作家、クリエーターとして、 あらゆるジャンルに渡る幅広い表現活動を行っている いとうせいこうさんとの対談です。

〈前回までは〉
いとうせいこう①「まだここに太郎さんがいるんじゃないかって思っちゃいますね。」
いとうせいこう②「ぼくは仮面が大好きで、民博に見に行きましたよ。」
いとうせいこう③「いちばん最初にやったのは・・・たぶんぼくでしょう。」
いとうせいこう④「大衆はそういう太郎さんを『おもしろい!』って思ったわけです。」
いとうせいこう⑤「絵を描く人でコピーがうまい人ってなかなかいないですよ。」

今回は太郎があのときの若さでいま生きていたとしたら、
いとうさんはどのように太郎と関係するのかをお伺いしました。

「文学で言うと、ウィリアム・バロウズっておじいさんがニューヨークにいて、」

平野:もし太郎があのときの若さでいま生きていたら、いとうさんはどうやって使いますか?

いとう:いやいやいや(笑)。

平野:(笑)

いとう:文学で言うと、ウィリアム・バロウズっておじいさんがニューヨークにいて、文学的にはかなりデタラメなことをやっている人なんですけどね。それで一時期、バロウズに憧れた人たちが会いに行くんだけど、彼は薬物中毒だから言ってることがほとんどわからない。でも「なんか、スゲェ!」って帰ってくるわけですよ。オーラをもらう、みたいな・・・

平野:(笑)

いとう:太郎さんもそういうことなんじゃないですかね、やっぱり。元気を与えてくれそうですし。

平野:テレビで使います?

いとう:それは・・・あまりにひどい使い方をするから、やめといたほうがいいかな(笑)。プールに落とされたりとかいろいろされると思いますよ。

平野:やっぱり?(笑)

いとう:されると思います。でも、ぜんぜん平気かもしれないですけどね。それでこっちが根負けしちゃう。

平野:そうですね(笑)。

いとう:落とされても、怒るっていうよりは、水のことをしゃべり出すみたいな。「あの人、やっぱりスゲェな」っていわれるような。まあいわゆる超人ですよね。

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平野:アメトークで使えるかな?

いとう:使えます、使えます。「太郎芸人」。自分が出てきちゃうみたいな。

平野:(爆笑)

いとう:ぜんぜん平気なんでしょうね。なぜかっていうと、さっきも言ったように作品があるから。けっこうな歳になっても、いくらでもつくっていたでしょう?

平野:はい。

いとう:で、その作品について話したいからテレビに出ちゃう。

平野:どんな時代にあっても変わらないってことですね。

いとう:おそらくそれが最初からのスタンスであり、ずっと変わらなかったんじゃないですかね。自分のつくる作品に自信もあったでしょうし。あと才能的に先に行く人って、そのことに対する不安もあるから・・・

平野:わかります。

いとう:はたして受け手はわかってくれているのか・・・。「わかってる?」って説明したくなる気持ちはすごくよくわかります。つまり基本的に素直だということです。

平野:なるほど。

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いとう:芸術家って「じつはわかってもらえてないんじゃないか」っていう不安を隠して、お高くとまって過ごすわけじゃないですか。文学者もそうですけど。でも太郎さんはそれをやらないわけです。素直に言っちゃう。

平野:「わかってる?」ってね(笑)。

いとう:「ふつふつとたぎる生命のエネルギーだ!」とかって言いながら、チラチラ見てるわけです。受けてるかどうかを。

平野:(爆笑)

いとう:受けてるかどうかをすごく気にする人だったと思うんですよね。じっさい当時はかなり受けていましたしね。

平野:ってことは、あの時代にテレビで笑われていたけど、本人はけっこう嬉しかったってことかもしれないですね。

いとう:嬉しかったんじゃないですか?

平野:「ああ、オレ、受けてる!」って。

いとう:だってそれまでまったく知らなかった人が道で話しかけてきてくれるようになったわけでしょう? 普通の芸術家はそれがないですからね。

平野:そうか。じゃあ、あながち失敗でもないんだな。

いとう:失敗じゃないですよ。少なくとも本人は喜んでいたんでしょ?

平野:だと思います。

いとう:むしろ「だったらオレにこういうことをやらせろ!」とか、ぜんぜん平気で言ってたと思いますよ。

平野:いとうさんの太郎話、超おもしろいな。

いとう:いや、好きではいましたけど、ぼく太郎研究家でもなんでもないんで(笑)。

平野:ほんとにおもしろい。でも他のこともいろいろお聞きしたくて・・・ジレンマです(笑)。



次回は、
いとうせいこうさんのクリエイティブの本日についてお伺いします。

いとうせいこう⑦「ぼくの知り合いにもせっかちな人がいて、「ほないこか」っていうのが口癖なんですよ。」

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いとうせいこう
作家・クリエイター
1961年、東京都生まれ。編集者を経て、作家、クリエイターとして、活字・映像・音楽・舞台など、多方面で活躍。著書に『ノーライフキング』『見仏記』(みうらじゅんと共著)『ボタニカル・ライフ』(第15回講談社エッセイ賞受賞)など。『想像ラジオ』『鼻に挟み撃ち』で芥川賞候補に(前者は第35回野間文芸新人賞受賞)。テレビでは「白昼夢」(フジテレビ)「オトナに!」(TOKYO MX)などにレギュラー出演中。浅草、上野を拠点に「したまちコメディ映画祭in台東」では総合プロデューサーを務めている。