ドキュメンタリー映画『太陽の塔』の監督であり日本が世界に誇る若手広告映像ディレクター関根光才さんとの対談です。
第六回目は「疑え」。

〈前回までは〉
関根光才①「太陽の塔に対して、『アレはヤバイな』とは思っていたんです。」
関根光才②「『どうやって太陽の塔を超えるか』みたいな話をしなきゃいけないだろうと思ったんです。」
関根光才③「自分たちの存在って何なんだろうとか、なんでこんなことをして生きているんだろうとか。」
関根光才④「勉強に一年くださいって平野さんにお願いしたけど、「ムリ!」と一蹴されて(笑)。」
関根光才⑤「最初のトリートメントからそんなに遠くなかったね」って言ったのを覚えています。

「外の世界が平和じゃなくても、自分たちは平和に暮らしたい。」

平野:試写を見てまず思ったのは、とにかく内容が濃いということ。万博や太郎の話はもちろん、縄文、原発、アイヌ、熊楠、チベット…と、さまざまな問題に展開し、それらがひとつの世界観のもとにぎゅっと凝縮されている。ここまで濃度の高い映画はほとんど見たことがない。

関根:ありがとうございます。

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平野:もし順番に専門家が出てきて解説をはじめる、みたいなことをやったら、まちがいなく途中でイヤになる。集中力がもちません。でもこの映画は、これほど濃度が高く、情報量が膨大なのに、ぜんぜん長く感じない。やはり尋常ではないスピード感が貢献していると思いました。途中でダレることなく、ハイテンションのまま2時間を走りきる。普通に編集していたら、ぜったいにこうはなっていなかった。

関根:そうかもしれないですね。

平野:引き込まれたままの2時間。いままで見てきたインタビュー映像とはずいぶんちがうなあと思いました。しかもナレーションがない。出てくるのはインタビュイーの言葉だけで、それ以外の「補足説明」や「解説」がいっさいない。それにもかかわらず、濃い内容がちゃんと理解できる。これは驚異的だと思っているんです。

関根:なにしろインタビューが膨大すぎて…。まあ、ぼくが膨大に聞いちゃったのが悪いんですけど。



‘Here, my Life’ A short film supported by LifeCard from Kosai Sekine on Vimeo.

平野:(笑) 先ほどのトリートメントにいくつかのキーワードが出てきます。最大のキーワードは……えーと、ここだ。「日本人に向けて」というテキストの中にある「疑い」というワードです。「疑え」……たぶんこれが関根さんの問題意識の核心だろうと思う。

関根:はい。

平野:なぜ「疑え」と? 太陽の塔を通じていろんなものを「疑え!」と言いたくなったのはなぜ?

関根:お話ししたNOddINの活動と関係していて。これは第二回エギシビジョンで今回インタビュイーとしても参加している並河進さんが提案してくれたスローガンだったんです。これが展開していった。
ぼくはもう40歳を超えましたが、70年代あたりに生まれたぼくらの世代は、一億総中産階級みたいな環境で育ったんです。それが90年代になると、とつぜんポーンと放り出された。

平野:うん。

関根:長いあいだ経済的にいい状態で、みんながおなじように暮らしていたし、お互いが支えあって生きてきたので、社会システムに対する疑いがないんですよね。

平野:はい。

関根:日本人って、自分たちの国がベストだって信じているでしょう? 若いころ、シンガポール人に「日本人って、みんな日本のことが大好きだよね」って言われました。

平野:(笑)

関根:いまもあるじゃないですか。「日本はここがスゴイ!」みたいなことを国内だけでやってる。

平野:最近のテレビ番組に多いよね。

関根:なぜなんだろうと思って。やっぱり自分たちが生きているシステムに対する疑いがないからじゃないかと。

平野:そうかもしれない。

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関根:とてつもない信頼感がある。安定していると信じてきた世界が、たとえば原発事故で「なんかおかしいぞ、この社会」っていうことになっても、不安になりたくないから、できればこのまま信じたいっていう人がほとんどじゃないですか。

平野:うん。

関根:外の世界が平和じゃなくても、自分たちは平和に暮らしたい。でもそれって、自分たちに対して大きな噓をついているってことでしょう? そんな噓をこの先何十年もつづけられるわけがない。

平野:ぼくもそう思う。

関根:そういった意味で、「疑え」っていうのは、太陽の塔という問題を現代に据えるテーマになっていったんです。



次回は「異物とリズム感」。

関根光才⑦「それでいて壊しながら串刺しにするようなものが欲しいと思って。」

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関根光才

1976年生まれ。東京都出身。2005年に短編映画『RIGHT PLACE』を初監督し、翌年カンヌ国際広告祭のヤング・ディレクターズ・アワードにてグランプリを受賞。以降、数多くのCM、ミュージックビデオ等を演出し、2012年短編オムニバス映画『BUNGO~ささやかな欲望~』では岡本かの子原作『鮨』を監督。

2014年の広告作品SOUND OF HONDA『Ayrton Senna 1989』ではカンヌ国際広告祭で日本人初となるチタニウム部門グランプリ等、多数の賞を受賞。国際的にも認知される日本人監督となる。


2018年9月に初の長編ドキュメンタリー映画『太陽の塔』が公開になり、11月には長編劇場映画初監督作品『生きてるだけで、愛。』の公開も控えている。


現在は国内外で活動する傍ら、社会的アート制作集団「NOddIN」でも創作を続けている。