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藤本壮介対談①「グルーヴする建築」

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数多くの賞を受賞し世界的にも注目されている建築家 藤本壮介さんとの対談です。
第一回目は記念館の展示をご覧いただきました。



「ローコストなのに、けっこうアクロバティックなこともやってるし。」

平野:今日は世界を飛び回って活躍する建築家の藤本壮介さんをお招きしました。日本の建築家は世界からひっぱりだこで、日本文化の数少ない〝輸出資源〟のひとつですが、藤本さんはその代表格。今日はそんな藤本さんの創造の秘密に少しでも迫りたいと思っています。なにしろぼく自身が大ファンですから(笑)。

藤本:ありがとうございます(笑)。よろしくお願いします。

平野:藤本さんにはいろいろとお世話になっているんだけど、最初はたしか「太陽の塔に対峙せよ」という企画展のときでしたよね?

藤本:そうですね。審査員をやらせてもらったんですが、一般の建築コンペとも美術コンペともちがっていて、とてもおもしろかった。参加者に熱量があって。相手が太郎さんだからでしょうね、やっぱり。

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Serpentine Gallery Pavilion 2013 – (c) IWAN BAAN
サーペンタインはロンドンでも注目の集まるギャラリー。このパビリオンは世界的に関心の高い建築プロジェクトで、その第13回に選ばれたのが藤本壮介さんのこのデザイン。


平野:アドレナリンやドーパミンが分泌されるんじゃないですかね(笑)。でも藤本さんだって、《太陽の鐘》を考えているときはそうだったでしょ?

藤本:そうでした(笑)。

Serpentine Gallery Pavilion 2013 - (c) IWAN BAAN
Serpentine Gallery Pavilion 2013 – (c) IWAN BAAN


平野:《太陽の鐘》についてお聞きする前に、いまやっている展示をざっとご案内しますね。まずはアトリエとサロンに行きましょう。

藤本:ぜひ!

Serpentine Gallery Pavilion 2013 - (c) IWAN BAAN
Serpentine Gallery Pavilion 2013 – (c) IWAN BAAN


平野:この建物ができたのは、60年以上前の1954年。設計者は太郎のパリ時代の盟友で、コルビュジエに師事した坂倉準三です。

藤本:ここはいつ来てもおもしろいですね。

平野:当時の太郎は金がなかったから、これ以上はムリ!っていうくらいのローコスト建築です。壁なんかブロックを積んだだけだし。

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藤本:でも、逆にそこがカッコいいですよね。ローコストなのに、けっこうアクロバティックなこともやってるし。

平野:そうなんですよ。

藤本:おもしろいなぁ。

平野:数年前に耐震補強をしたとき、この木製サッシュがだいぶ傷んでいるので、鉄製のしっかりしたものに変えようと思ったんですよ。

藤本:はい。

平野:そうしたら、サッシュ自体はなんとか鉄でおなじようなものにできるけど、ガラスの再現は無理です、って言われて。

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藤本:たしかに相当古そうですもんね。

平野:この微妙に揺らぐ風合いは、いまの技術ではつくれません、って言うんですよ。現在の高度な生産技術では、どんなにがんばっても、こんないい加減な精度のものはつくれないと(笑)。

藤本:この深い味わいは、低い技術力の賜物だったわけですね(笑)。

平野:そう。それでリプレイスを諦め、直しながらこのままで行くことにしたんです。さあ、つぎはサロンに行きましょう。

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藤本:太郎さんはこういう椅子などのプロダクトデザインも素晴らしいですよね。

平野::藤本さんは、家具をつくられてましたっけ?

藤本:家具はいくつかあるんですが…、ただ市販品のものはないですね。パリのアートギャラリーからつくって欲しいと言われて、奇妙なものをつくったり…。

平野:おもしろそうだな。

藤本:そういえば、イタリアの会社が本棚をつくって欲しいって言ってきて、2年くらい前にデザインしたものがようやく売りに出されるみたいです。

平野:ぼくは自分の事務所で、建築家の磯崎新さんがデザインした「モンローチェア」を大切に使っているんです。磯崎さんが銀行を設計しているときに、会議室に置くためにご自身でデザインした椅子です。藤本さんはそういうことはしないんですか?

