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Okamoto Taro Column ④ "Manager"

岡本太郎コラム④東風西風「経営者」

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どういう風の吹きまわしか経営者ばかりを集めたセミナーに話をたのまれた。
私の前の発言は、日本が数年後には個人所得の水準でもヨーロッパをこえ、世界二位になることは間違いない、やがてアメリカをおさえ、しのぐという勢いのよいものだった。

まことに結構。
だがそういう話を聞くたびに、私にはいつでも、ふと、それが一体われわれの運命を本当に変えて行くのかという、いささか絶望的な反問が心に浮かぶのだ。

私の番になった。
壇上からあらためて聴衆を見わたし異様な気分にとらわれた。
……見るからに経営者。
ビジネス、利潤追求だけに専念している、その外の人生はゴルフかマージャンだけというような。
みんな同じ顔、同じ目つきで、ネクタイを締めて、ゾロッとすわっている。
禿(は)げた人、四角い顔、眼鏡(めがね)、それぞれ違うのだが同質に見える。
ふと、何か異種の動物の前に立たされているような気持ちになった。

私は率直にその感想を話した。
経済がどんなに成長しても、逆に人間喪失のむなしさはとり返しがつかないのではないか。
ここからお見受けすると、皆さん、一目見て、いかにも経営者、商売人だ。
それ以外の何ものでもないというところに、人間の全体像を失っている現代文明、そしてこれからの運命が象徴されている。
その傾向はますます増大して行くだろう。
どんなに富裕になっても、人間像のふくらみがなかったら。
……俗にいわれるエコノミック・アニマルであるにすぎない。

明治百年はひたすら西欧に追いつくことを急いで、一応成功した。
だがその成果の裏には大きな落としものがある。
私にはそれがこういう形で、つきつけられているように思える。
あなた方、一人一人が、独自な人間像の魅力を強烈に放射するような時、その時こそ経済生活も人間本来の誇らしさを回復するのではないか……。

もちろん、これは経営者だけのことではない。
この社会のメカニズム、近代主義のなかで踊っている、政治家しかり、芸術家しかり。

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