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Seiko ito Talk ⑪ Spirit of " Let's go then "

いとうせいこう対談⑪ 「”ほないこか”の精神」

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作家、クリエーターとして、 あらゆるジャンルに渡る幅広い表現活動を行っている いとうせいこうさんとの対談です。

〈前回までは〉
いとうせいこう①「まだここに太郎さんがいるんじゃないかって思っちゃいますね。」
いとうせいこう②「ぼくは仮面が大好きで、民博に見に行きましたよ。」
いとうせいこう③「いちばん最初にやったのは・・・たぶんぼくでしょう。」
いとうせいこう④「大衆はそういう太郎さんを『おもしろい!』って思ったわけです。」
いとうせいこう⑤「絵を描く人でコピーがうまい人ってなかなかいないですよ。」
いとうせいこう⑥「文学で言うと、ウィリアム・バロウズっておじいさんがニューヨークにいて、」
いとうせいこう⑦「ぼくの知り合いにもせっかちな人がいて、「ほないこか」っていうのが口癖なんですよ。」
いとうせいこう⑧「これ以上やるとつまらないことになるっていうことがもうわかってるんですよね。」
いとうせいこう⑨「そういった岡本太郎の『聞く能力』ってあんまり強調されてないですよね。」
いとうせいこう⑩「愛されて育ったこどもが愛することを知っているみたいな、ね。」

今回はいとうさんの表現の根柢にあるものについて。

「自分が驚くっていうことがいちばん好きなんですよ。」

平野:太郎のほとんどの文章は口述筆記なんです。書いていたのは敏子です。

いとう:敏子さんの手が入っているんですね。

平野:手が入ってるどころか、あれは敏子の文体です。

いとう:(笑)そうなんですね。

平野:戦前の太郎の文章も残っているんですけど、すごく硬くて理屈っぽいんです。それが敏子が秘書になったあたりでガラッと変わった。敏子はもともと編集者ですしね。

いとう:なるほど。

平野:太郎は思いついたことをその場でしゃべるだけ。酔っ払って吐くようなもんです(笑)。

いとう:(笑)

平野:もちろん、言ったことはその場で忘れる。だからいつも敏子が後ろに控えていて、太郎が吐き出したものをぜんぶかき集めてメモにした。その断片がいっぱい溜まるでしょう? それをかき集めてひとつの文脈に編集したんです。

いとう:それは素晴らしい。それがきっと太郎さんにもフィードバックされるわけじゃないですか。

平野:そうですね。

いとう:「書籍を拝読すると、こういうことを言ってらっしゃいますね、岡本先生」なんて言われて、「え?」なんて思いながら「でも書いているってことは言ったに違いない」ってなるから。結果としてそれが岡本太郎の考え方になっていくんでしょうね。

平野:そうだと思います。

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いとう:ぼくにもよくあるんですけど、やっぱりせっかちで動いちゃう人って、覚えてないんですよね。そのとき集中してるだけだから。

平野:なるほど。

いとう:やっぱり多作の人はそうなんだと思います。忘れていかないと多くはつくれない。でも多作の人たちって評価されにくいんですよね。

平野:そうですね。

いとう:ましてあれでしょ? いろんなジャンルに手を出してると・・・日本ではなかなか評価されないじゃないですか。

平野:そうですね。苦節何年、この道何十年っていうスタイルが評価されがちですものね。

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いとう:日本でも戯作者なんていう・・・平賀源内とかそうですけど、文学もやる広告もつくるし・・・みたいなのはあったんですけどね。明治から大正以降じゃないですか日本人が細っちゃったのは。

平野:ああ、そうかもしれない。

いとう:そこへいくと岡本太郎はきちんとダヴィンチイズムをやってますよね。でもなかなか正当には評価されない。

平野:いとうさんもいろんな分野で表現をされていますけど、いちばん根っこの部分になんらかの欲望があるから表現するわけですよね?

いとう:そうですね。

平野:それってなんですか?

いとう:自分が驚くっていうことがいちばん好きなんですよ。「こんなものが出来た!」とか・・・

平野:驚かせたいというより、驚きたい? 自分がつくったもので?

いとう:そうです。「このアイデア、出来るかも!」って書いてみて、出来あがって・・・そうするともう自分のものじゃないんです。人のものみたいに感じる。「これっておもしろいし、ヘンだな。こんなヘンなもの、見たことないな」って。

平野:そういうところも太郎と一緒ですよ。

いとう:そうなんですか!?

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平野:太郎は「作品は完成するまでは100%作家のものだが、社会に送り出したあとはもう作家のものじゃない。みなさんのものなんだ」とよく言ってました。

いとう:なるほど。

平野:だから彼は、自分の作品にまるで執着がないんです。個展をやるときって、どの作品をどんな順番で展示しようかって、普通の作家は必死になって考えるんですけど・・・

いとう:はい。

平野:でも太郎はそんなことには興味がないから、学芸員が展示構成を説明に来ても聞こうともしないんです。

いとう:「好きにやれ」ってことですよね。わかる! それともうひとつはね、面倒なんですよ、考えるのが(笑)。だって順番とかそんなものに思い煩うくらいなら、早く次のことをやりたいわけだから。

平野:そこも一緒です。

いとう:「ほないこか精神」ですから。

平野:(爆笑)

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平野:生前、太郎はほぼすべての作品を川崎市に寄贈したんです。名誉市民になっていた川崎市から「1点でもいいからお譲りいただけないでしょうか」と言われたんですけど、太郎は「オレは作品は売らない主義だ」って追い返す。

いとう:うん。

平野:諦めきれない川崎市は、断られてもまた来るわけです。で、ついに根負けした太郎が・・・

いとう:「わかった。じゃあ、ぜんぶやるよ」って言ったんだ(笑)。

平野:そうです。ぜんぶあげちゃったんですよ! もちろんもらった川崎市もぶっ飛びました。何点か譲ってもらおうと思っていただけなのに、いきなり二千数百点の作品が来ちゃったんだから。

いとう:(爆笑)

平野:それで美術館がつくられることになったんですけどね。

いとう:ぼくはマルセル・デュシャンも大好きなんですけど、フィラデルフィアの大ガラスが、運搬中に割れてしまったときに「よくなった」って言ったっていうんですよ。そういう精神なんでしょうね。執着ないんですよね。



次回は新しい太郎作品の鑑賞方法について。

いとうせいこう⑫「これからは穴の向こう側に入ってこちら側を見るってことも考えてみないと。」

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いとうせいこう
作家・クリエイター
1961年、東京都生まれ。編集者を経て、作家、クリエイターとして、活字・映像・音楽・舞台など、多方面で活躍。著書に『ノーライフキング』『見仏記』(みうらじゅんと共著)『ボタニカル・ライフ』(第15回講談社エッセイ賞受賞)など。『想像ラジオ』『鼻に挟み撃ち』で芥川賞候補に(前者は第35回野間文芸新人賞受賞)。テレビでは「白昼夢」(フジテレビ)「オトナに!」(TOKYO MX)などにレギュラー出演中。浅草、上野を拠点に「したまちコメディ映画祭in台東」では総合プロデューサーを務めている。

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