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Seiko ito Talk ④ Spirit of " Let's go then "

いとうせいこう対談④「”ほないこか”の精神」

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作家、クリエーターとして、 あらゆるジャンルに渡る幅広い表現活動を行っている いとうせいこうさんとの対談です。

〈前回までは〉
いとうせいこう①「まだここに太郎さんがいるんじゃないかって思っちゃいますね。」
いとうせいこう②「ぼくは仮面が大好きで、民博に見に行きましたよ。」
いとうせいこう③「いちばん最初にやったのは・・・たぶんぼくでしょう。」

今回は太郎さんがバラエティ番組に出続けた理由をいとうさんと考えます。

「大衆はそういう太郎さんを『おもしろい!』って思ったわけです。」

平野:いとうさんはテレビの世界をよくご存知なのでぜひ聞いてみたいんですけど、あの時代、太郎はなぜバラエティ番組に出続けたんだと思われます? あんなことをしたら損するだけってことくらいわかっていたはずでしょ? 田舎から出てきたばかりの小娘ってわけじゃないんだから。「テレビの人に騙されたんです」って話じゃないですからね。

いとう:(笑)

平野:じっさい敏子も周りからずいぶん言われたらしいんですよ。「なんであんなことをさせるんだ」って。ぼくだって「なんてバカなことをしてるんだ」と思ってましたからね。

いとう:そうですか(笑)。

平野:まあもちろん、人によっていろんな解釈があり得るとは思うけど。

いとう:そうですね。

平野:ただ少なくとも、損得だけでいえば、あれをやって得したことはなにもない。せっかく太陽の塔で成功したのに、あれで一気にパブリックイメージが変質し、「芸人」と見られるようになってしまった。

いとう:そこですよね。芸術家だから、ほんとうはお高くとまっていればよかったんです。だけど、おそらく「聞かれたら、答える」っていうサービス精神がまずあったんじゃないかと思いますね。

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いとう:太郎さんって評論家のことは嫌いだったでしょ?

平野:はい。

いとう:だから直接自分が語りかけるしかない、と考えていたんじゃないかな。

平野:ああ、なるほど。そう考えると、たしかに太郎は普通のアーティストと決定的に違うところがある。それは対話する相手が画商じゃなかったということです。

いとう:絵を売らなかったんですものね。

平野:ふつう芸術家って、つきあうのは画商、ギャラリー、美術館です。

いとう:そうですね。

平野:でも太郎はそうじゃなかった。その代わりに、大衆社会と直接コンタクトしたんです。パブリックアートをいっぱいつくったり、「顔のグラス」ようなプロダクト製品をつくったり。

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いとう:衝撃でしたよ、「顔のグラス」。

平野:でしょう?

いとう:親に頭を下げて買ってもらいましたもん。

平野:(笑)あれだって、周りからは「ただでバラまくオマケなんかつくったら、自分はその程度の作家ですと宣言するようなものじゃないか。バカなことはやめなさい」と諭された。でも太郎は「タダのどこが悪いんだ!」って言うわけです。「タダだからだれでも手に入る。それで一杯やって嬉しくなる。それのどこが悪いんだ!」って。

いとう:直接大衆に働きかけたいと思っていたんですね。

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平野:いとうさんの話を聞くと、大衆と直接コミュニケートできるテレビというメディアに出ていくのは必然だったんだ、という気がしてきた。ただそれにしても、もうちょっとうまいやりかたがあったんじゃないかと思うなあ。

いとう:(笑)うまく立ち回れない人だったんですよ。そのへんのかわいらしさは、こどもながらにちゃんと感じてましたよ。

平野:ああ(笑)。

いとう:だって本気で怒っちゃうんだから。

平野:(笑)

いとう:大衆はそういう太郎さんを「おもしろい!」って思ったわけです。

平野:たしかに太郎には嘘がないですからね。思ったことをしゃべっただけで。たとえばディレクターに「こういう話をしてください」と言われても、言うことを聞かなかったらしいし・・・。

いとう:そうでしょう(笑)。

平野:CMなんかでも、台本に書いてあるセリフなんて、口が避けても言わなかったらしいんですよ。

いとう:ああ、そうなんだ(笑)。

平野:自分がいま思っていることしか言わない。だから「顔は瞬間瞬間の発見だ。どんなものにも顔がある。グラスの底に顔があったっていいじゃないか」って、あれも自分のセリフらしいです。アドリブです。

いとう:素晴らしいですね。

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平野:正直ではあった。でも、そうした太郎の思想は、大衆にはいっさい伝わっていない。

いとう:(笑)

平野:けっきょく笑われただけだった、ってことがあるでしょう? その意味では失敗だったと言うほかない。

いとう:でもなにか言いようのない思いは感じましたよ。やっぱり普通の人とは違うっていう・・・ただそれを言葉にはできなかったけれど。きっと大衆も太郎さんも言葉にするのが上手ではなかったんですね。

平野:(笑)

いとう:でものちにあれだけ太郎ファンができて、いまもぼくたちより若いファンがいっぱいいるわけじゃないですか。けっきょく残っているのは岡本太郎じゃないですか。それこそDNAレベルで叩きこまれちゃったっていうか。

平野:長い目で見たら、あながち失敗でもなかったということなのかな?

いとう:そう、そう。ぜんぜん失敗じゃないですよ。まあ成功だったかどうかはわからないけれど・・・(笑)

平野:(爆笑)

いとう:でも失敗ではなかったと思いますよ。もうひとつ大切なのは、太郎さんはきちんと作品を残したということ。世の中には作品がないアーティストっていうのもけっこういるでしょう? 奇抜なかっこうをしたりして、タレントとしてやっていたけど、じつは作品がないっていう。そういう人じゃないですからね、太郎さんは。作品をドンドン生んでいたんですから。

平野:たしかに。

いとう:けっきょくなにを見るかっていうとやっぱり作品を見るわけです。それが裏打ちしてくれるから。奇矯な行動はあったかもしれないけど、それと同時にあれだけ衝撃的で常識破りの作品が残っている。それだけでやっぱり岡本太郎さんのすごさって、きちんと伝わっていると思いますよ。



次回は、
岡本太郎の発想と行動について。

いとうせいこう⑤「絵を描く人でコピーがうまい人ってなかなかいないですよ。」

 

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いとうせいこう
作家・クリエイター
1961年、東京都生まれ。編集者を経て、作家、クリエイターとして、活字・映像・音楽・舞台など、多方面で活躍。
著書に『ノーライフキング』『見仏記』(みうらじゅんと共著)『ボタニカル・ライフ』(第15回講談社エッセイ賞受賞)など。
『想像ラジオ』『鼻に挟み撃ち』で芥川賞候補に(前者は第35回野間文芸新人賞受賞)。テレビでは「白昼夢」(フジテレビ)「オトナに!」(TOKYO MX)などにレギュラー出演中。
浅草、上野を拠点に「したまちコメディ映画祭in台東」では総合プロデューサーを務めている。

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