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Kosai Sekine Talk ④ "sense of punk"

関根光才対談④「パンクという美意識」

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ドキュメンタリー映画『太陽の塔』の監督であり日本が世界に誇る若手広告映像ディレクター関根光才さんとの対談です。
第四回目は「映画はどのようにつくられているのか」。

〈前回までは〉
関根光才①「太陽の塔に対して、『アレはヤバイな』とは思っていたんです。」
関根光才②「『どうやって太陽の塔を超えるか』みたいな話をしなきゃいけないだろうと思ったんです。」
関根光才③「自分たちの存在って何なんだろうとか、なんでこんなことをして生きているんだろうとか。」


勉強に一年くださいって平野さんにお願いしたけど、「ムリ!」と一蹴されて(笑)。

平野:じつは太郎の生涯をテーマにした映画のオファーがいくつか持ち込まれたことがあって。偉人伝みたいなものが多かったかな。

関根:へぇ。

平野:でもすべてお断りしました。

関根:それはなぜ…?

平野:いずれも年表をそのままプロットにしたようなものだったからです。予定調和的というか、「まあ、フツーそうなるよね」っていうストーリーで。出てくるエピソードもお馴染みのものばかりだし。まだ映画をつくってもいないうちから、既視感たっぷりなわけ。

関根:なるほど(笑)。

平野:年表の映像版をつくってもしょうがないからね。

関根:それでは平野さんのモチベーションも上がらないですよね。

平野:やる以上は新しい挑戦がなされないと意味がないし、おもしろくない。なによりそれ自体が芸術でなければならない。大切なことは、極論するなら、間違っていても偏っていてもいいから、“強烈な意志”の結晶であること。だれも批判できない無難で安全な〝役所のスローガン〟みたいなものをつくっても意味ないからね。もちろん世の中にはそういうものがあっていいし、それ自体を否定するわけではないけれど、少なくとも“岡本太郎”の仕事ではない。ではいったい“強烈な意志”を織り込むメディアとして最適なものはなにか? ぼくはやはり映画だろうと思った。なぜなら映画は監督の意志でつくるものだからです。

関根:なんか、嬉しいです。ありがとうございます。




AKB48「恋するフォーチュンクッキー」


平野:ところで、PLAY TAROを見てくれている人は、映画がどのようにしてできあがっていくのかを知らないはず。ぼく自身、知らなかったしね。そこで、関根さんが監督を引き受けたときから、なにをどうつくっていったのか、流れをごく簡単に教えてもらえますか?

関根:ぼくは映画監督として短編のドキュメンタリー映画をつくったことはあったんですけど、けっきょくルールがないんですよね、ドキュメンタリーって。こういうステップを踏んで、だからつぎにこうなりますっていうものではなくて、常に流動的にものが動いていく。

平野:なるほど。

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関根:今回は、まず太陽の塔と岡本太郎について勉強することからはじめました。太陽の塔とはなにか、岡本太郎ってどういう人なのか、彼はどういうつもりで太陽の塔をつくったのか…みたいなことです。勉強に一年くださいって平野さんにお願いしたけど、「ムリ!」と一蹴されて(笑)。

平野:ああ、そうだった(笑)。

関根:半年後ぐらいですかね、プロットを書いてお渡ししたのは。ぼくのなかでは、勉強したことがなんとか着地できたっていう感じがあって…、少し安心できたかな。

平野:太郎にどんな印象を?

関根:衝撃でした。これほどまでの知識人だったってことも、すごくびっくりしたし・・・1930年代のパリで新しい学問として人類学が生まれたっていうのもびっくりしたし・・・でもいちばんびっくりしたのは、自分が興味をもっているものごととのシンクロニシティでした。

平野:どういうこと?

関根:じつはこの映画がどうなるかまったくわからないときから、なんとなくオープニング映像みたいなものが頭に浮かんでいたんです。

平野:?

関根:樹の根っこから縄文みたいな模様になっていくっていう…。ぼくは岡本太郎が縄文を再発見したっていうことすら知らない素人だったけど、岡本太郎を紐解いていくうちに縄文というキーワードが出てきて、びっくりしたし、興奮しました。

平野:おもしろいなあ。

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関根:そういうこともあって、ステップバイステップの勉強が、そのまま自分が知りたかったことに導いてくれた。ぼくは大学で哲学を学んだんですけど、ほんとうは人類学を学ぶべきだったってことも気がつきました。いまさら遅いけど(笑)。

平野:そうね(笑)。要するに、太郎がパーンと直球を打ち込んでくれた感じなんだ。

関根:そうです。太郎さんが教えてくれたことももちろんあるし、太郎自身が興味をもって勉強しようとしたことがすごく腑に落ちるっていうこともあるし…。

平野:そうなるともう、完全に師匠だね(笑)。

関根:ほんとにそうなんですよ。まさかそんなことになるなんて夢にも思ってなかった(笑)。太郎さんは人類学を、人間とはなにかを根底から勉強していますよね。ぼくもおなじ理由から哲学を学んだんだけど、正直、こんなこと考えても生きていけねえなって思った。人間とはなにかをゼロベースで掘り下げないと、自分が生きている実感がつかめないっていうか…。

平野:うん。

関根:大学で学んだ哲学は、あんまりおもしろくなかったんです。どうしても「お勉強」になっちゃうんですよね。で、いろいろ考えているうちに、やっぱり実地体験を通して勉強していくしかない、つくることに関わりたいという思いが強くなって、映像の世界に入ったんです。

平野:なるほど。

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関根:太郎さんはそういうことを確実につかみ取ったうえに、それまでなかった新しい概念を探求している。きっと太郎さんはメチャクチャおもしろかったはずだし、それを読んでいるぼくにもびっくりすることがいっぱいあった。

平野:ある種の追体験をしてワクワクしたわけだ。

関根:感情移入したんです。だから勉強もすごく楽しかったけど、おもしろかったのは、ある程度勉強するうちに、自分でいままで勉強したことや、太郎さんが勉強したことなど、いろいろな点と点がつながっていったこと。新しい本を開いても、だいたい内容がわかるんですよ。

平野:ああ、わかる。

関根:これはもう勉強のフェーズじゃないんだと感じました。「トリートメント」っていう最初の文書を書いたあとのことです。だいたいの基礎知識が自分の中にできたなと思って。



次回は「トリートメントという言葉」。

関根光才⑤「『最初のトリートメントからそんなに遠くなかったね』って言ったのを覚えています。」

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関根光才

1976年生まれ。東京都出身。2005年に短編映画『RIGHT PLACE』を初監督し、翌年カンヌ国際広告祭のヤング・ディレクターズ・アワードにてグランプリを受賞。以降、数多くのCM、ミュージックビデオ等を演出し、2012年短編オムニバス映画『BUNGO~ささやかな欲望~』では岡本かの子原作『鮨』を監督。

2014年の広告作品SOUND OF HONDA『Ayrton Senna 1989』ではカンヌ国際広告祭で日本人初となるチタニウム部門グランプリ等、多数の賞を受賞。国際的にも認知される日本人監督となる。


2018年9月に初の長編ドキュメンタリー映画『太陽の塔』が公開になり、11月には長編劇場映画初監督作品『生きてるだけで、愛。』の公開も控えている。


現在は国内外で活動する傍ら、社会的アート制作集団「NOddIN」でも創作を続けている。

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