Talks

Mayuko Katakura , Hikari Ichihara Talk ② "Jazz Spirit"

片倉真由子、市原ひかり鼎談②「ジャズの魂」

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日本ジャズ界で人気・実力ともにナンバーワンの“ファーストコール・ピアニスト”、片倉真由子さんと、おなじくリーダーアルバムを8枚リリースするなど人気と実力を兼ね備えたトランペッター市原ひかりさん。今回はふたりの女性ジャズプレイヤーとの鼎談です。
第二回目は「ジャズは難しい」。

〈前回までは〉
①「ジャズはけっして“エリートのための音楽”ではありません。」

「もう一度「カッコいい音楽」に戻っていくんじゃないかと思います。」

平野:もちろん音楽に貴賎はないし、テクニックがあるからといって人を感動させられるわけでもないけれど、要求される演奏技術だけを考えれば、やっぱりジャズはむずかしい。ぼくは身をもって経験しているからね。

市原:あ、そうなんですか?

平野:ちょっと前までオヤジバンドでギターを弾いていたんだけど、ジャズをやろうとした途端、手も足も出ないんですよ。1曲きちんと演奏できるようになるまで、冗談抜きであと何年かかるかわからない。とにかく手強い。

市原:(笑)

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平野:ふたりのようなトップミュージシャンがどれほどの修練に耐えてきたか。ぼくにはわからないけど、並大抵ではそうならないことくらいは想像がつきます。高度な演奏技術が求められるジャズには、どこか“求道的”な匂いがする。

片倉:たしかにそういう面はあるかもしれません。みんな真剣ですから。

平野:けっきょく、ジャズマンって“アスリート”なんだよね。そうじゃない奴は生き残れない。そういう求道的な雰囲気が、敷居が高いっていう空気感につながっているのかもしれない。

片倉:そうなのかな。

平野:ジャズの魅力には、先ほど話に出てきた「即興」のほかにもうひとつ、「対話」があるでしょう? 「相互触発」と言ったほうがいいかな。

市原:演奏を通じたミュージシャン同士のコミュニケーションのこと?

平野:そう。一緒に演奏しているミュージシャンに触発されて反応したり、楽器を介して対話したりしてるでしょ?

市原:はい。

平野:ジャズが「瞬間の芸術」であるもうひとつの所以がこれだと思う。じっさい相互触発がうまく回転をはじめると、演奏がどんどんエキサイティングになっていく。そのスリルがジャズの大きな魅力です。

片倉:そうですね。

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平野:ライブを観ていると、ミュージシャンたちのテンションが上がっていくのがわかります。ああ、楽しそうだなあって。でもね、とうぜんだけど、観客であるぼくはその輪の中には入れない。それが悲しいわけ。「ああ、オレはあっち側には行けないんだなぁ」って。

片倉:(笑)

平野:そういった、ある種の“見えない垣根”を感じるあたりも、敷居が高いイメージに関係しているのかも。

片倉:そうなんですね。お客さんがそんなふうに感じているなんて、想像したことなかったな。

平野:でもね、ジャズが日本に入ってきたときは、むずかしい音楽だなんてだれも思ってなかったにちがいないんです。あの時代に大衆社会に浸透したのは、シンプルなエンターテインメントだったからですよ。

市原:戦後、ジャズがすごく流行ったじゃないですか。それは、ひとつには日本人にとって「新しい時代の新しい音楽だった」からだと思うけど、もうひとつは、単純に、ステージ上の先輩たちがカッコよかったからだと思うんです。あの時代にジャズで生き抜いた先輩方は、いまもほんとうにカッコいいです。

平野:ああ、そうだよね。ぼくがジャズを聴きはじめたのは70年代初頭だけど、その少し前、60年代末の日野皓正さんなんかを見ると、じつにカッコいいもんね。メディアの扱いも映画スターみたいだったしね。

市原:ファッションもそうだし、お客さんに対する接し方も、まさしくエンターテインメントです。

平野:うん。

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市原:もしかしたら、いまは「むずかしい音楽」になってしまっているのかもしれないけど、わたしはもう一度「カッコいい音楽」に戻っていくんじゃないかと思います。そうなって欲しい。

平野:ほんとにそうだね。

市原: わたしたちの世代はみんな、ファッションにもこだわりをもっているし、人に見られる仕事だという意識をもってステージに上がっています。きっと、もう少しとっつきやすいものになっていくと思うな。

平野:そのあたりも若い世代にジャズを拡げていくうえでの重要なポイントだろうね。

市原:そう思います。



次回は「若者とジャズの接点」。

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片倉真由子(かたくら まゆこ)
仙台市出身。洗足学園短期大学を首席で卒業後、バークリー音楽大学、ジュリアード音楽院に入学。ケニーバロンに師事。留学中より、ハンク・ジョーンズ、ドナルド・ハリソン、 カール・アレン、ベン・ウォルフ、エディ・ヘンダーソン、ビクター・ゴーインズ等と共演する。2006年、Mary Lou Williams Women In Jazz Piano Competitionで優勝、Thelonious Monk International Jazz Piano Competitionのセミファイナリストに選出される。2008年に帰国し、現在は自己のトリオをはじめ、山口真文、伊藤君子、竹内直、土岐英史、寺久保エレナ、レイモンド・マクモーリン、ジーン・ジャクソントリオ、北川潔トリオのグループなどで活動中。洗足学園音楽大学非常勤講師。

市原ひかり(いちはら ひかり)
1982年東京都生まれ。成蹊小中高等学校を卒業後、洗足音楽大学ジャズコースに入学。2005年主席で卒業。同年ポニーキャニオンよりデビューアルバム『一番の幸せ』をリリース。以降同社より8枚のリーダーアルバムをリリース。自己のグループの他、土岐英史(as)、秋山一将(gt)、増原巖(bs)、赤松敏弘(vb)等のグループに参加。活動範囲はジャズにとどまらず、山下達郎、竹内まりや等のアルバムにもソロプレイヤーとして参加している。
主な出演番組は、『トップランナー』『題名のない音楽会』『ミュージックフェア』『僕らの音楽』等。

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