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Koki Hanawa Talks ② "Things that I feel comfortable"

塙耕記対談② 「心地よいと思えるもの」

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昨今の”和ジャズ”ブームを牽引する「昭和ジャズ復刻」シリーズなどでおなじみのディスクユニオン・塙耕記さんとの対談です。
第二回目は塙さんを惹きつける「ジャズの魅力」について。
※11月8日に岡本太郎記念館で開催されたトークショーを編集したものです。

〈前回までは〉
①「レコードを集めるのが趣味だったんですよ。とにかく欲しくて欲しくてたまらなくて・・・」

 「吹いている音、出てくる音が、聴いていて胸が痛くなってくるんですよ。」

平野:そこまで塙さんを惹きつけるジャズの魅力ってなんでしょう?

:はじめは踊れるようなカッコいいジャズを聴いていたんですが、そのうちに魂そのものをぶつけてくるような、そんなエネルギーを感じるジャズが好きになって・・・

平野:塙さんがその種のインパクトを感じるミュージシャン、ジャンルって、たとえばどんな…?

:それが、けっきょく親父と一緒でエリック・ドルフィーなんですよね。

平野:(爆笑) あ、そうなんだ。

:最初に衝撃的なソウルを感じたのがエリック・ドルフィーで。

平野:いくつくらいのときですか?

: 20代です。それから刺激を与えてくれるミュージシャンを探すようになって。

平野:説明するのは難しいだろうけど、ドルフィーのどこがいいんです?

:なんて言ったらいいか・・・吹いている音、出てくる音が、聴いていて胸が痛くなってくるんですよ。エネルギーをすり減らしているような・・・

平野:命を削っている感じ?

:そう、そういうものに共感したんですよね。おなじように感じる日本人ミュージシャンもけっこう多くて、それで日本のジャズにも注目するようになったんです。

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平野:たとえば…?

:フリージャズの阿部薫さん。

平野:なんでそんなことを聞いたかっていうと、ぼくはフリージャズに強烈なトラウマがあって・・・

:あ、そうなんですか?(笑)

平野:ぼくは1970年、小学校6年のときに洋楽に出会ったんです。当時はロックミュージック全盛の時代で、レッド・ツェッペリンやディープパープルにハマったわけですが、耳が肥えてくるに連れていろんな音楽に興味が湧いてくる。

:よくわかります。

平野:最重要メディアは FMでした。当時のFMはがんがんジャズを流していたので、自然とジャズに触れるようになったんです。で、「イケてる、かっこいい!
これはまだ他のヤツらは知らないぞ」と。

:「一番乗りで行けるぞ!」みたいな感じでしょう?

平野:そうそう(笑)。それでジャズを聴くようになり、ジャズのグルーヴもわかるようになって・・・そうなるともっと知りたくなるから、ジャズクラブやジャズ喫茶に通うわけです。

:新宿ピットインが伊勢丹の裏にあった時代ですよね? 当時はいくらあれば聴けたんですか?

平野:夜の部で1000円でした。それこそ毎晩、本田(竹曠)さんや土岐(英史)さんクラスが出ていて、とにかく活気がありました。でも小僧にとって1000円は大金。大抵はドアの外に立って漏れてくる音を聴くんです。分厚い木のドアなので、かすかにしか聞こえないんだけど、客が出入りするときだけは大きな音が聞こえる。そんな時代でした。

:素敵な時代ですね。

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平野:だからジャズ喫茶に行ってコーヒー一杯で粘るわけです。ここに居る皆さんは若いから知らないだろうけど、当時のジャズ喫茶は非常に厳しい社会だった。

:(笑)

平野:演奏中のジャケットを「Now Playing」として掲出するんだけど、その瞬間、客が一斉にチラ見するんです。けっしてガン見はしない。自分がそのアルバムを知らないのがバレちゃうから。

会場:(笑)

平野:知らないけどカッコいい曲がかかると、チラ見の回数が増えると同時に、店内にリスペクトの空気が流れる。「コレなに? リクエストしたのは誰?」っていうね。

:ジャズ喫茶は基本、リクエストですもんね。

平野:逆に「ジャズの名盤100選」に載っているようなものには、「チッ」っていう舌打ちが聞こえてくる世界です。

:(笑)

平野:誰の話か忘れましたけど、ビル・エヴァンスの名盤をリクエストしたら、「そういうのは家で聴け!」ってマスターに怒られたらしい。

会場:(笑)

平野:ジャズ喫茶でのステータスを手に入れるには、「みんなが聴いていないアルバム」を探す旅に出るほかない。だからぼくも旅に出ました。英雄になりたいから。

会場:(爆笑)

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平野:でも、「みんなが聴いていない」っていうのは、言い換えれば「売れてない」ってことですからね。もっと言えば「楽しくない」ってことです。

:話が読めてきました(笑)。

平野:ぼくはフリーやアヴァンギャルドに分け入っていきました。でも高校生の小僧にとって、正座してアルバート・アイラーを聴くのは苦行ですからね。

会場:(笑)

平野:いや、ほんとに苦しかったんですよ。で、けっきょくぼくはジャズが嫌いになった。それどころか、音楽そのものをほとんど聴かなくなりました。

:それは大変でしたね(笑)。それがどうしてまたジャズに?

平野:マーヴィン・ゲイに救われたんです。たまたま流れてきたマーヴィン・ゲイを聴くうちに、「ああ、なんてあったかいんだろう! なんて気持ちいいんだろう!」と感じて。それでまた音楽を聴くようになったんですが、フリージャズはいまだにダメです。



次回は、塙さんが感じた「日本人のジャズ」とは。

③「『日本人だけでこんなことがやれるんだ!』って。」

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塙耕記

(株)ディスクユニオン勤務。
2005年からは昨今の”和ジャズ”ブームを牽引する「昭和ジャズ復刻」シリーズなどでおなじみのTHINK! RECORDSをスタート。
2009年に世界初の和ジャズ・ディスク・ガイド『和ジャズ・ディスク・ガイド Japanese Jazz 1950s-1980s』を刊行。
昨年からCRAFTMAN RECORDSのプロデューサーとしても活躍している。

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