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Kosai Sekine Talk ⑦ "sense of punk"

関根光才対談⑦「パンクという美意識」

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ドキュメンタリー映画『太陽の塔』の監督であり日本が世界に誇る若手広告映像ディレクター関根光才さんとの対談です。
第七回目は「異物とリズム感」。

〈前回までは〉
関根光才①「太陽の塔に対して、『アレはヤバイな』とは思っていたんです。」
関根光才②「『どうやって太陽の塔を超えるか』みたいな話をしなきゃいけないだろうと思ったんです。」
関根光才③「自分たちの存在って何なんだろうとか、なんでこんなことをして生きているんだろうとか。」
関根光才④「勉強に一年くださいって平野さんにお願いしたけど、「ムリ!」と一蹴されて(笑)。」
関根光才⑤「最初のトリートメントからそんなに遠くなかったね」って言ったのを覚えています。
関根光才⑥「外の世界が平和じゃなくても、自分たちは平和に暮らしたい。」

「それでいて壊しながら串刺しにするようなものが欲しいと思って。」

平野:関根さんが描いたオープニング映像の絵コンテがコレ。ぼくはちゃんとファイルしてますよ(笑)。

関根:これはCGのスタッフと打ち合わせをしているときに、イメージを説明するためにその場で走り書きしたもの。そんなもの、取っておかないでくださいよ。メチャ恥ずかしいんですけど(笑)。

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平野:…(笑)これを見ると、ドキュメンタリーなのに架空の少女が出てくる。じっさい彼女は映画の節々でリズムをつくり、スパイスのような役割を果たしているわけだけど、どういうところからこのアイデアを?

関根:かなり早い段階で直感的に思いついたんです。そしたら、その後インタビュー撮影時に椹木野衣さんが「もしなんらかの理由で太陽の塔が立っていることの背景情報がすべて消え、ただそこに太陽の塔だけが立っているという状況が訪れたら…」という話をされて。

平野:日本という国そのものもなくなっていて…みたいな話でしたね。

関根:「そのとき、太陽の塔を前にした人々はなにを思うんだろう?」と。僕も同じようなことを考えてこの少女をイメージしていたんでシンクロっぷりに驚きました。そんな妄想をしたくなるぐらいの、とんでもない質量があるでしょう? ピラミッドに匹敵するサイズ感というか…

平野:たしかにね。

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関根:何千年、何万年後になったら、もしかしたら人類は一度、原始時代に戻って・・・

平野:「猿の惑星」だね(笑)。

関根:また人間やり直して・・・実際どうかはわからないけど・・・最後になってまた現代に戻るみたいな・・・そんなイメージがこの作品に通じるような気がして。なにかを壊すような…、それでいて壊しながら串刺しにするようなものが欲しいと思って。

平野:基本はインタビュー構成だけど、そうした定型的な構図を揺さぶったり、異なる刺激を与えたりしたかった?

関根:そうですね。

平野:エンターテインメントを考えてっていう部分もあるのかな。

関根:できるだけ柔らかくしたいという思いはありました。

平野:この少女、いつの時代に生きているのかわからないもんね。原始人って言われればそうだし、もちろん現代人にも見えるし…。どこからどう見ても、フィクションの極みです(笑)。

関根:すみません、ドキュメンタリーなのに(笑)。

平野:そういう“異物”がアクセントになっているところがおもしろい。なにしろリアルなインタビューと関根さんの“妄想”がシームレスでつながってるわけだからね。普通ならアウトでしょ、コレ(笑)。

関根:はい(笑)。まさに異物ですから、ある程度インタビューを撮り終えるまで、ほんとうに入れていいかどうかわからなくて…。

平野:ああ、そうでしょうね。

関根:ある程度進んだところで、「よしGOだ!」と撮りに行ったんです。

平野:その異物がリズム感をつくっている。この映画の構成要素は大きく3つ。インタビュー、ロケ、そしてフィクションの“ドラマ”。もちろん中心はインタビューです。収録時間、すごかったでしょ?

関根:29人で46時間です。

平野:それだけのボリュームのストックを切り刻んで数珠つなぎにしたわけですね。いわば膨大な“パーツ”としての言葉を、立体的なパズルのように組み立てたわけだけど、そもそも、どうやって?

