あれ?」ってなったり。
JUNIOR:あー、それはないかもしれないですね。
平野:さすがだ(笑)。
JUNIOR:ただ計算外でたまに起こるのは、オレはお客さんを直接いじるんですけど、そのお客さんがめっちゃ怒るとか・・・
平野:相手のことがわからないわけだから、それはしょうがないよね。
JUNIOR:いきなり「おい!」みたいなことは言わないですよ。はじめてから10分20分くらいそのお客さんのノリを見て・・・
平野:そうか。JUNIORが見て選んでいるのにもかかわらず・・・
JUNIOR:まったくリアクションしてくれないとか・・・
平野:(笑)
JUNIOR:いじってみたらほんまに危ないヤツだったとか・・・
平野:ああ、そういうこともあるのか。
JUNIOR:あれ? みたいな。
平野:それはトレーニングでどうなるものじゃないからね。事故みたいなものだから。
JUNIOR:そうですね。たまにそういう事故が起こるわけです。あとやっぱりやんちゃなヤツとかも多くて。夜中のイベントとかでいきなり暴れだすヤツとかね・・・
平野:それはやんちゃっていうこともあるだろうけど、JUNIORにいじってもらって嬉しいんじゃないの? アドレナリンがドバドバ出て。「来たー!」って(笑)。
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次回はJUNIORさんがステージで発する言葉について。

RED SPIDER
セレクター・MCをJUNIOR (ジュニア)が務める本人のみからなるキャリア20年の大阪のレゲエ・サウンドである。
現在までに数々の作品をプロデュースすると同時に、強烈なMC、オリジナリティ溢れるダブプレート、サウンドシステムを駆使したダンスを年間100本近くも展開する。
毒舌キャラが先行イメージのRED SPIDERだが音楽を生業とする者として作品作りに対する熱い情熱とあの毒舌MCの裏側にあるレゲエへの異常とも言える愛情は徐々にだが日本中に伝わりつつある。
2016年9月25日には「緊急事態」が大阪舞洲で開催され16,000人の動員であった。
2017年春から再び47都道府県ツアーを敢行、そのファイナル公演を11月27日(月)日本武道館で行う。

47都道府県TOUR FINAL in 日本武道館
2017年11月27日(月)
東京 / 日本武道館
(東京都千代田区北の丸公園2-3)
開場 17:45 / 開演 19:00(21:00終演予定)
スタンド指定席 5000円(税込)
ローソンチケット 0570-084-003(Lコード:77400)
http://l-tike.com/search/?keyword=77400
チケットぴあ 0570-02-9999(Pコード:333-199)
http://ticket-search.pia.jp/pia/search_all.do?kw=333-199
e+(イープラス) http://eplus.jp
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H.I.P. 03-3475-9999
■RED SPIDERオフィシャルサイト
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