藤本:ああいうのは難しいんですよね。建築は考えられるんですけど、モノのデザインがあまり得意じゃなくて…(笑)。

平野:へえ、そういうものなんだ。

藤本:だったら自分の好きな家具を入れた方がいいかな、みたいな。

平野:あぁ、なるほど。なんていうか…、やっぱり誠実なんですよね、藤本さんって。そういうところが好きなんですよ(笑)。それじゃ、展示棟に行きましょう。

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藤本:おお!

平野:いい出来でしょう?

藤本:すごいですね。

平野:これが大阪万博テーマ館の地下展示。太陽の塔の前にはこんな壮大で芸術的な展示空間があったんです。

藤本:それも地下空間に。

平野:先日、太陽の塔の内部がようやく再生されましたけど、全体から見たらごくごく一部ってことがよくわかるでしょう?

藤本:この地下展示は、いまどうなっているんですか?

平野:土です。

藤本:万博閉幕後に埋め戻されたわけですね。

平野:テーマ館の観客は、このムーヴィングベルトで地下に降りていきました。最初のゾーンがこの〈いのち〉です。タンパク質、ATP、DNAなど、生命をつくっている物質が5億倍に引き伸ばされて観客を包みこむ、美しい空間です。真ん中の受精卵みたいな造形はマルチスクリーンになっていて、さまざまな生きものの誕生シーンが映されていました。

藤本:こんな空間、見たことないですね。

平野:次のゾーンでは、狩猟時代の人々の生きざまが、舞台芸術のようなテイストで表現されています。

藤本:ほんとうに舞台を見ているようですね。

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平野:つづくゾーンは、世界から集めた仮面や神像が宙に浮かぶ呪術的な空間で、中央にすわっているのが太郎のつくった《地底の太陽》です。今回、塔内とあわせて復元しました。

藤本:すごい空間ですね。

平野:模型に臨場感がありますからね。いい出来でしょう? いずれも海洋堂にお願いしてつくってもらったんです。

藤本:雰囲気がありますよね。海洋堂って、やっぱりすごいな。

平野:こんなディスプレイ空間はほかにないし、万博史上にも例がありません。

藤本:いいですね。じつにカッコいい。

平野:これが《地底の太陽》を復元するためにつくった1/10の原型です。隣は万博当時の太陽の塔の内部。当時はエスカレーターでしたけど、いまは階段に変わっています。

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藤本:なぜ階段に?

平野:耐震性能をあげるためです。エスカレーターは重いから、耐震上は損なので。そういえば、そのおかげで《生命の樹》の枝が階段に突き刺さることになって、ひと騒動あったんですよ。

藤本:???

平野:おなじ場所に架け替えただけで、起点も終点もおなじ。でも、階段には踊り場があるけど、エスカレーターにはない。そのため、わずかだけど傾斜角度がちがう。

藤本:はい。

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平野:たったそれだけで、階段に枝が刺さっちゃったんですよ。つまり、当時の設計がそこまで攻めていたってことです。エスカレーターにぶつかるギリギリまで攻めてつくっていた。運が悪ければ、設置するときにぶつかっていたところです。

藤本:へぇ。

平野:当時の先輩たちが、そこまで腹をくくって攻めたってことを知って、ぼくはちょっと嬉しくなった。ぼくもあそこまではできないなあ。

藤本:素晴らしい仕事ですね。

平野:ぜひ今度現場で見てください。

藤本:この《地底の太陽》もカッコいいですね。

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平野:これは原型だからこんな感じですけど、大阪の実物はほんとうにカッコいいですよ。

藤本:まさに一大プロジェクト! 早く見たいです。



次回は前橋に移設された《太陽の鐘》について。

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藤本壮介

1971年 北海道生まれ。
東京大学工学部建築学科卒業後、2000年 藤本壮介建築設計事務所を設立。
2014年 フランス・モンペリエ国際設計競技最優秀賞、2015年 パリ・サクレー・エコール・ポリテクニーク・ラーニングセンター国際設計競技最優秀賞につぎ、2016年Réinventer Paris 国際設計競技ポルトマイヨ・パーシング地区最優秀賞を受賞。
主な作品に、ロンドンのサーペンタイン・ギャラリー・パビリオン2013 (2013年)、House NA (2011年)、武蔵野美術大学 美術館・図書館 (2010年)、House N (2008年) 等がある。

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