関根:原稿をひたすらハサミで切って、それを大きいテーブルの上に並べて、延々とつないでみて・・・。みんなで〝曼荼羅〟って呼んでました。〝神経衰弱〟みたいなものですけど、あまりの量にじつはじっさい少しだけ病みそうになって…(笑)。さらに細かいリファインは編集の方がやってくれましたが、構成は監督次第。ぼくの仕事の九割はこの仕事でした。

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平野:そうやってつないだにもかかわらず、喋っているインタビュイー側に違和感がないっていうところがすごい。ぼく自身もそうだし、おそらくみんな自分が喋ったことがきちんと反映されていると感じたんじゃないかと思うな。

関根:もちろんロジカルに考えて結びつけられることも多かったんですけど、最終的には直感によるところが大きかったような気がします。

平野:けっきょく大事なのは監督の直感なんですよ。考えてみれば、芸術なんだから、そうなるのがとうぜんなんです。

関根:はい。

平野:最初ぼくは、ドキュメンタリー映画である以上、監督が太陽の塔や岡本太郎を剥いて裸にしていくものと思っていたんです。もちろんそういう面もあるけれど、じっさい試写を見たときのぼくの印象はまったく逆。裸になったのは関根さんのほうです。

関根:(笑)



RIGHT PLACE (2005)
平野:関根さんの問題意識とか、視座とか、価値観とか、美意識とか…、そういうものが生々しく立ち上がっている。

関根:はい。

平野:それがすごくおもしろかったし、それゆえにこの映画は成功だと思った。最初にお話したように、キチッとした価値観、美意識、問題意識のスジがとおっていないと、つまり“強烈な意志”がとおっていないと芸術にはなり得ないから。

関根:この映画は、もちろん太陽の塔の話でもあるし、岡本太郎の話でもあるけれど、それより前に「あなたの話」なんだっていう映画にしたかったんです。

平野:うん、すごくよくわかる。

関根:そういうベクトルでものをつくっていれば、とうぜんながら自分にも返ってくるわけです。自分だけ陰に隠れていい話をつくろうなんていうことは……

平野:もちろんできないよね。で、そんな作品が完成して、率直にどういう思いでした? なにか思い残すことはあった?

関根:思い残すことはありません。もちろん時間や予算などさまざまな制約はありましたが、そのなかで精一杯やれたので。あとはどういうふうに響いてくれるかです。

平野:うん。

関根:若い人たちがどう感じてくれるか…。映画のなかではいろいろ理屈めいたことも出てきますけど、そういうことをわかって欲しいというより、最終的にはハートというか、エモーショナルなことをつかんでくれれば、情熱を感じとってくれればそれでいいと思っているんです。

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平野:さっきも言ったけど、この映画はちゃんと芸術になっている。

関根:ありがとうございます。

平野:ひとつは「挑戦している」こと。先ほどからお話しているように、従来の定型的なドキュメンタリーの様式と常識に構造レベルで挑戦しています。もちろん評価は見た人がどう感じるかで決まると思うし、厳しい批判が待っているかもしれない。でも、たとえそうだとしても、ルーティンのフォーマットとはちがうことをやろうとした、という一点において価値があると思う。つくり方そのものが実験になっている。

関根:そうですね。

平野:たんなる努力賞じゃないっていうことです。きちんと知的な冒険になっている。それは芸術の大きな条件だと思います。もうひとつは「説明じゃない」ということ。この映画がやっているのは、説明ではなく、〝問いかけ〟です。関根さんの根っこにある「疑え」と通底する話だけど。

関根:はい。

平野:「上質な問い」がすぐれた芸術の条件です。答えを説明するのは教材ビデオ。そういう意味で、ぼくの最初のモチベーションをきちんと担保してくれているから、非常に満足しているんです。



次回は「感覚と刺激」。

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関根光才

1976年生まれ。東京都出身。2005年に短編映画『RIGHT PLACE』を初監督し、翌年カンヌ国際広告祭のヤング・ディレクターズ・アワードにてグランプリを受賞。以降、数多くのCM、ミュージックビデオ等を演出し、2012年短編オムニバス映画『BUNGO~ささやかな欲望~』では岡本かの子原作『鮨』を監督。

2014年の広告作品SOUND OF HONDA『Ayrton Senna 1989』ではカンヌ国際広告祭で日本人初となるチタニウム部門グランプリ等、多数の賞を受賞。国際的にも認知される日本人監督となる。


2018年9月に初の長編ドキュメンタリー映画『太陽の塔』が公開になり、11月には長編劇場映画初監督作品『生きてるだけで、愛。』の公開も控えている。


現在は国内外で活動する傍ら、社会的アート制作集団「NOddIN」でも創作を続けている。

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