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Seiko ito Talk ⑦ Spirit of " Let's go then "

いとうせいこう対談⑦「”ほないこか”の精神」

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作家、クリエーターとして、 あらゆるジャンルに渡る幅広い表現活動を行っている いとうせいこうさんとの対談です。

〈前回までは〉
いとうせいこう①「まだここに太郎さんがいるんじゃないかって思っちゃいますね。」
いとうせいこう②「ぼくは仮面が大好きで、民博に見に行きましたよ。」
いとうせいこう③「いちばん最初にやったのは・・・たぶんぼくでしょう。」
いとうせいこう④「大衆はそういう太郎さんを『おもしろい!』って思ったわけです。」
いとうせいこう⑤「絵を描く人でコピーがうまい人ってなかなかいないですよ。」
いとうせいこう⑥「文学で言うと、ウィリアム・バロウズっておじいさんがニューヨークにいて、」

今回はいとうせいさんのクリエイティブの本質についてお伺いします。

「ぼくの知り合いにもせっかちな人がいて、「ほないこか」っていうのが口癖なんですよ。」

平野:PLAY TAROを見てくれている若者たちの多くは、クリエイティブでありたい、クリエイティブな生き方をしたいと考えている人たちです。

いとう:はい。

平野:なので、ここからは、いとうさんのクリエイティブについてお伺いしようと思います。まずはぼくが気になる太郎との共通点から。それは対極な世界、対極的な概念のあいだを自在に行き来しているところです。

いとう:そういう思考が大好きだっていうのはありますね。

平野:右脳的なものと左脳的なもの、直感とロジック、プレイヤーとプロデューサー、奏者と指揮者、ひとりでつくるものと集団でつくるもの・・・

いとう:(笑)

平野:そういう対極的な状況を自在に行き来されているでしょう? 太郎もそうだったんですよ。

いとう:たしかに。

平野:きょうお聞きしたかったのは、いとうさんはどうやって新しいものを生み出しているのか、つまりいとうさんの「創造のメカニズム」です。いとうさんは同時多発的にジャンルを超えてさまざまものを生み出されていますが、どうやってそれを実現しているのか、そもそもそれはなぜなのか?・・・

いとう:なるほど。

平野:たとえば「ザ・スライドショー」をやられているじゃないですか。あれはいわゆるスライド上映の延長というより、新しい表現形式の発明だと思うんですが、そういうアクションにはどんなヴィジョン・戦略があるのか。あるいはそんなことはまったく考えていないのに、気がついたら出来ちゃったのか。そういうことも含めて、いとうさんの創造の裏側を是非伺いたいんです。

いとう:基本的には「出来ちゃった」の連続なんですよね。

平野:うん。

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いとう:太郎さんもそうだったんじゃないかと思いますけど、ひとつのことだけやってると飽きちゃうんですよ。

平野:太郎とおなじだ。

いとう:ひとつの作品をつくってるあいだに、別の作品にも手を出したりしませんでした?

平野:まさにそのとおりです。

いとう:そうでしょ? だから描きかけの絵があんなにあるんですよね。

平野:太郎って、ずっと絵を描いていられないんですよ。

いとう:それはもう、画家じゃないですね(笑)。

平野:(笑) アトリエに何枚かのキャンバスを並べて同時に描くんだけど、それでも飽きちゃう。で、絵を放り出すと、階段をあがってここに来て、原稿を書いたり、口述筆記をする。それに飽きると庭に降りて彫刻をやる。飽きたらまたアトリエに戻って絵を描いて・・・と、グルグルグルグル1日中、家の中を回ってるんですよ。

いとう:あー、わかる!! わかるなあ・・・

平野:(爆笑)

いとう:それが原動力になるんですよね。煮詰まったときに、じーっとしていてブレイクスルーできる人たちは偉いかもしれないけど、むしろ狩猟採集民族のように移動したほうが早いんですよ。

平野:はい。

いとう:Aで使っていた頭でBをはじめるとBにも影響し、ABで影響したものがCにも影響して・・・ってものすごくいい循環=好循環が起きるんです。太郎さん、かなりせっかちだったでしょう?

平野:さすが!(笑) わかってますね、そのとおりです。

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いとう:そうすると1日に3つのことが出来ちゃったりするわけです。だから作品の数が多い。その部分はぼくもまったくおなじですね。

平野:太郎・敏子とメシ食いにいったとするでしょう?

いとう:はい。

平野:料理が出てくる。もちろん最初に太郎に食べさせるわけです。まだぼくの分は来ていない。でも太郎は自分が満足すると「さあ、いこうか」って言うんですよ。ぼくはまだなにも食べてないのに。

いとう:わかるー!!

平野:(笑)

いとう:ぼくの知り合いにもせっかちな人がいて、「ほないこか」っていうのが口癖なんですよ。すぐ「ほないこか」って言う。ぼくもおなじでね。

平野:(笑)

いとう:正月に姪っ子が来たんですけど、その子もすごくせっかちで。「自分のせっかちさを治すために、左手で箸を持ってご飯を食べることにした」って言ってました。

平野:(爆笑)

いとう:それでその子の真似をしてぼくも左手で箸を持って豆をつまんだりして。

平野:食事の時間が少しでもみんなに近づくように、ですね。

いとう:でもすぐにイライラして「もうやめた!」って。ものすごいせっかちなんで・・・

平野:そうは見えないけどなあ(笑)。

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いとう:せっかちだから、頭が先にいっちゃう。ヴィジョンのほうが先に来て、それを形づくるためにって作業をしていると、それはもうクリエイトじゃなくなるんです。

平野:なるほど。

いとう:そういうときはそこから逃げたほうがいい。それでまだテーマも決まってない原稿用紙に向かう。

平野:よくわかります。

いとう:クリエイターになりたい若い人もここに来てグルグル回ったらいいじゃないですか。太郎さんと一緒に脳の中を覚醒させて。きっとクリエイティブな気持ちがわかるようになると思いますね。ひとつのことを思いつめることだけがクリエイティブじゃないですから。



次回は、
岡本太郎のバランス感覚についてお伺いします。

いとうせいこう⑧「これ以上やるとつまらないことになるっていうことがもうわかってるんですよね。」

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いとうせいこう
作家・クリエイター
1961年、東京都生まれ。編集者を経て、作家、クリエイターとして、活字・映像・音楽・舞台など、多方面で活躍。著書に『ノーライフキング』『見仏記』(みうらじゅんと共著)『ボタニカル・ライフ』(第15回講談社エッセイ賞受賞)など。『想像ラジオ』『鼻に挟み撃ち』で芥川賞候補に(前者は第35回野間文芸新人賞受賞)。テレビでは「白昼夢」(フジテレビ)「オトナに!」(TOKYO MX)などにレギュラー出演中。浅草、上野を拠点に「したまちコメディ映画祭in台東」では総合プロデューサーを務めている。

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