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Kosai Sekine Talk ⑤ "sense of punk"

関根光才対談⑤「パンクという美意識」

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ドキュメンタリー映画『太陽の塔』の監督であり日本が世界に誇る若手広告映像ディレクター関根光才さんとの対談です。
第五回目は「トリートメント」という言葉。

〈前回までは〉
関根光才①「太陽の塔に対して、『アレはヤバイな』とは思っていたんです。」
関根光才②「『どうやって太陽の塔を超えるか』みたいな話をしなきゃいけないだろうと思ったんです。」
関根光才③「自分たちの存在って何なんだろうとか、なんでこんなことをして生きているんだろうとか。」
関根光才④「勉強に一年くださいって平野さんにお願いしたけど、「ムリ!」と一蹴されて(笑)。」

「最初のトリートメントからそんなに遠くなかったね」って言ったのを覚えています。

関根:この映画はドキュメンタリーだから、最初にいわゆる「脚本」はつくれない。とにかく、まずはインタビューをしたいと思いました。もちろん質問を考えることはできても、答えは書けない。

平野:恋愛ドラマじゃないからね。

関根:そういう状態でインタビュイー(インタビューされる人)をリストアップしたんです。映画がどういうストーリーになるかは、インタビュイーの話を聞いてから。まずはおもしろそうな人たちにインタビューをして、それをどんどん編集していって…

平野:うん。

関根:あらかたできあがったのが、去年の夏の終わりぐらいですね。そのあたりになってから、こういう映像を撮ろうっていうプランを同時並行で組み立てていきました。

平野:音楽や撮影などのチーム編成はいつごろ決めたんですか?

関根:コアになるメンバーはかなり早い段階で決めてました。

平野:メンバーはどんな基準で選んだの?

関根:まずは根本的な興味のベクトルが近い人。岡本太郎や太陽の塔のことを知らなくても、なんなら好きじゃなくてもかまわない。根本的な興味の方向が近ければ大丈夫だと思って。

平野:チームをオペレーションするうえでの悩みはあまりなかった?

関根:そうですね。とてもうまく運んだと思います。

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平野:ところで、前回「トリートメント」っていう話があったでしょ? ぼくはこの言葉自体を知らなかったんだけど、映画業界の用語なのかな?

関根:たぶん映画の世界にはないんじゃないですかね。おもに海外でクリエイティブな映像をつくる人たちの用語だろうと思います。

平野:ぼくの本業の世界でいえば「基本構想」にあたるものだと思うけど、そのトリートメントがコレです。

関根:とっていてくれたんですか?

平野:もちろん! 感激したからね。こんなに美しい企画書が世の中にあるのかって。

関根:いえいえ、そんな…写真だってネットから引っ張ってきた程度のものだし…、穴があったら入りたいです(笑)。

平野:とにかく色彩感覚が独特で、普通じゃないと思った。よく言われるでしょう?

関根:うーん、わからないです…(笑)。まあ、たしかに映像の色味をいじるのは好きですけど。

平野:どうしてぼくは「関根さんの色はちがう!」って感じたんだろう? 関根さんに聞くのもヘンな話だけど(笑)。



“IVAN IVAN” documentary short of NOddIN from Kosai Sekine on Vimeo.

関根:海外と日本では映像制作の方法がけっこうちがっていて…

平野:はい。

関根:たとえば、よく蛍光灯文化と言われるように、日本では青い光で見ることが多い。対して海外は白熱球のオレンジ。じつは普段見ているものがすでにちがうんです。じっさい海外の映画を日本のテレビで見ると青く映りますよね。

平野:そうなの?

関根:青緑に映ります。ぼくが小さいころ、VHSを見てるときはそうでした。海外の映画は青緑に見えた。色彩感覚って、たぶん住んでいる場所に影響されるんですよね。ぼくは両方を行ったり来たりしていたので…。

平野:アメリカに住んでいた?

関根:ちょっとだけですけど・・・でも、もしかしたらそういうことが影響してるのかもしれません。

平野:なるほどね。とにかくぼくはトリートメントを見て、関根さんの色彩感覚に一目惚れしたわけ。しかも文章がまたいい。バシッと決まっているわけですよ。

関根:(笑)

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平野:先ほど、このトリートメントを書いたあとでいろんなものがつながったっていう話があったけど、この段階ですでに迷いがないし、“腹括ってる”感もある。

関根:最初はどうなるかぜんぜん見えていなかったけれど、この段階では「こうなったらいいな」みたいな感じはありました。

平野:うん。

関根:できあがったときに、みんなで「最初のトリートメントからそんなに遠くなかったね」って言ったのを覚えています。

平野:ほんとにそうだよね。とくに驚くのは……このページ。

関根:そんなに読み込んでいただいて! ありがとうございます。

平野:ここに「インタビューで得られた言葉を、再構成するということが可能か、という実験的な方法を…」と書いてある。「多くの人の言葉から成る“モノローグ”のように」とも。

関根:はい。

平野:ふつうドキュメンタリーでは、インタビュイーの喋ったことを、文脈ごと塊として提示するわけですよね。「Aさんはこういう話をしました」というのがわかる形で。

関根:そうですね。

平野:ところが関根さんの発想はちがった。「多くの人の言葉から成る“モノローグ”」とはすなわち、たくさんの証言を切り刻み、ひとつの文脈に再構成する、パズルのように組み立てるということですよね。だれもが「ドキュメンタリーとはこういうもの」と考えている“あたりまえ”に、構造レベルで挑戦している。とうぜんそれに伴うリスクの高さも尋常ではない。

関根:はい(笑)。

平野:トリートメントを書いている段階では、とうぜんながらうまくいく保証はないし、書いている本人もじっさいにどうなるかは予測できなかったわけですよね?

関根:そうです。

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平野:なぜこんなことをやろうと?

関根:こういう刻み方って、ドキュメンタリー映画の手法として、無かったわけじゃないんです。ただ今回は、いろんな人の話を相当なハイペース、短い尺で刻み、つないでいることはたしかですけど。

平野:ああ、そうなんだ。

関根:自分に関係ない話が延々とつづく批評みたいなことよりも、いろんな人たちがいて、でも話の芯はぜんぶつながっている、こんなにたくさんの人がいるのに、けっきょくはひとつの話をしている、みたいな感覚っていうか…。

平野:うん。

関根:言葉を刻むことによって、そういう状況が立ち現れるかもしれない、という予感があったんです。



次回は「疑え」。

関根光才⑥「外の世界が平和じゃなくても、自分たちは平和に暮らしたい。」

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関根光才

1976年生まれ。東京都出身。2005年に短編映画『RIGHT PLACE』を初監督し、翌年カンヌ国際広告祭のヤング・ディレクターズ・アワードにてグランプリを受賞。以降、数多くのCM、ミュージックビデオ等を演出し、2012年短編オムニバス映画『BUNGO~ささやかな欲望~』では岡本かの子原作『鮨』を監督。

2014年の広告作品SOUND OF HONDA『Ayrton Senna 1989』ではカンヌ国際広告祭で日本人初となるチタニウム部門グランプリ等、多数の賞を受賞。国際的にも認知される日本人監督となる。


2018年9月に初の長編ドキュメンタリー映画『太陽の塔』が公開になり、11月には長編劇場映画初監督作品『生きてるだけで、愛。』の公開も控えている。


現在は国内外で活動する傍ら、社会的アート制作集団「NOddIN」でも創作を続けている。

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