作家、クリエーターとして、 あらゆるジャンルに渡る幅広い表現活動を行っている いとうせいこうさんとの対談です。

〈前回までは〉
いとうせいこう①「まだここに太郎さんがいるんじゃないかって思っちゃいますね。」
いとうせいこう②「ぼくは仮面が大好きで、民博に見に行きましたよ。」

今回からいよいよ対談へ。
まずはいとうせいこうさんと岡本太郎の接点について伺います。

「いちばん最初にやったのは・・・たぶんぼくでしょう。」

平野:ところで、いとうさんと太郎って、接点というか関係というか・・・そういうようなもの、なにかあります?

いとう:ぼくが大学に入ってすぐに、ピン芸って言って、ものまね芸みたいなのをやっていたんですね。マイク1本で。

平野:え、いとうさんご自身が?

いとう:そうです。そういうことをずっとやっていて、それでいろんな人と知り合って、こういう仕事になったんですけど・・・

平野:へぇ。

いとう:で、早い段階に、他の人がやるよりも前に岡本太郎の真似をしていたんです。

平野:ほんとに?(笑) それって、もしかして松尾貴史さんより早い?

いとう:そうですね。しかもタモリさんの影響で思想ものまねみたいな、いかにも岡本太郎さんが言いそうなことを言うってのをやっていて。

平野:あ、そうですか(笑)。知らなかったなぁ。それ、見たいなあ。

いとう:当時のことを知っているのは、大学の同級生だった音楽評論家、プロデューサーの宮永正隆くらいしかいないんですけどね。

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平野:いとうさんから太郎って、どんな風に見えていたんですか?

いとう:70年代の終わりくらいから、岡本太郎さんはよくテレビに出てましたよね? それがやっぱりすごくおもしろかったんですよ。いっぽうでは、シュルレアリスムが好きだったので、《傷ましき腕》などの作品も好きだったんですけどね。

早見挿図2太郎傷ましき腕S
いとう:おもしろいことに、それから10年ぐらいたって、母のアルバムを見せてもらったことがあって。アルバムをひらいたら《傷ましき腕》と、東郷青児と岡本太郎の絵はがきがでてきたんですよ。

平野:うん。

いとう:まさか母まで岡本太郎が好きだったのか!って。もう90近いおばあさんですから、当時どれだけ岡本太郎がハイカラだったのか、ということもわかったんですよね。

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平野:それこそ70年代終わりから80年代っていうと、まさに太郎がいろんなバラエティーでいじられはじめた頃ですよね。それを間近に見ていたいとうさんにとって、岡本太郎って、「キャラが立った芸人」みたいに見えていたんですか?

いとう:いやいや。あの迫力を見たら、そんな風には到底思えませんよ。だって怒ってるんだもん。

平野:(爆笑)

いとう:めちゃくちゃ怒ってるんですよ。しかも言っていることは筋がとおってる。

平野:太郎って「ウケをねらっておかしなことを言う人」と誤解している人が多いけど、逆ですよ。言ってることは至極まっとうだし、いっさいブレない。「ほんとうのこと」をオブラートに包まずそのまま喋ってるだけです。

いとう:ほんとにそうですよね。本人にとっては「あたりまえのこと」を言ってるだけで。そもそも「世の中の常識を壊すんだ!」っていうのだって、アーティストとしてとうぜんのことですからね。

平野:そう、そう。

いとう:当時のぼくは、「あの人だけがまともで、まともじゃないのは周りの方だ」っていう気持ちがあったように思います。だから「なにを見ても岡本太郎的に言う」なんてものまねをずっとやっていたんです。

平野:ああ、いい話だな(笑)

いとう:でも、そうこうしているうちに他の人もやるようになったので、ぼくはやらなくなっちゃいましたけど。

平野:いとうさんは太郎ものまねの開発者なんだ(笑)。

いとう:いちばん最初にやったのは・・・たぶんぼくでしょう。

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平野:いまの話を聞くと、底流にあるのは太郎に対する・・・

いとう:オマージュです。

平野:そうですよね。ある種の共感がないと芸としても成立しないですもんね。

いとう:とうぜん共感でやっているわけです。「岡本太郎ならこう考えるぞ」っていうね。「根源を見据えろ!」「原始のマグマが燃えたぎっている!」みたいなことを言ってるうちに、自分が燃えたぎってくるんですよ。

平野:(爆笑)

いとう:たぶん太郎さん自身もそうだったんじゃないかな。

平野:ああ、なるほど。

いとう:やっぱり芸術家って、己れをヒートアップさせるスイッチを持っていないといけないんだなって。そんなことを感じていた気がします。



次回は、
太郎がバラエティ番組に出続けた理由とは?

いとうせいこう④「大衆はそういう太郎さんを『おもしろい!』って思ったわけです。」



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いとうせいこう
作家・クリエイター
1961年、東京都生まれ。編集者を経て、作家、クリエイターとして、活字・映像・音楽・舞台など、多方面で活躍。
著書に『ノーライフキング』『見仏記』(みうらじゅんと共著)『ボタニカル・ライフ』(第15回講談社エッセイ賞受賞)など。
『想像ラジオ』『鼻に挟み撃ち』で芥川賞候補に(前者は第35回野間文芸新人賞受賞)。テレビでは「白昼夢」(フジテレビ)「オトナに!」(TOKYO MX)などにレギュラー出演中。
浅草、上野を拠点に「したまちコメディ映画祭in台東」では総合プロデューサーを務めている。