Digs

Toshiko's Essay㉚Drawing discovery "gentle eyes, dignity"

敏子のエッセイ㉚ 素描発見「優しい眼ざし、品格」

理事長記念館-10

新聞にも沢山出ているし、テレビでも放送されたからご存知の方が多いと思うが、岡本太郎が戦争中に中国で描いていた素描が8年ぶりに発見された。

先日「開運なんでも鑑定団」という番組の人が「見て貰いたいものがある」と言ってやってきた。ここにはよく岡本太郎作と称するものが持ち込まれるが、ほとんどは落第。

今度のは中国の戦線で岡本太郎が描いたスケッチ。コピーを持って来て「どうですか?」と言う。「若い兵士が疲れてごろりと横になった、傍らに無雑作にくしゃくしゃの軍帽が放り出されて静かな寝息が聞こえそうな写実的なデッサンだ。透明感があって、兵士に注がれる優しい眼ざしに品格がある。いい絵だ。

ところで私は戦後、昭和23年から秘書として傍らにいて、絵を描くところも、発想のはじまりから知っているが、こういう写実的なデッサンをするところは一度も見たことがない。抽象的なデッサンは何枚も、何十枚も描いていたが、こういうのは1枚もだ。だからこれを見た時も、果たして岡本太郎のものかどうか判らなかった。が絵の右脇に漢字で「昭和二十年三月十日於祁陽」と書いてある。

これは紛れもなく岡本太郎の字。ならばこの絵も。そう思って見ると、線の走り、形の的確さ、巧いが、巧いだけではない情感、品位。確かに岡本太郎だ。「間違いありませんね。この字は彼の字ですし」

新規ドキュメント 2018-03-28_7
番組収録の日、私もスタジオで、この絵を所蔵しておられた植木金矢さんにお目にかかった。この方は岡本太郎とは隣の中隊で直接話しあったことはなかったが、御自身も画家なので、太郎がいることを知っていたし、気にかかっていた。終戦後、収容所に1年近く、やっと帰れることになった時、私物の整理をしていた太郎さんがスケッチブックに描きためていた絵をまわりの兵隊さんに1枚ずつくれたのだそうだ。植木さんは貰えなかったが、上官が手に入れてきて「お前、絵描きだからこんなのほしいか」。

植木さんは「私は抽象は解らないんですよ。だから後の岡本さんのような、ああいう絵だったら貰ったかどうか。でもこの絵は一眼見て、ああいい絵だなあ、と思って飛びついて頂きました。もう1枚、風景画もあったんですよ。これもいい絵だったんですが」

鑑定士の皆さんは「うまいねえ」「いい絵だな」と感嘆することしきり。100万円の高値がついた。

収録後、私は「よく持って帰って下さいました」と植木さんを拝んでしまった。すると彼は「そんなに喜んで下さるなら、差し上げましょう」とあっさりその場で私に下さった。驚いた。早速修復に出して脱酸処理もすまし、放送の終わった4月25日から記念館に展示した。

丁度、みすず書房から岡本太郎の自伝風エッセー「疾走する自画像」が出た。”わが二等兵物語””落雀の暑”など痛切にしてユーモラスな情感あふれる文が並ぶ。どんな背景の中でこの絵が描かれたか、併せ見ると胸に迫るものがある。

Articles

Special Feature

Channel Taro TV

Read More
:: March 21, 2017

《門扉》制作風景

Read More
:: November 30, 2016

《樹人》制作風景!

Read More
:: August 3, 2016

《五大陸》制作