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Koki Hanawa Talks ③ "Things that I feel comfortable"

塙耕記対談③ 「心地よいと思えるもの」

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昨今の”和ジャズ”ブームを牽引する「昭和ジャズ復刻」シリーズなどでおなじみのディスクユニオン・塙耕記さんとの対談です。
第三回目は塙さんが感じる「日本人のジャズ」とは。
※11月8日に岡本太郎記念館で開催されたトークショーを編集したものです。

〈前回までは〉
①「レコードを集めるのが趣味だったんですよ。とにかく欲しくて欲しくてたまらなくて・・・」
② 「吹いている音、出てくる音が、聴いていて胸が痛くなってくるんですよ。」

「『日本人だけでこんなことがやれるんだ!』って。」

平野:“身を削る系”ジャズが好きだった塙さんが、やがて日本ジャズのアーカイヴに着目されるわけですが、塙さんのように「ジャズ道」を極めた人にとって日本のジャズはどう見えたんですか?

:所詮は日本人だから、みたいなネガティブな感情や先入観はまったくなかったんで…

平野:塙さんの世代にはないでしょうね。

:それである日、ちょっと古い昭和30年代の珍しいレコードを聴く機会があって。

平野:いくつくらいのときですか?

:25歳ぐらいのときですね。聴いてみたら、ものすごいハードバップで。「日本人だけでこんなことがやれるんだ!」って。

平野:どなたのアルバムですか?

:関西で活動している古谷充さんというアルトサックスとヴォーカルをやってる人です。ただ、惜しいことにジャケットがダサイんですよ。『民謡集』って書いてあるんですけどね。

平野:(爆笑)

:民謡をジャズでやっているんです。

平野:さすがにそれは知らないなあ。

:とにかく筋金入りのハードバップなんですよ。それを聴いたとき、「あれ? これはもしかして、自分が知らないだけで、他にもいっぱいあるんじゃないか?」って。それで日本人のレコードが入荷するたびに店で聴いてたんです。

平野:鉱脈を発見したわけだ。

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:当時は日本人のジャズを紹介する本もなかったので、ある意味、未知の世界だったんですけど、これは調べなきゃと思って。1995年くらいから約10年間、ずっと追いかけてました。

平野:この分野はまだ手がついていないから、ビジネスとしておいしいんじゃないかという計算ではなく、単純にカッコいいと思ったからでしょ?

:そうです。もちろんそうじゃないのもたくさんあるんですよ。でも素晴らしい演奏まで聴けないのはもったいないと。多くの人に聴いてもらいたいと思ったんです。

平野:まさか売れるなんて思ってなかったでしょう?

:これをCDにすればみんなが聴ける。モチベーションはそれだけでした。当時はレーベルをやっていたわけじゃないので、いろいろ動いて。ようやく二、三タイトルを出すことができたんですが、それがすごい反響で。

平野:誰のアルバムですか?

:私がはじめて日本人のジャズを出したのは白木秀雄さんというドラマーで・・・

平野:『祭の幻想』だ!

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:そうです。それがなぜかヨーロッパの若いDJに注目されて…

平野:あ、なるほど。それで…

:とつぜん紹介されるようになり、「和ジャズ」という言葉も生まれて、一気に広がっていったんです。

平野:塙さんが雑誌などに原稿を書きはじめたのもその頃ですか?

:そうです。最初に頼まれたのは『ジャズ批評』だったんですが・・・そうしたら出すCD 出すCDがどんどん売れるようになって・・・2005年からはじめて、2009年には『和ジャズ・ディスク・ガイド』(リットーミュージック)という本にまとめました。

平野:その本はいま古本で5000円の値がついてますよ。

:その後も本に載ったLPがどんどん CD 化され・・・たぶんそのあたりで平野さんの目にとまったんだと思います。

平野:それだけ売れたのは、ジャズファンの琴線に触れたってことですよね。

:ところが最初はそうでもなくて・・・気難しいお客さんに怒られたこともありました。「なんでこんなもんを出すんだ!」って。

平野:日本人なんかダメだと?

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:単純に聴いたことがなかっただけだと思いますよ。だから「これがカッコいいんです!」って説明して歩きました。

平野:まあ、たしかに『祭の幻想』の1曲目だけを聴いて、「なんだ! フジヤマ・ゲイシャじゃないか!」と思う人がいても不思議はないですもんね。ぼくは大好きだし、強烈にスウィングしていると思うけど。いずれにしても、塙さんが目をつけるまでは、誰もこのジャンルに注目していなかったわけじゃないですか。

:そうですね。もっとも最初はそんなに売れなかったんですよ。リリースしたときは数百枚くらいで。ところが次の月、その次の月と初回のオーダー数を超えるようなバックオーダーが来るようになって。

平野:買った人からどんどん広がっていったんでしょうね。

:口コミで。その時点では、まだ雑誌などメディアで紹介されてしてませんでしたから。

平野:やはりヨーロッパのDJが注目してくれたことが大きい?

