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Sousuke Fujimoto Talk ⑦ Groove architecture

藤本壮介対談⑦「グルーヴする建築」

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数多くの賞を受賞し世界的にも注目されている建築家 藤本壮介さんとの対談です。
第七回目は藤本さんの個性、スタイルについての考えをお伺いします。

〈前回までは〉
藤本壮介①「ローコストなのに、けっこうアクロバティックなこともやってるし。」
藤本壮介②「内側から湧き出してくるようなイメージにできないか、とも考えました。」
藤本壮介③「森と一緒に打つくらいじゃないとほんとうの意味で響かないんじゃないかって思ったんです。」
藤本壮介④「ぼくは感性だけではつくりたくないと考えていますが、だからといってロジックだけでつくりたいとも思わない。」
藤本壮介⑤「大学に入ったら、物理がめちゃくちゃむずかしいってことがわかったんです。」
藤本壮介⑥「もしかしたら流されて、自分を見失っちゃうんじゃないか、みたいなことを考えたりして。」




「欲しくないって言い切れるほど、まだそこまで開き直ってないです(笑)。」

平野:建築家の師匠をつくらなかったということが、「なにが出てくるかわからない」という、建築家としての藤本さんのありように決定的な影響をおよぼしたのかもしれないと、ぼくは考えているんです。逆にぼくはそうじゃないから、よくわかる。ぼくは丁稚奉公しましたからね。

藤本:太郎さんがつくった事務所に入られたんですよね。

平野:そうです。太郎が初代で、ぼくは三代目。二代目のもとで修行したんだけど、やっぱりそのときの経験が決定的なんですよ。仕事への向き合い方、仕事に対する態度みたいなことからはじまって、叩き込まれたことから、良くも悪くも自由になれない。

藤本:そうですか。

平野:もちろん、彼の考え方や態度を無批判に受け入れたわけじゃないですよ。感性はちがうし、反発もしました。でも、それもある種の精神的な支配の裏表ですからね。けっきょくそこからは逃れられないような気がします。

藤本:それはいまだに?

平野:クライアントとどう向きあうかってことを含めて、仕事上のマナーみたいなことはずっと残っています。ヒヨコが最初に動くものを親と信じてついていくのとおなじように、理屈じゃないですからね。

藤本:そうでしょうね。

平野:おそらく偉い建築家に弟子入りした人たちも、おなじようなことがあるんじゃないかと思います。でも藤本さんにはそれがない。だから、なにものにも支配されず、自由なまま大きくなれたっていう気がするんですよ。

藤本:どうなんですかね? そうかもしれないけど、反面、それゆえに自分で自分の型にはまっているのかもしれない。そこは常に自分自身に問いかけています。

平野:そもそも藤本さんは、自分の個性、自分のスタイルみたいなことについてどう考えているんですか? そんなものはない方がいい?

L'Arbre Blanc - (c) SFA+NLA+OXO+RSI
L’Arbre Blanc – (c) SFA+NLA+OXO+RSI


藤本:すごく難しいですね。うーん…でもきっと…ないんじゃないんですかね。あるときから「ないな」って気づきはじめて…(笑)。

平野:「ない」っていうのは、つまり「いらない」っていうこと? 邪魔?

藤本:いや、どうも自分にはなさそうだっていうだけで…。

平野:(笑)

藤本:たとえば安藤さんのこういうところ、コルビュジエのああいうところっていうふうに、巨匠はみんな個性やスタイルをもっている。でもどうやら自分にはそういうものはなさそうだと思っているんです。とうぜん不安になるわけです。

平野:なるんですか?

藤本:なりますよ。こんなんでいいのかなって。

平野:でも欲しくはないんでしょ?

藤本:欲しくないって言い切れるほど、まだそこまで開き直ってないです(笑)。

平野:(爆笑)

藤本:たとえば小さな住宅をやっている場合、海外で図書館をつくっている場合、前橋で岡本太郎の彫刻を据えつける場合…、それぞれですべて状況はちがいますよね。

平野:はい。

藤本:状況がちがうのに、おなじスタイルっていうわけにはいかないな、と思っていて…。

平野:なるほど。

L'Arbre Blanc - (c) SFA+NLA+OXO+RSI
L’Arbre Blanc – (c) SFA+NLA+OXO+RSI


藤本:あとは好奇心というか…、「この状況だと、どんなおもしろいことがあり得るだろう?」って考えることが楽しい、ってこともあります。

平野:そもそもオファーをもらったあと、最初になにから考えはじめるんですか?

藤本:まず敷地があって、クライアントの要望があって…そういうところを見ながら…その中でいちばん盛り上がるポイントを考えます。

平野:?

藤本:たとえば住宅でもいいし、図書館でもいいし、アート作品とのコラボレーションでもいいんですけど…そういうものの中の新しいタイポロジーと言うか、概念と言うか…そういうものを見つけたいっていうのがあるんです。

平野:それは〝原理〟みたいなものでしょう?

藤本:そう。新しい原理です。「こういう図書館っていままでなかったけど、でも図書館って、こういうふうななにかだよね」みたいな核心に触れたい、っていう感じかな。

平野:わかります。

藤本:「核心に触れている新しさ」みたいなもの、それを見つけたいと思っているんです。

平野:もしかして、思考オタク?(笑)。

藤本:そうかもしれない(笑)。それが空間と連動すると最高なんですけど。ぼくはどうもそういうことが好きみたいです。

平野:とすれば、あえて自分のスタイルを投影しなくても、そこにある種の発見さえあれば、藤本さんとしておもしろいと。

藤本:最近考えているのが、自分ひとりにはなかったものを、自分ひとりにはなかったもので膨らませる、っていうこと。

平野:うん。

藤本:そうすれば自分ひとりではできないところまで行ける。そこでマイルストーンというか、概念としてなにかが立ち上がるといいなと。

平野:なるほど。

藤本:「集合住宅といえば、あれを挙げないわけにはいかないよね」って後々の人が思い浮かべるようなものを可視化する、みたいなイメージです。



次回は藤本流クライアント対応法!

藤本壮介⑧「敷地の状況などを含めて〝空間に聞く〟みたいな感じです。」

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藤本壮介

1971年 北海道生まれ。
東京大学工学部建築学科卒業後、2000年 藤本壮介建築設計事務所を設立。
2014年 フランス・モンペリエ国際設計競技最優秀賞、2015年 パリ・サクレー・エコール・ポリテクニーク・ラーニングセンター国際設計競技最優秀賞につぎ、2016年Réinventer Paris 国際設計競技ポルトマイヨ・パーシング地区最優秀賞を受賞。
主な作品に、ロンドンのサーペンタイン・ギャラリー・パビリオン2013 (2013年)、House NA (2011年)、武蔵野美術大学 美術館・図書館 (2010年)、House N (2008年) 等

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