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Okamoto Taro Column ⑯ " Travel emotions "

岡本太郎コラム⑯東風西風「旅情」

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近ごろの海外旅行ブームで、旅行社の企画した駆け足団体旅行に参加した人。帰って来て言った。「どこへ行ってもおんなじだ。旅情などというものはありませんね」

なるほどそうだろう。目がさめた時にはパリにいて、群れをなしてぞろぞろ歩き、また目をさましたらわが家に帰っていたというような今日の旅。まことに旅情のはいり込むすき間もない。時間・空間がえらく縮まってしまった。

私の幼いころは東京から京・大阪に行ってさえ異国に来たような思いがした。東京とはまるで違う世界だったのだ。ましてはるばると四十日も船旅をつづけてヨーロッパに着いたときは、人生がまったく別な傾斜にすべって行く強烈な感動をおぼえたものだが。

遠く隔ってみると、その裏側に、ふと故郷がなつかしく思い出される。何か身をさかれる思い。それが旅の一つの味わいであり、いわゆる「旅情」とか「旅愁」というものだろう。

いま「脱出」という言葉がはやっている。人間は、とりわけ現代人は自分の環境にはあきあきしている。そして固着した状況から逃亡したいと願う。ところが意外にも脱出は不可能なのだ。今日のように、たとえ地球の果てにいても必要に応じて一飛びで帰れるという時代。また情報網が発達して、故郷のニュースから断絶するということもなく、いつでもすっと、身も心ももとのサヤにおさまってしまう、こんな状況になると、旅情もヘッタクレもなくなるのは当然である。

旅の情感というようなセンチメンタルなものはどうでもよいが、もっと深刻な面がある。これは人生の旅そのものについて言える、今日のむなしさなのである。

人生に驚きがない。終着点まで目に見え、計算ずみだ。生きる意味、その鮮烈な感動を根源にさかのぼってつかみとろうという、人間的なロマンチスムをどう奪回するか。

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