:と思います。彼らは新しい、知らない音楽をかけることに躍起になっていましたから。『祭の幻想』を聴いて、「これは踊れる! イケる!」と思ったんでしょう。

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平野:その後、塙さんは70年代の音源を次々に手がけられましたよね。

:はい。

平野:じつは、ぼくは70年あたりを境に、日本のジャズが大きく変わったと考えているんです。大げさに言えば、革命に近いことが起きたと。

:なるほど。

平野: 60年代までは「誰かになりたい」時代でした。ピアニストの佐藤允彦さんが言っていますが、じっさい当時のミュージシャンたちは、挨拶代わりに「君は誰をやってるの?」と聞いたらしい。おそらくそれに対して、「オレはソニー・ロリンズ」「オレはウィントン・ケリー」と答えていたんでしょう。それはすなわち〝誰かみたいな〟演奏を目指していたということであり、その再現精度で評価されていたということです。

:そうですね。

平野:ところが70年代を迎えると、日本人ジャズマンの多くが「自分のジャズ」をやりはじめた。オリジナル曲をひっさげて、自分の音楽を追求するようになりました。その結果、黒人のジャズとも白人のジャズともちがう、当時の日本にしか生まれ得なかった独特のサウンドが生み出されていった。ぼくはそう考えているんです。

:よくわかります。

平野:彼らはまだ若かったから、かならずしも完成度は高くないけれど、疾走感と躍動感に満ちた熱いサウンドです。透けて見えるのはクリエイティブな情熱、野心、欲望です。

:そうですね。

平野:さらに言えば、こうした現象は、ジャズだけでなく、他ジャンルのクリエイティブでも同時進行していたと考えています。日本のクリエイティブ全体を襲ったうねりのようなムーヴメントだったと。

:興味深い話ですね。

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平野:ファッションの世界でも、70年代になると、西洋デザインを模倣していた60年代までとは打って変わって、「日本のデザイン」が世界を席巻しました。切込隊長は高田賢三と三宅一生、すぐ後に山本耀司や川久保玲がつづいた。そのコンセプトはいずれも西洋ファッションの概念や美意識を覆すものでした。

:新しい価値観を西洋社会に突きつけたわけですね。

平野:しかもそこに発露した高度なオリジナリティは、世界が賞賛するレベルだった。日本ファッションへのまなざしが、革命的に変わりました。建築、グラフィックデザイン、プロダクトデザイン…。いずれも世界との関係がこの時代に激変しています。

:なるほど。

平野:ぼくは、いまこそそうした70年代の表現者たちのスピリットを復活させるべきだと考えている。それが〈Days of Delight〉のコンセプトです。

:たしかに日本のジャズはそのあたりから急激に進化しています。先ほど話に出た佐藤允彦さんが、68年くらいかな、「自分でつくらなきゃダメだと本気で思った」と何かの文献で読みましたけど、そういう気持ちはもちろん他のミュージシャンにも伝染していたはず。今日、持ってきたレコードでひとつわかることがありまして。

平野:楽しみだなあ。

:持ってきたのは宮沢昭さんです。60年代に『宮沢昭のムードテナー』といったような当時、「軽音楽」とよばれていた音楽レコードをたくさんリリースしていた人が、オリジナル曲で勝負するとこんな音を出すんだ、っていうのを感じられるんで・・・聴いてみてください。録音は、まさに平野さんが節目の年だと考えている1970年。『木曽』というアルバムの2曲目に入っている「浅間」という曲です。

平野:いいなあ、これ。



次回は、塙さんの「ミッション」について。

③「ぼくの中に『紹介したい』っていう気持ちがあるからなのかもしれません。」

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塙耕記

(株)ディスクユニオン勤務。
2005年からは昨今の”和ジャズ”ブームを牽引する「昭和ジャズ復刻」シリーズなどでおなじみのTHINK! RECORDSをスタート。
2009年に世界初の和ジャズ・ディスク・ガイド『和ジャズ・ディスク・ガイド Japanese Jazz 1950s-1980s』を刊行。
昨年からCRAFTMAN RECORDSのプロデューサーとしても活躍している。

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