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Seiko ito Talk ⑩ Spirit of " Let's go then "

いとうせいこう対談⑩ 「”ほないこか”の精神」

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作家、クリエーターとして、 あらゆるジャンルに渡る幅広い表現活動を行っている いとうせいこうさんとの対談です。

〈前回までは〉
いとうせいこう①「まだここに太郎さんがいるんじゃないかって思っちゃいますね。」
いとうせいこう②「ぼくは仮面が大好きで、民博に見に行きましたよ。」
いとうせいこう③「いちばん最初にやったのは・・・たぶんぼくでしょう。」
いとうせいこう④「大衆はそういう太郎さんを『おもしろい!』って思ったわけです。」
いとうせいこう⑤「絵を描く人でコピーがうまい人ってなかなかいないですよ。」
いとうせいこう⑥「文学で言うと、ウィリアム・バロウズっておじいさんがニューヨークにいて、」
いとうせいこう⑦「ぼくの知り合いにもせっかちな人がいて、「ほないこか」っていうのが口癖なんですよ。」
いとうせいこう⑧「これ以上やるとつまらないことになるっていうことがもうわかってるんですよね。」
いとうせいこう⑨「そういった岡本太郎の『聞く能力』ってあんまり強調されてないですよね。」

今回はいとうさんがプロデューサーとして意識することについてお伺いします。

「愛されて育ったこどもが愛することを知っているみたいな、ね。」

平野:小説を書くときは、書斎にこもってひとりで書くんですよね?

いとう:そうです。

平野:いっぽうで、プロジェクトのプロデュースをされるときは山ほど会議をやるわけでしょう?

いとう:はい。

平野:会議ではどんなことを意識されてます?

いとう:会議では基本的に、みんなが発表してくれるものを聞いて、それにちょっと手を加えるだけです。

平野:自由に考え、自由に発言させるってことですね?

いとう:そうです。誰かがやりたいって言ったことを「それはやめたほうがいい」って言うことは基本的にないですね。

平野:やっぱりそうなんだ。

いとう:「やりたいのはわかるけど、おもしろみがちょっと足りないから、そこをつくりたいよね」とか。そういう感じですね。

平野:なるほど。

いとう:人がやりたいことを止めてまで自分のやりたいことをやるほど、自分にヴィジョンがあるわけじゃないし・・・

平野:(笑)

いとう:会議って、その場その場で出来てくるわけじゃないですか。それこそ動いてるわけですよね。その動きをうまく操って動きを大きくしてあげるのが好きなんです。それがぼくのプロデュースのやりかただと思っています。

平野:そのやりかたがおもしろいから?

いとう:おもしろいものもできるし、発言した人間が嬉しそうな顔をするからです(笑)。

平野:わかる!(笑)。

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いとう:黙っていた下っ端の若い子が「じつはこういうことをやりたいんです」って。「すごくいいじゃん。彼の言うこと聞いたほうがいいよ」「それやろうやろう」って言いますよ。それがどんなことかわからなくてもやろうって言いますね(笑)。

平野:いいなあ。その一言で、その子はずっといとうさんから離れないですよ。

いとう:仕事に一生懸命になってくれるのもあるけれど、そうすることでアベレージ以上のものができあがるんです。

平野:いとうさんとはジャンルが違うけど、ぼくもプロデューサーとして仕事をしています。プロデューサーの仕事って、けっきょくは3つしかない。ひとつは思想・コンセプトなど、プロジェクトの輪郭をきっちり描くこと。二つ目は、参画しているメンバーのモチベーションを引きあげること。3つ目は羅針盤として向かうべき方向を照らすこと。とりわけ大切なのは、モチベーションを引きあげることです。

いとう:まさにそうですね。だから太郎システムでいけば、つねに誰かがアイデアを出してくれるし、好循環が起こる。結果として、どうやってこんな作品を生み出したのかっていうことが平気で起こる。

平野:そうですね。

いとう:太郎さんは集団の知を上手に使うこともできた。それって棟梁みたいな感覚だったと思います。

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平野:そんな太郎をプロデュースしていたのが・・・敏子です。

いとう:そうか。

平野:敏子がやったのは、ひたすら喜ぶこと。「まあ、素敵! 次はなにを見せてくださるの?」って。誉めるんじゃなくて、喜ぶんです。

いとう:すごい!

平野:「キャー、すごい! 楽しい!」って。

いとう:(林家ペーパーの)パー子さんじゃないですか(笑)。

平野:おそらく太郎はそれで自信を持てた。「オレは大丈夫だ」って実感できたんだと思います。「これでいいんだ」って。

いとう:そうですね。

平野:敏子がいなかったら、途中で倒れていたかもしれない。

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いとう:とくに太郎さんは周りにおなじことをやる人がいないタイプだから、よけいに不安だったと思いますね。

平野:不安ですよね、やっぱり。

いとう:でもそれがあったから、ひょっとしたらプロジェクトでも人のことを誉めてあげられたのかもしれないですね。「キミ、おもしろいね。いいよ」って。

平野:なるほど。

いとう:愛されて育ったこどもが愛することを知っているみたいな、ね。

平野:はい(笑)。

いとう:「喜ぶ」って、いいな。評価されているときでも、誉められている部分が違うなっていうときは、やっぱり傷つくんですよね。

平野:ああ、なるほど!

いとう:でも喜んでくれていればそれでいい。中身じゃなくて、そこにいてくれることを喜んでくれるなんて、それってすごい全肯定ですもんね。

平野:そうです。

いとう:素晴らしい! それは相手がクリエイターじゃなくても、お互いにやるべきです。「全肯定」するべきですね。



次回はいとうさんの表現の根柢にあるものについて。

いとうせいこう⑪「自分が驚くっていうことがいちばん好きなんですよ。」

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いとうせいこう
作家・クリエイター
1961年、東京都生まれ。編集者を経て、作家、クリエイターとして、活字・映像・音楽・舞台など、多方面で活躍。著書に『ノーライフキング』『見仏記』(みうらじゅんと共著)『ボタニカル・ライフ』(第15回講談社エッセイ賞受賞)など。『想像ラジオ』『鼻に挟み撃ち』で芥川賞候補に(前者は第35回野間文芸新人賞受賞)。テレビでは「白昼夢」(フジテレビ)「オトナに!」(TOKYO MX)などにレギュラー出演中。浅草、上野を拠点に「したまちコメディ映画祭in台東」では総合プロデューサーを務めている。

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