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Koki Hanawa Talks ⑤ "Things that I feel comfortable"

塙耕記対談⑤ 「心地よいと思えるもの」

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昨今の”和ジャズ”ブームを牽引する「昭和ジャズ復刻」シリーズなどでおなじみのディスクユニオン・塙耕記さんとの対談です。
最終回は「次の時代に残すべき価値があるもの」とは。
※11月8日に岡本太郎記念館で開催されたトークショーを編集したものです。

〈前回までは〉
①「レコードを集めるのが趣味だったんですよ。とにかく欲しくて欲しくてたまらなくて・・・」
② 「吹いている音、出てくる音が、聴いていて胸が痛くなってくるんですよ。」
③「『日本人だけでこんなことがやれるんだ!』って。」
④「ぼくの中に『紹介したい』っていう気持ちがあるからなのかもしれません。」

「音楽に限らず、あらゆる表現やクリエイティブに共通するものかもしれませんね。」

:先ほど「仕入れたものが、何十年か経ったら貴重な情報になっているかもしれない」という話がありましたけれど、ディスクユニオンでは中古盤の仕事もありまして、実際に30年40年50年と経って、現存するのは10枚もない、みたいなものもたくさんあるんですよね。

平野:そうでしょう。

:今日、じつはそういうのを1枚持ってきているんですけど、ちょっと聴いてみますか?

平野:ぜひ!!

:これは市販されたレコードではないんです。ある会社の社長さんが個人的に制作して、パーティーかなにかでお土産として配ったもの。ジャケットが2種類あって、女性客にはピンクを、男性客にはブルーをプレゼントしたようなんです。おそらく100枚くらいしかプレスしていないでしょう。

平野:“超”がいくつもつくようなレア盤じゃないですか。さすが! えーと、あ、高柳昌行さんなんですね。『Flower Girl』と書いてある。

:パーティで受け取った人が、かならずしもジャズ好きとは限らないでしょ? 興味がなくて捨てちゃったかもしれない。逆に、どれほど熱心な高柳ファンでも手に入らなかった。

平野:なるほど。

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:先日、はじめてオークションに出たのを見ましたけど、これから大変な値段になっていくはずです。

平野:うん。

: おそらく10枚も流通していないでしょう。ではB面の2曲目を聴いてください。

平野:なんていう曲ですか・・・暗くてぜんぜん見えないな・・・あ、「Sablier」ですね。

:もっとも、 コレ、CD 化はされているんですよ。

平野:あ、そうなんだ。

:高柳さんの音源を管理している人がレーベルをやっていまして。ジャケットもブルーとピンクが両方出てました。廃盤になっちゃってますけどね。

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平野:すごくいいですね。もっと聴きたかった。ところで、さっきの話のつづきになりますが、「ジャズという遺産を伝え残す」っていう塙さんのミッションを考えるとき・・・

:え、責任重大だなあ。そんなに重たいものを背負ってるんですか、私は(笑)。

平野:そうですよ(笑)。塙さんは、次の時代に残すべき価値があるものと、そうでないものについて、どう考えていらっしゃいます? とうぜんジャズに限った話ではないし、線引きの基準みたいなものは時代とともに変わるんだろうけど。

:そうですね。

平野:たとえば60年も前に録音されたマイルス・デイヴィスの『Kind of Blue』をぼくはいまも捨てられない。おそらく何百年経っても捨てられないし、捨ててはいけないものだと思います。塙さんは、後世に残す価値のあるジャズってどのようなものだと思われます?

:デイスクユニオンでは「太鼓判」と呼んでいるんですが、毎年それを定めてアーカイヴしているんです。

平野:「後世に残す価値がある」と認定する、ってことですよね?

:そのときに聴かれるだけじゃもったいない、ずっと受け継がれていかなければならない、っていう・・・

平野:そこなんです。価値があると太鼓判を押すとき、塙さんはなにを見ているのか、どうやって判断しているのか・・・

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:なんだろう。一言で言うなら「色あせない音楽」かな。2000年前後にクラブジャズみたいなのが流行ったでしょう? でも、その多くはいま聴くとちょっと恥ずかしいじゃないですか。もちろんいいものもありますけど。

平野:よくわかります。いまジュリアナのダンスミュージックを聴くのは大いなる勇気が要りますもんね(笑)。

:そのあたりの感覚を、会社の人間みんなが共通して持っているんですよね。

平野:ぼくは、ジャズが価値をもつための条件は3つあると考えているんです。ひとつは「美しい」こと。サウンドが洗練されているとか、叙情的であるとか、そういうことではなくて、「美しい」かどうか。

:どういう意味ですか?

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平野:岡本太郎は「キレイと美しいは正反対だ」と言っています。花や富士山の絵をを見て「あら、キレイね」と言うのは、小さい頃から刷り込まれてきた〝花や富士山はキレイである〟という常識に照合して合致したからであって、たんなる形式に過ぎないと。

:おもしろいですね。

平野:対して「美しい」はちがう。「ゴッホは美しい。しかしけっしてキレイではない」と。同様に、ジャズにも「キレイ」と「美しい」があるように思うんです。

:ああ、なるほど。

平野:二つ目は、表現者である以上とうぜんですが、「One & Only」であること。その人だけの「音」をもっているかどうか。簡単にいえば、2、3小節聴いただけでその人とわかるミュージシャンをぼくはリスペクトします。それこそ先月〈Days of Delight〉から新譜をリリースした土岐英史さんなんかがその典型です。ブラインドテストをされても絶対わかる。それが音楽家としての強度だと思うんです。

:そうですよね。

平野:三つ目は「芸術的」であること。たんにテクニックがあるとか、正確で破綻がないということではなくて、触発的であるかどうか。いろんな感情や感覚を呼び覚ましてくれるもの。さらにはその背後に〝強い意志の力〟を感じるもの。そういうものをぼくは「芸術的」と呼びます。

:なるほど。

平野:これら三つの要素が揃ったものが、ぼくにとっての「価値あるジャズ」です。

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:いまの三つのポイントは、音楽に限らず、あらゆる表現やクリエイティブに共通するものかもしれませんね。

平野:まさしく! ぼくはジャズを特別なものとはまったく考えていません。そういう視点と感性で、価値があると思う音をリリースしていきたいと考えているんです。

:素晴らしいと思います。そういう意味でいえば、私の判断基準は、自分にとって「心地よいと思えるもの」ですね。

平野:「心地よい」とは、たんにリラックスできるってことじゃないでしょ?

:もちろんちがいます。激しい音楽からバラードまでひっくるめて、自分にとって「心地よいと思えるもの」。やっぱりそこですね。

平野:塙さんにとっては、きっとエリック・ドルフィーも心地いいんですもんね?(笑)

:もちろん! だって心地いいじゃないですか!(笑)

平野:・・・あ! 30分も超過してる!

:私は気がついてましたよ(笑)。

平野:でも、これじゃ終われないなあ。まだぜんぜん足りないです。

会場:(笑)

平野:塙さん、またやりましょう。

:わかりました。喜んで!


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塙耕記

(株)ディスクユニオン勤務。
2005年からは昨今の”和ジャズ”ブームを牽引する「昭和ジャズ復刻」シリーズなどでおなじみのTHINK! RECORDSをスタート。
2009年に世界初の和ジャズ・ディスク・ガイド『和ジャズ・ディスク・ガイド Japanese Jazz 1950s-1980s』を刊行。
昨年からCRAFTMAN RECORDSのプロデューサーとしても活躍している。

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