ドキュメンタリー映画『太陽の塔』の監督であり日本が世界に誇る若手広告映像ディレクター関根光才さんとの対談です。
第二回目は関根さんが監督に選ばれたその衝撃と感動の理由とは?

〈前回までは〉
関根光才①「太陽の塔に対して、『アレはヤバイな』とは思っていたんです。」

「どうやって太陽の塔を超えるか」みたいな話をしなきゃいけないだろうと思ったんです。

平野:公募の二次選考はおもしろかった。書類選考を通った6人と面談したんですけど…

関根:はい。

平野:会ってみたら、いずれも経験十分、監督としての確固たる哲学をもっていて、さすがだと思いました。資料もじつにしっかりしていて。……関根さん以外は、ね(笑)。

関根:はい(笑)。

平野:驚くべきことに、なんと関根さんは面接に手ぶらで来た。

関根:…すみません(笑)。

平野:衝撃だったし、密かに感動もしたんですよ、ぼくは。それにしても、なぜ手ぶらで?

関根:たしかにドキュメンタリー映画だけど、太陽の塔について緻密に描くというよりは、「どうやって太陽の塔を超えるか」みたいな話をしなきゃいけないだろうと思ったんです。もしそうであるなら、お約束の作業のように、プレゼンして、プレゼンされる人がいて、みたいなことでもないだろうと思ったんです。まあ、それでダメならしょうがないや、と。

平野:いま“プレゼン”っていう言葉があったけど、じっさい関根さん以外の人はみんな、いわゆるプレゼンだったんです。

関根:はい。



Sound of Honda / Internavi “Ayrton Senna 1989” from Kosai Sekine on Vimeo.

平野:彼らは持参した資料を「説明」したんです。ぼくらは説明を受けたわけ。もちろん質疑応答はやったけど、基本的な構図はやはり「説明」であって、情報交通のありようは一方通行に近いものだった。

関根:ああ、なるほど。

平野:でもね、説明されてもぜんぜんワクワクしないわけ。ぼくは太郎や太陽の塔のことを少しは知っている。申し訳ないけど、彼らがもっている情報はぼくより少ない。そういう状況下で説明されても楽しくないわけですよ。知ってることばかりだから。

関根:でしょうね。

平野:ところが、関根さんだけは説明じゃなかった。最初から形式が「対話」だったんです。だから楽しかった。それで「この人と一緒にやりたい」と思ったんです。

関根:よかった(笑)。

平野:関根さんの話の中に強烈に刺さった言葉があった。「日本人と芸術の関係を考えたい」とか、「日本と日本人について考えたい」とか…。覚えてます?

関根:はい。そういうようなことを言ったと思います。



ANREALAGE X Onitsuka Tiger / AR Shoes from Kosai Sekine on Vimeo.

平野:他の人たちが描こうとしていたのは「いかにして太陽の塔や岡本太郎を説明するか」という物語だったけど、関根さんだけは次元のちがうレイヤーの話をしたんですよ。“日本と日本人”とか、“日本人と芸術”とかね。

関根:こうやって聞くと、なんか偉そうでヤな感じですね(笑)。

平野:いやいや、ぼくはすごく共感したんです。「そうだ。オレがやりたかったのは、そういうことだったんだ」と気がついた。ぼく自身、うまく言語化できなかったことを、関根さんがピシャッと言葉にしてくれた。そう感じたんです。

関根:ありがとうございます。

平野:これが面接しているときに書いたぼくのメモなんだけど、「太陽の塔を通して日本と日本人を考える契機にしたい、そういう姿勢がある」って書いてある。「芸術と日本人の関係を探ろうとする視座がある」とも。

関根:そこを評価してくださったんですね。

平野:公募要綱には「太陽の塔のドキュメンタリー映画をつくって欲しい」としか書かれていないわけだから、「太陽の塔をどう描くか、どう掘り下げるか、どう説明するか」っていうふうに考えるのが自然でしょ? なぜ関根さんはもっと深いところにテーマがあると考えたんですか?

関根:別に変わったことやひねったことをやろうとしたわけではなくて、ぼくも太陽の塔について真正面から考えていただけなんです。

平野:うん。

関根:ただ、それを考えていくと、自ずと日本人と美術の関係や、現代社会における意味、みたいなことを考えざるを得ないだろうと。芸術がほとんど灰になっちゃっているような時代にあって、かつて日本にはいなかった岡本太郎のような芸術家や、日本人なら誰もが知っている太陽の塔のようなアイコニックな作品について考えるっていうのは、きっとそういうことなんだろうと。

平野:わかる。



Nike「Music Shoe」


関根
:だからぼくとしては、きわめて真面目に考えているつもりなんです。そういうものを太陽の塔は放射してると思うんですよ。

平野:うん。

関根:はじめて塔の裏側に回ったときに、これはもう相当なクエスチョンを投げかけてるなと思っていたんで。もちろん感じ方はいろいろあると思うけど、ぼくはそういうふうに感じたし、必然的にそういうテーマになるはずだっていうか……

平野:なるほど。

関根:まあでも、言われてみれば、もともとぼくはそういうことを意識的に考えるタイプなのかもしれません。

平野:もしかしたら、これまでの映像創作においても、関根さんはそういうテーマを背負っていたんじゃないかな。

関根:そうかもしれないですね。わりと小難しいことを考えるタチなので(笑)。



次回は「なにかが掴めるかもしれないっていう予感と期待」。

関根光才③「自分たちの存在って何なんだろうとか、なんでこんなことをして生きているんだろうとか。」

P1780037①
関根光才

1976年生まれ。東京都出身。2005年に短編映画『RIGHT PLACE』を初監督し、翌年カンヌ国際広告祭のヤング・ディレクターズ・アワードにてグランプリを受賞。以降、数多くのCM、ミュージックビデオ等を演出し、2012年短編オムニバス映画『BUNGO~ささやかな欲望~』では岡本かの子原作『鮨』を監督。

2014年の広告作品SOUND OF HONDA『Ayrton Senna 1989』ではカンヌ国際広告祭で日本人初となるチタニウム部門グランプリ等、多数の賞を受賞。国際的にも認知される日本人監督となる。


2018年9月に初の長編ドキュメンタリー映画『太陽の塔』が公開になり、11月には長編劇場映画初監督作品『生きてるだけで、愛。』の公開も控えている。


現在は国内外で活動する傍ら、社会的アート制作集団「NOddIN」でも創作を続けている。