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関根光才対談①「パンクという美意識」

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ドキュメンタリー映画『太陽の塔』の監督であり日本が世界に誇る若手広告映像ディレクター関根光才さんとの対談です。

関根光才②「『どうやって太陽の塔を超えるか』みたいな話をしなきゃいけないだろうと思ったんです。」
関根光才③「自分たちの存在って何なんだろうとか、なんでこんなことをして生きているんだろうとか。」
関根光才④「勉強に一年くださいって平野さんにお願いしたけど、『ムリ!』と一蹴されて(笑)。」
関根光才⑤「『最初のトリートメントからそんなに遠くなかったね』って言ったのを覚えています。」
関根光才⑥「外の世界が平和じゃなくても、自分たちは平和に暮らしたい。」
関根光才⑦「それでいて壊しながら串刺しにするようなものが欲しいと思って。」
関根光才⑧「呪術的、原始的、本質的」であること。」
関根光才⑨「どうやったらみんなが乗れるステージをつくれるか。」
関根光才⑩「大きな目的のために一緒につくろうっていうのが理想だと思っています。」

第一回目は関根さんが映画『太陽の塔』監督公募で考えたこと。

太陽の塔に対して、「アレはヤバイな」とは思っていたんです。

平野:いよいよ9月29日から、長編ドキュメンタリー映画『太陽の塔』の劇場公開がはじまります。トレーラー(予告編)を見て楽しみにしている人も多いのではないかと思いますが、じつはこれまで岡本太郎を題材にした映画はつくられたことがなく、太郎が映画とかかわるのはこれがはじめて。この意味で、岡本芸術にとってきわめて大きな意味をもつ映画なんです。よく「舞台は役者のもの、テレビドラマは脚本家のもの、映画は監督のもの」と言われるけれど、まさに映画は監督のもの。きょうは監督の映像作家・関根光才さんをお招きし、この映画について、さらには関根さんのクリエイティブの方法について、いろいろお聞きしたいと思っています。よろしくお願いします。

関根:こちらこそ、よろしくお願いします。

平野:この映画では、監督を公募で選びました。友人のテレビプロデューサーと議論しているときに生まれたアイデアなんだけど、動機はじつにシンプルで、ぼくは映画村の住人じゃないから、監督の知り合いはいないし、誰がどんな考え方の持ち主なのかもわからない。だから、まずは世間に広く呼び掛けて、この映画に興味をもってくれる人に手を挙げてもらい、その人たちの話をじっくり聞こう、と。

関根:よくわかります。

平野:そう考えれば、公募はきわめて合理的だと思うんだけど、どうやら映画界ではほとんど例がないらしい…じつに不思議です。

関根:(笑)



TOYOTA Harrier Turbo from Kosai Sekine on Vimeo.

平野:公募を知ったとき、関根さんが最初に考えたのは、どんなことでした?

関根:まず頭に浮かんだのは、「ぼくは太陽の塔が漠然と好きだったなぁ」という小学生レベルの感想でした。

平野:(笑) 漠然と好き。言い換えれば、深く考えたことはなかった、ってことですよね?

関根:はい、まったく。「岡本太郎」についても、詳しいことはなにも知りませんでしたし…。

平野:普通そうですよ。

関根:ただ、太陽の塔に対して、「アレはヤバイな」とは思っていたんです。

平野:ヤバい?(笑)

関根:その姿というか質量というか…、そういうことももちろんあるんですが、いちばんの体験は、はじめて家族で万博公園に行ったときに、裏側の〈黒い太陽〉を見たことでした。ほんとうにびっくりしたんです、あまりに強烈で。「ああ、これは言いたいことが相当あるな」って。

平野:アイツが自ら語っていると?

関根:そう、語ってます。てことは、かなり意図的につくられているな、と。

平野:単なる造形物ではなく、強烈なメッセージがぎゅうっと凝縮されている、と感じたわけですね。

関根:はい。そもそも怖いですよね、アレ。闇が密集したみたいになっていて。

平野:ああ、そうね。

関根:ああいうものを、万博のようなファミリーで来る場所にあえてつくったわけだから、相当に強い意志が働いているにちがいないと思った。岡本太郎への興味が湧いたのはそこからです。

平野:元来、万博はお祭りだから、「楽しもうぜ! イエーイ!」っていう脳天気なイベントなんだけど、アイツだけがなんかドロドロしているし、不気味な気配を振りまいている。「みんなで楽しもうとしてるときに、なんでそんな場違いなものを突き立てんだよ!」みたいな感じが拭えない。

関根:光と闇、善と悪…。そういったいわば陰の部分を思いっきり見せようとしている。そう感じたんです。で、「なんだろう、これは?」って。

平野:うん、わかる。

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関根:そのあとで、パビリオンのこととか、大屋根の存在とかを知って。・・・しかも憧れの目で見ていた大阪万博の仕事が、いまのぼくらの年代のクリエイターがつくったものだと知って、さらに衝撃を受けた。

平野:「オレたちはなにをやってんだろう…」みたいな?

