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Seiko ito Talk ⑫ Spirit of " Let's go then "

いとうせいこう対談⑫ 「”ほないこか”の精神」

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作家、クリエーターとして、 あらゆるジャンルに渡る幅広い表現活動を行っている いとうせいこうさんとの対談です。

〈前回までは〉
いとうせいこう①「まだここに太郎さんがいるんじゃないかって思っちゃいますね。」
いとうせいこう②「ぼくは仮面が大好きで、民博に見に行きましたよ。」
いとうせいこう③「いちばん最初にやったのは・・・たぶんぼくでしょう。」
いとうせいこう④「大衆はそういう太郎さんを『おもしろい!』って思ったわけです。」
いとうせいこう⑤「絵を描く人でコピーがうまい人ってなかなかいないですよ。」
いとうせいこう⑥「文学で言うと、ウィリアム・バロウズっておじいさんがニューヨークにいて、」
いとうせいこう⑦「ぼくの知り合いにもせっかちな人がいて、「ほないこか」っていうのが口癖なんですよ。」
いとうせいこう⑧「これ以上やるとつまらないことになるっていうことがもうわかってるんですよね。」
いとうせいこう⑨「そういった岡本太郎の『聞く能力』ってあんまり強調されてないですよね。」
いとうせいこう⑩「愛されて育ったこどもが愛することを知っているみたいな、ね。」
いとうせいこう⑪「自分が驚くっていうことがいちばん好きなんですよ。」

最終回です。
新しい太郎作品の鑑賞方法について。

「これからは穴の向こう側に入ってこちら側を見るってことも考えてみないと。」

平野:絵描きとしての太郎って、職業分類からいえば「洋画家」でしょう?

いとう:そうですね。

平野:でも一般の洋画家が描く画題をぜんぜん描いてないんです。風景画もなければ人物画もない。静物画もないし裸婦画もない。ていうか、そもそもなにを描いているかわからない。

いとう:(笑)

平野:わからないけど、ひとつだけはっきりしていることがあるんですよ。描いているのがすべて「いのち」だってことです。ぜんぶ「いきもの」なんです。

いとう:なるほど。

平野:すべてに眼があるからです。なんだかわからないけど、眼であることだけはわかる。

いとう:そうか!

平野:仮面とおなじです。

いとう:たしかにそうですね。仮面って、人間を収縮させてシンボライズすると顔になるからだって思っているんですけど、太郎さんはさらに抽象化して、最後は眼になるっていう論理なんですね。

平野:「眼は宇宙と交信する穴だ」って言ってますからね。眼こそいのちなんですよ。

いとう:すごくおもしろいですね。考えたことなかったな。大抵の仮面は眼が穴になってますけど――かぶるものだから当然と言えば当然ですが――穴だから「穴の向こう」があるはずで。

平野:はい。

いとう:岡本太郎の絵を見るときに、こちら側からだけ見ていたんですけど、これからは穴の向こう側に入ってこちら側を見るってことも考えてみないと。

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平野:以前、この記念館で太郎の絵を壁一面に展示したことがあるんですよ。ジグソーパズルみたいにね。そのときはじっさいに眼に囲まれたわけです。

いとう:なるほど。

企画展『太郎のなかの見知らぬ太郎へ』 (2006.10.18-2007.01.21)
企画展『太郎のなかの見知らぬ太郎へ』
(2006.10.18-2007.01.21)


平野:そうなると、もうこっちが絵を見ているというよりは・・・

いとう:むしろ向こうに見られてるっていう感じになるわけですね?

平野:それが気持ち悪いんですよ。

いとう:アトリエでいくつも同時並行で描いていたっていうことですけど、であれば、太郎さんもまた、見られていたっていうことですね。

平野:そうか。たしかにそうだ。

いとう:見られているっていう状態を体験していたわけですね。それは新しい見方だ。

平野:それときょう、どうしてもいとうさんにお聞きしておきたいのは、太郎っていろんなことをやったけど、マーケティングの視点は一切なかったわけですよ。

いとう:ないでしょうね。

平野:そうやっていただけなのに、大衆に受け入れられたわけですね。いとうさんはいろんなことをされているけれど、ほとんどはある種のエンターテインメントでもあるわけじゃないですか。

いとう:はい。

平野:なにかをつくろうとするときに、どうすればヒットするか、みたいなマーケティング的なことを考えるでしょう?

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いとう:いや、考えたことないですね。考えても上手にできないってこともわかってるし。マーケティングでなにかを書くとすれば、おそらく「おもしろい物語」を書くことになるんだろうけど、そこじゃないんですよね、自分の書きたいものが。

平野:ああ、なるほど。

いとう:だからついつい「なにこれ?」って言われるようなものばかり書くことになる。もちろん自分では喜ばようとか良かれと思って書いているんですけどね。

平野:喜んでもらいたいとは思っている。

いとう:そうです。そうやって書いているんですけど、それが売れるかどうかはわからないですね。

平野:だけどいくつものヒット企画を出されてきたわけでしょう?

いとう:スマッシュヒットレベルですよ、ぼくなんかは。それに誉められるのは気を抜いて書いたものだったりするし・・・(笑)

平野:そうなんだ(笑)。

いとう:その率がすごく高い。自分が「これはすごいだろう!」って出すとスルーされたりね(笑)。なんとなく楽しいなって書いたものはやっぱりバイブレーションが合うんですかね。

平野:楽しいっていう、作者が分泌するドーパミンが伝染するのかな?

いとう:そうかもしれない。売れるんですよね、そういうときは。もちろんそうじゃない場合もありますけれど、でも概ねエッセイとかはそういうことが多いですね。

平野:なるほど。

いとう:きっと太郎さんも自分が楽しく描いたものが共鳴され共振するということが本能的にわかっていたんじゃないですかね。

平野:そうですね。

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いとう:絵を売らなかったっていうのも、パブリックアートをたくさんつくたっていうのも、けっきょくは多くの人に共通するものを打ち出したいってことじゃないですか。共通しているのは、作品を見る人が全員生きているってことでしょう?

平野:はい。

いとう:だから太郎さんがいのちを描いたっていうのは理の当然で。ものすごく論理が太いわけですよ。やはり普通の作家とは違うことを考えていますよね。

平野:いとうさんと話していると、太郎がものすごい人のように思えてくる(笑)。

いとう:(笑) 他の芸術家は自分を出そう出そうとするものだけど、彼はそれをしなかった。反対に見てくれる人にとってどういう気持ちになるかってことだけを考えていた。そしてそれを突きつめていくと眼になる・・・っていうか穴になる。すごくおもしろいです。きょうは勉強になりました。

平野:いやこちらこそメチャクチャ楽しかったです。もう時間か・・・。ぜんぜん時間が足りないな。聞きたいことの半分も聞けなかったので、また今度、続きをお願いします!

いとう:こちらこそ。好きな人の話が聞けてよかった。ありがとうございました!・・・いや、これはすごいわ。太郎さん、すごすぎる。



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いとうせいこう
作家・クリエイター
1961年、東京都生まれ。編集者を経て、作家、クリエイターとして、活字・映像・音楽・舞台など、多方面で活躍。著書に『ノーライフキング』『見仏記』(みうらじゅんと共著)『ボタニカル・ライフ』(第15回講談社エッセイ賞受賞)など。『想像ラジオ』『鼻に挟み撃ち』で芥川賞候補に(前者は第35回野間文芸新人賞受賞)。テレビでは「白昼夢」(フジテレビ)「オトナに!」(TOKYO MX)などにレギュラー出演中。浅草、上野を拠点に「したまちコメディ映画祭in台東」では総合プロデューサーを務めている。

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