関根:そうです。「なんで、いまのオレたちにはできないんだろう?」と。そんなときに公募の話を知って、なにかやってみたいと思ったんです。それが最初の動機です。

平野:公募をとおして、ぼくは3つの課題に対する答えを見つけたかった。1つは、ビジョン。映画としてのビジョンです。

関根:はい。

平野:太陽の塔は芸術だから、本来的に多義的な存在です。にもかかわらず、読み解くための情報があまり少ない。高さが70m、みたいなデータは残っているけれど、肝心の「太陽の塔とはなにか」にかかわる情報は、ほとんど流通していませんでした。なにしろはじめて太陽の塔を扱った本が世に出たのは、わずか10年前ですからね。

関根:いまの状況から見ると、ちょっと信じられない感じがしますよね。

平野:それどころか、日本が万博に熱狂していたときでさえ、太陽の塔を客観的に記述したり批評したものは、ほぼ皆無でした。

関根:不思議だなあ。

平野:太郎は当時の美術界から半ば無視されていましたからね。たとえば1970年7月に『美術手帖』が大阪万博の臨時増刊号を出すんだけど、二百数十ページの大特集のなかで、太陽の塔は完全無視です。

関根:えっ、ほんとに?

平野:メインゲートの正面にあの大きさで立ち、テーマ館という万博の中核施設であったにもかかわらず、いっさい解説されていないし、写真だって一枚もない。正確にいえば、別の写真の端にやむなく写り込んじゃった、っていうのが1枚あるけど。

関根:へぇー、すごい話ですね。

平野:情報がないから、自分で現場に行って集めようと思っても、それも難しい。たとえばシリア情勢の場合、現場に行けば難民もいるし、空爆の跡も残っているでしょうけど、太陽の塔にいま行ったところで、生々しいネタなんて転がっていません。

関根:たしかにそうですね。



TOYOTA ‘H.H.’ 3rd Episode (Japanese Subtitled) from Kosai Sekine on Vimeo.

平野:つまり太陽の塔のドキュメンタリー映画をつくろうとすれば、ストーリーの芯や核は、監督自身が“創造する”しかないわけです。だからしっかりとしたビジョンを見つけたかった。それが1つ目です。

関根:はい。

平野:2つ目は、太陽の塔に対する愛情と情熱です。強度のあるビジョンを構築するうえで、原動力になり得るのは、おそらく岡本太郎や太陽の塔への愛情しかない。だから「太陽の塔への思い」を聞きたかった。

関根:わかります。

平野:3つ目は「挑戦する精神」です。ドキュメンタリーだからといって、単純にファクトを並べればいいという話ではない。解説ビデオとちがって、映画は芸術ですからね。

関根:ええ。

平野:この3つを見つけようとすれば、知り合いに声かけて済む話じゃない。広く社会に門戸を開いて、なんとかこの3つを掬い上げたいと思って。それで公募してみたところ、なんと98名もの応募がありました。

関根:そうですか。

平野:関根さんは太陽の塔が気になっていたし、惹かれてもいた。もちろん解決できないモヤモヤとした疑問もあった。この映画製作を通じて、それが解決するかもしれないっていう期待はあったでしょ?

関根:もちろんそれはありました。ドキュメンタリーですから。いっぽうで、さっきの平野さんの話につながることですが、ドキュメンタリーって、いわゆる事実を積み上げればいいと思われがちだけど、かならずしもそうじゃない。自分がどう考えているかってことも表現できるメディアだと思うんです。

平野:とうぜん、そうじゃないとダメですよ。さっきも言ったけど、教材ビデオじゃないんだから。

関根:アートについてのドキュメンタリーに自分の解釈を取り入れることで、自分の表現もできるはずだ、と。



次回は監督に選ばれたその衝撃と感動の理由とは?

関根光才②「『どうやって太陽の塔を超えるか』みたいな話をしなきゃいけないだろうと思ったんです。」

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関根光才

1976年生まれ。東京都出身。2005年に短編映画『RIGHT PLACE』を初監督し、翌年カンヌ国際広告祭のヤング・ディレクターズ・アワードにてグランプリを受賞。以降、数多くのCM、ミュージックビデオ等を演出し、2012年短編オムニバス映画『BUNGO~ささやかな欲望~』では岡本かの子原作『鮨』を監督。

2014年の広告作品SOUND OF HONDA『Ayrton Senna 1989』ではカンヌ国際広告祭で日本人初となるチタニウム部門グランプリ等、多数の賞を受賞。国際的にも認知される日本人監督となる。


2018年9月に初の長編ドキュメンタリー映画『太陽の塔』が公開になり、11月には長編劇場映画初監督作品『生きてるだけで、愛。』の公開も控えている。


現在は国内外で活動する傍ら、社会的アート制作集団「NOddIN」でも創作を続けている。

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